Sustainability

TCFD提言への対応

当社は、気候変動への対応を経営における重要課題の一つと位置付けています。TCFDが推奨する取り組みを推進するとともに、4つの中核的要素「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の情報開示に努めています。2025年度からTCFDの取り組みを本格化させ、気候変動リスクと機会の定量的な評価に着手しています。

Task Force on Climate-related Financial Disclosures(気候関連財務情報開示タスクフォース)の略。

GHG排出量削減目標(基準年:2023年度)

2030年度 2050年度
Scope1、2 50%以上削減 実質ゼロ

ガバナンス

代表取締役社長CEOを委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しています。同委員会は取締役会からの委任を受け、気候変動を含むサステナビリティ課題に関する方針立案と進捗管理を行います。重要な事項については、取締役会に報告され審議を行います。2023年7月にはサステナビリティ委員会での検討を経て、気候変動の観点も含むマテリアリティを特定し取締役会において承認しました。

戦略

シナリオ分析

目的

気候変動によるリスクおよび機会を認識し、現在の対策を検証することで、将来の事業戦略へと活かすことを目的に、シナリオ分析を実施しました。
分析の初年度となる2022年は、TCFDのフレームワークに沿い、気候変動に伴う移行リスクとし物理的リスクを定性的に分析、それぞれの影響度を大・中・小の3段階で評価しました。
分析においては、2022年に+1.5~2℃および+4℃のシナリオ、2025年に+1.5℃および+4℃のシナリオを採用し、異なる気象条件・社会環境における事業活動を検討することで、さまざまな環境下においても持続的な経営を可能にすることを目指しています。

+1.5℃シナリオ +4℃シナリオ
政策 炭素税が導入される。
各種気候変動対策が導入される
炭素税が導入されない。
各種気候変動対策が導入されない
電気 電力価格は上昇 電力価格は低下
原油 原油価格は低下 原油価格は上昇
消費者意識 気温上昇により、気候変動など環境課題に対する意識が向上するとともに、サステナブルなライフスタイルが定着 気温上昇により、気候変動など環境課題に対する意識が向上
気候 大雨や台風が増加
気温が1.5℃上昇
大雨や台風が増加(+1.5℃の世界よりも発生頻度が高い)
気温が4℃上昇

重要なリスクと機会

+1.5℃、+4℃の世界ともに、環境に関連するシステムの需要が高まると予想されます。当社にとってはこうしたシステムの受注機会を増加させる要因となると捉えるとともに、気候変動の抑制およびそれに起因する問題の解決にもつながると考えています。

重要なリスク

カテゴリ リスク内容 影響度 事業へのインパクト 対応策
移行 政策・法規制 GHG排出量の上昇 サプライヤー(データセンター等)のScope1,2への炭素税課税により仕入れコストが増加する ・各サービスの価格転嫁策の策定の検討
・低GHG排出業者への切り替え検討
・サプライヤーと連携しCO2排出量の把握および削減への取り組み
・サプライチェーン全体の見直しと多様化(ローカルサプライヤーの活用など)
移行 評判 消費者、顧客行動の変化 GHG削減の取り組み遅れや情報開示不足により、評価が低下し、自社社員の採用コストが増加する ・継続的なステークホルダーへの情報開示
・CDP等の外部格付けへの対応強化
・研究開発投資による新技術の開発
・省エネ・再エネ技術の適用に関する設備投資の積極的な実施
物理 急性 サイクロンや洪水などの極端な天候事象の過酷さの増加 サプライヤー(データセンター,クラウド等)の事業活動停滞/停止により、売上高が減少する ・災害リスクの低い地域に立地するデータセンターやクラウドサービスに変更する
・データを複数拠点で保存する
・取引先の事業継続体制を調査する
物理 慢性 上昇する平均気温 データセンターの機器冷却用の電力コストが増加し、価格転嫁される ・データセンターの一次データ取得
・データセンター事業者へのエネルギー効率向上の取り組み訴求

重要な機会

カテゴリ 機会内容 影響度 事業へのインパクト 対応策
エネルギー源 新技術の使用 IoTを活用したエネルギー使用量の可視化や最適化技術を用いることで、エネルギー消費を管理し、効率的な運用を実現する ・IoTによるスマートビルディングを活用し、建物の温度、湿度、照度などをリアルタイムで監視し、空調や照明の制御を最適化することで、エネルギー消費を削減する
市場 新しい市場へのアクセス 気候変動リスク分析サービス、防災関連サービス、GHG排出量の可視化や削減を補助する機能等の需要増加により売上が増加する ・ステークホルダーに対して気候変動対応関連システムへの需要のヒアリング ・新規サービス開発の検討
製品及びサービス 低排出商品およびサービスの開発および/または拡張 ソフトウェアの消費エネルギー効率(ソフトウェアの効率指標)を向上させることで売上が増加する ・研究開発投資による新技術の開発
・市場動向調査の実施と自社サービスへの反映
・サステナブルマーケティングやコミュニケーションの強化
レジリエンス 情報開示対応の強化によるステークホルダーの肯定的なフィードバック 脱炭素の取組みを訴求することで投資家からの評価が上がり、ESG投資の対象となることで資金調達の機会が拡大する ・継続的なステークホルダーへの情報開示
・CDP等の外部格付けへの対応強化
・研究開発投資による新技術の開発
・省エネ・再エネ技術の適用に関する設備投資の積極的な実施

個々のリスク・機会における財務インパクトの試算(2030年度時点を想定)

カテゴリ 影響 試算値 試算の前提等
移行 リスク 自社のScope1,2への炭素税課税によりコストが増加する 約2,800万円 Scope1,2の削減目標に基づき、2030年度にScope1,2想定排出量2023年度比50%減を達成できた場合で試算。
炭素税価格は、IEAのシナリオを利用。
移行 リスク 排出量削減目標達成に向けたカーボンオフセット需要の増加により、クレジット価格が上昇してクレジット購入時のコストが増加する 約1,100万円 2030年の事業成長率に応じ、Scope1,2の排出量が増加する成り行きシナリオを想定。
Scope1,2の削減目標に基づき、2030年度にScope1,2想定排出量2023年度比50%減を達成できた場合で試算。
クレジット単価は過去の価格上昇の平均上昇率を算出し、2030年の価格を試算。
移行 リスク 電源構成において再生可能エネルギーの割合の増加に伴い、電力コストが増加する 約850万円 2023年度の使用量から2030年事業成長率を用いて試算。
経済産業省公表データより、2020年と2050年の値から線形保管により2030年までの電力増加率を算定。
機会 自社拠点をエネルギー効率が高い建物へ移転することで、運用コストが減少する 約700万円 2030年の電力使用量は2030年事業成長率を用いて試算。
運用コストのみを考慮し、拠点移転にかかわるコストは考慮対象外。

リスク管理

当社ではリスクの把握と適切な対応により損失の最小限化を図るために、代表取締役社長CEOをリスク管理最高責任者に任命しています。また、常勤役員及び各部門の責任者からなるリスク管理委員会を設置し四半期ごとに開催しており、事業環境や組織体制など当社経営に関するリスク全般について把握し対応策を検討しています。気候変動関連のリスクについてもこうした体制のもとでリスクの特定・評価を行い、低減に向けた対策を立案・実行しています。

指標と目標

当社は、Scope1、2のGHG排出量を把握し、削減に取り組んでいます。2023年度からは単体でのScope3を算定・開示しており、2024年度ではScope3の一部カテゴリをグループ全体で集計しました。Scope3の95%以上をカテゴリ1が占めており、その大部分はビジネスパートナーへの発注によるものです。2025年度はマテリアリティのKPIごと目標値を設定し、その達成に向けた検討を開始しています。

Scope3 カテゴリ別内訳(単体)※1

(t)
2023年度※2 2024年度
単体 単体 連結
カテゴリ1 購入した製品・サービス 10,715.83 12,724.35
カテゴリ2 資本財 135.13※3 54.28
カテゴリ3 Scope1、2に含まれない燃料及びエネルギー活動 14.04※4 14.59
カテゴリ4 輸送、配送(上流) 0.06 0.04
カテゴリ5 事業から出る廃棄物 2.53 0.09
カテゴリ6 出張 47.80 72.85 98.15
カテゴリ7 雇用者の通勤 36.27 78.15 118.19
カテゴリ8 リース資産(上流) 3.16 6.07
カテゴリ15※5 投資
1 カテゴリ9、10、11、12、13、14は該当ありません
2 2023年度のデータについて排出係数の見直しにより再計算しています。影響は軽微です
3 本社オフィスのレイアウト変更を実施したことにより、一時的に排出量が増加しました
4 カテゴリ3について追加で集計しました
5 カテゴリ15は算出が困難なため集計していません