近年、製造業ではITシステムを導入し、IT化・デジタル化を進める企業が増えてきました。実際に、業務の効率化や生産性向上といったメリットがあるため、自社に適したツールを導入することをおすすめします。ただし、ITシステムの導入にはメリットだけでなく、懸念点や注意点があるため、事前に押さえておきましょう。

この記事では、製造業がIT化を進める必要性、ITシステムを導入するメリットや懸念点などについて解説します。

製造業がIT化を進める必要性とは?メリットや懸念点を解説
(画像=elenabsl/shutterstock.com)

目次

  1. 製造業におけるIT化とは
  2. 製造業でIT化が必要となる背景
  3. 製造業のIT化のトレンド
  4. 製造業のIT化におすすめのツール
  5. 製造業に特化したITシステム
  6. 自社に適したITシステムを導入しよう

製造業におけるIT化とは

製造業では、生産プロセスや企業の業務全般において、手作業や紙の情報管理といったアナログで非効率な業務が多く残っています。それらの業務をITシステムやロボット、IoT機器といった技術によりデジタル化し、業務改善や生産性を向上させることは製造業における大きな課題の一つです。

近年では、ITシステムやデジタル技術を活用し、現在の生産体制や業務プロセス、ビジネスモデルを変革する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が注目されており、経済産業省も推進しています。

製造業のIT化によるメリット

製造業がITシステムを導入し、デジタル化を進める最大のメリットは、効率化を図ることによって従業員の負担を軽減できることです。ITシステムの導入により、従来と同じ作業を短時間で遂行できるようになるため、生産体制の安定化や、労働時間の短縮といった効果を期待できます。

他にも、熟練した作業員の技術を可視化・データ化することにより、技術・技能を継承しやすくなり、属人化していた作業も再現性を向上することで、業務の標準化を図りやすいです。今まで、紙などアナログの情報を扱っていた場合でも、データ化することで各業務の情報も共有しやすくなります。

現在では、多くの製造業の企業がデジタル化を進めているため、競争力を低下させないためにも、デジタル化を進める必要性は高いといえるでしょう。

製造業のIT化に対する懸念点

ITシステム化・デジタル化のメリットは多くあるものの、導入を検討する企業は不安や懸念を感じることが多いです。特に、デジタル化を進める際に、ITシステムに関するノウハウが少なく、適切な対策を行えるかどうか不明瞭である点が大きいです。また、同時にシステムを導入する際のコストが高額である点も大きな懸念材料になっているでしょう。

実際に、ITシステムに詳しい人材がいない企業であれば、デジタル化を実現した際の費用対効果を算出することも難しいです。他にも、ITシステムを導入した後、適切に保守・運用するIT人材が不足している点も大きな課題となっています。

特に、AI技術やIoT機器の導入には、専門的な技術が必要になるため、検討段階から進まないことも珍しくありません。

製造業でIT化が必要となる背景

近年では、インターネットを始めとするITシステムの発展が目覚ましく、その影響は製造業に及んでいます。実際に、現在、製造業ではITシステムの導入が進んでいます。

ここでは、製造業でIT化が進んでいる理由や背景について説明します。

製造業でIT化が求められる理由

慢性的な人手不足

現在、国内では少子高齢化が進んでおり、さまざまな業界が影響を受けています。特に製造業の人材不足は深刻化しており、ITシステムの活用により業務を効率化し、省人化を図る動きが強まっています。

経済産業省が公開している資料「デジタル技術の進展とものづくり人材育成の方向性」では、製造業のうち大企業の41.9%、中小企業の42.2%が「人手不足」と回答していました。

さらに、「人材育成・能力開発が進まない」と回答した企業は、大企業の40.9%、中小企業の42.8%にも上り、多くの製造業の企業が人材に関する課題を抱えていることが明らかになりました。

ITシステムの活用により人手不足をカバーできる分かりやすい例の一つが、IoT機器の導入です。カメラとインターネットを組み合わせた機器を使用することにより、設備の稼働状況をリアルタイムに監視することが可能になり、生産ラインに配置する人員を削減できるでしょう。このように、ITシステムなどを有効活用することにより、人手不足をカバーできます。

熟練の作業者の技術継承

製造業では、人手不足と同様に、熟練の作業員の技術・技能を継承できないことも大きな課題になっています。実際に、生産現場では新人の作業員とベテランの作業員では技術レベルに差があり、結果として生産効率や品質に影響します。

ITシステムを活用することにより情報共有しやすくすることや、AIやIoTの技術を活用することにより熟練技能者の動きを記録して共有することが可能です。また、同様の技術を活用することによって、遠隔地からでも熟練の作業員の支援を受けることができるため、技術継承や人材育成に活用されています。

生産性向上・コスト削減

生産ラインのITシステム化は、企業の収益を高める大きな要因になります。生産ラインをIT化し、生産プロセスの無駄を削減して業務の効率化を図ることで、省人化を実現できるため、人件費などのコスト削減につながります。また、業務の効率化の結果、生産性も向上します。

そのため、コスト削減と売り上げアップを両立できることから、企業の利益率が高まり、収益性も向上するでしょう。

国際的な競争力の向上

製造業の中には、国内だけでなく海外にも製品を提供している企業もあります。海外展開する企業では、国際的な競争力を高めなければ売り上げを伸ばせないでしょう。海外の製造業の中には、先端技術を活用したスマートファクトリー化が進んでいる企業も存在します。

そのような企業は、生産性を飛躍的に伸ばす体制を構築しているため、同様の競争力を得るためにはIT化への対応が不可欠といえるでしょう。IT化やスマートファクトリー化を進めることにより、生産性の向上とともに競争力も高まります。

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製造業のIT化のトレンド

製造業とITシステムは切り離せない関係にあります。自社の生産性や業務効率を高めるためには、どのようなシステムを利用すればよいのでしょうか。ここでは、製造業において効果的な取り組みやIT化のトレンドであるツールや分野などを紹介します。

ペーパーレス化

従来の製造業では、紙を使ってさまざまな数値・データを記録し、共有する機会が多くありました。実際に、生産管理・在庫管理の現場では、紙の管理が多いです。しかし、ホワイトボードやExcel、紙などを活用した管理体制では、スムーズに情報を共有できない可能性があります。

紙を主体にしている場合、書類を紛失するリスクがあり、重要な書類を保管する手間もかかります。また、適切に管理しなければ必要な書類を探すときに時間がかかるでしょう。書類の内容をデジタルデータに変換してペーパーレス化を進めることで、情報の共有や管理がしやすくなり、業務の効率化を図れます。

IoT機器の導入

工場内の施設や設備にIoT機器を取り付けることで、生産ラインの状況などを可視化して把握しやすくなります。また、データを収集することも可能にあり、より詳細な状況を把握できるようになるでしょう。例えば、カメラやセンサーを生産ラインに取り付けることにより、リアルタイムに情報を収集でき、迅速に適切な対応を取れるようになります。

収集したデータを分析することで、生産ラインにおける無駄なプロセスや改善が必要な箇所、故障が起きやすい設備などを見つけることもできるでしょう。例えば、生産ラインにIoT機器を導入することにより、不良率の高い設備を見つけ、改善することで、品質を高められます。

ロボットによる自動化・省力化

ひと昔前の製造業では、生産ラインで作業員が手作業で製品を組み立てていましたが、産業機械により自動的に製品を生産できる仕組みを構築できました。近年は、生産設備がさらに飛躍的に進化しており、高性能のロボットを活用することによって、自動化・省人化を図れます。

例えば、画像処理機器を生産ラインに導入することによって、生産工程や検査工程を自動化・省力化できます。また、AI技術を活用したロボットを利用すると、機械学習によって人の判断が不要になり、人の手が不要な生産ラインを構築できるでしょう。

他にも、ロボットが作業を担うことにより、作業者ごとに発生していたバラつきが少なくなる点も大きなメリットです。

製造業のIT化におすすめのツール

製造業はITシステムを導入することでさまざまなメリットを得られます。企業によってビジネスモデルが異なるため、適したシステムはさまざまですが、いずれの企業でも発生することが多い業務を効率化できるツールもあります。ここでは、製造業の企業がIT化施策として導入すると高い効果が得られるツールを紹介します。

プロジェクト管理ツール

プロジェクト管理ツールは、プロジェクトにおけるタスクやスケジュールを管理できるツールのことです。プロジェクトに参加しているメンバーごとのタスクと、その進捗を管理できるため、順調に進んでいるか、遅れているか、一目で把握できます。

製造業では、新製品の開発や新しい設備の導入などのプロジェクトを進める際に役立つでしょう。プロジェクトを適切に管理するだけでなく、進捗状況を共有し、コミュニケーションも取れるため、チームワークも強化されます。

ビジネスチャット

近年、企業で利用される機会が増えているビジネスチャットは、従業員や取引先とのコミュニケーションを円滑に進めるために役立つツールです。メールと違い、本文を入力して送信ボタンを押すだけでメッセージを送信できるため、手軽にやり取りできるでしょう。

また、メッセージのやり取りだけでなく、ExcelやWord、PDFなどのファイルの送受信も可能であり、ビジネスをスムーズに進められます。

勤怠管理ツール

勤怠管理ツールは、従業員の勤怠実績を記録し、共有できるツールです。近年では、オンライン上で利用できるものが多くなっており、場所に関係なく出退勤の記録を行えます。例えば、工場が複数ある企業では、生産システムの担当者は業務の内容によって出勤場所が異なる場合があります。

このようなときに、オンライン上で利用できる勤怠管理システムを利用すれば、業務を効率化しやすいでしょう。勤怠管理はどの従業員も毎回発生するため、導入効果は大きいです。従来のタイムカードを利用した管理の場合、人事の担当者が各数値をシステムに転記する手間がかかっていました。
勤怠管理ツールを利用することで、そのような手間も削減でき、ペーパーレス化や業務の効率化を進められるでしょう。

製造業がIT化を進める必要性とは?メリットや懸念点を解説

製造業に特化したITシステム

製造業において、ビジネスの中心は製品を生産することです。その工程を効率化するためには、製造業に特化したシステムの利用がおすすめです。自社の課題や強みに合わせたシステムを導入することで、大幅な業務効率化を図れるでしょう。ここでは製造業に特化したITシステムの種類を紹介します。

SCM(サプライチェーンマネジメント)システム

SCMは「サプライチェーン管理システム」のことであり、製造業において重要な役割を持つサプライチェーンを管理するためのシステムです。サプライチェーンとは、メーカーが製品を生産するプロセスの中で、原材料の調達から製品の生産、出荷、配送、販売といった、顧客の手元に商品が届くまでの流れのことです。

製造業がIT化を進める必要性とは?メリットや懸念点を解説

原材料を扱う仕入れ業者、商品を運ぶ配送業者、商品を販売する小売業者など、サプライチェーンの中にはさまざまな企業が存在しており、この全体の流れを適切に管理して最適化することで、業務の効率化を図ることができます。

SCMは各企業や組織を含めた全体的な流れの中に存在する無駄を排除し、最適化を実現するシステムです。その結果、売上の最大化や在庫の最適化、リードタイムの削減を目指します。

このシステムを使うことで、自社やその企業グループ、取引先企業との間でやり取りされる受発注・在庫・販売・物流などの情報を共有できます。また、最適化された各システムの情報を連携することで、原材料・部品・半製品・製品の需要が変動した場合でも最適化を図りやすいです。

近年では企業のサステナビリティに関する取り組みの重要性が増しており、規制や環境意識が高まっています。SCMを活用することにより、サプライチェーンに含まれる商品の情報を適切に管理できるため、どこから調達されたものか把握しやすいです。物流に乗った後でトラブルが発生した場合でも、その商品の情報を追跡できるでしょう。

PDM(製品データ管理)

PDMは「製品データ管理」のことであり、製品の企画や設計・生産情報などのデータを一元管理するシステムです。PDMを活用することで、情報の共有や連携が可能・スムーズになり、結果として生産性の向上を期待できます。

例えば、商品や設備を設計する現場では、CADデータを使用することが一般的です。しかし、図面データの三次元化や組立図を部品単品図の集合として活用するなど、設計データの活用が複雑化しています。

さらに、設計現場ではCADデータの管理以外にも、原材料・部品・材質・重量・加工法・コストなどさまざまな情報があり、それぞれを適切に管理しなければなりません。そこで、PDMを活用することにより、工程や部門ごとに単体で管理された状態ではなく、全体のデータを一元管理できるようになるため、情報を共有しやすくなります。

このPDMで適切に管理されたデータを活用し、製品のライフサイクル全体の最適化を目指すシステムがPLM(Product Lifecycle Management)です。

h3: PLM(製品ライフサイクル管理)

PLMは「製品ライフサイクル管理」のことであり、PDMと併せて使われるシステムです。主に製品の企画・設計・生産・販売・廃棄という一連のライフサイクル全体における情報を一元管理します。このPLMを活用することにより、製品の全ての情報を全社的に共有できるようになるため、製造業全般で活用されています。

さらに、基幹システムであるERP(統合基幹業務システム)とPLMを統合することにより、最新の製品データをいつでも入手できる体制を構築できます。このとき、本社機能がある財務部門は、正確な情報を共有できるため、適切な経営判断の材料にできる点もメリットといえます。

製造業がIT化を進める必要性とは?メリットや懸念点を解説

自社に適したITシステムを導入しよう

近年の製造業では、ITシステムを導入する企業が増えており、作業の効率化が進んでいます。実際に、人手不足を解決したり、生産性の向上・コスト削減により利益を高めたりすることが可能です。また、熟練の作業員の技能を継承しやすくなる点も大きなメリットといえるでしょう。

しかし、業務の効率化を実現できるITシステムの種類は多くあるため、まずは自社の解決したい課題を明確にする必要があります。同時に、有効なITシステムの種類を把握することにより、自社に適したITシステムを選びやすくなります。自社に最適なITツールを導入し、生産性の向上を実現してみてください。

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