BPRとは?メリット・デメリットや効果的な手段、実施のステップ
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業務フローを抜本的に改革し、業務効率化やコスト削減を叶えるBPR。しかし、やり方を間違えると組織に軋轢が生じる可能性もあるため注意が必要です。そこで、BPRの基礎知識と併せて、メリット・デメリットや効果的な手段、実施のステップなどについて解説します。

目次

  1. BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)とは?
  2. BPRのメリット
  3. BPRのデメリット
  4. BPRを実現するために効果的な手段
  5. BPRを行う際に効果的な分析方法
  6. BPR実施のステップ
  7. BPRはDX推進と最新テクノロジーの活用に役立つ

BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)とは?

BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)とは、既存の組織や制度を見直して業務フローを再構築し、品質やコスト、サービスなどの重要なパフォーマンスを改善する取り組みのことです。業務フローを改善する手段として、国や地方行政、企業などでBPRが実施されています。

BPRが求められる背景

BPRは、DX推進やテクノロジーの進歩に伴い、必要性が高まっています。DX推進や、最新テクノロジーの活用には、データの一元管理や組織の連携が欠かせません。しかし、個別最適化が進んだ企業では、部署ごとに使用しているシステムやデータ管理方法が異なるなどの理由で、連携が十分に取れていないといった課題があります。

このような状況を打破するためには、既存の組織や制度を見直し、データの一括管理や最新テクノロジーに対応できる仕組みを作ることが必要です。BPRで業務フローを再構築すれば、これらの問題を解決できることから、今BPRが企業に求められています。

BPRと業務改善の違い

BPRと業務改善の違いは、業務フローの変更の有無にあります。BPRは業務フローを抜本的に見直し、再構築します。一方、業務改善では、業務フローは変更せずに、無駄の削減や細部の改善などを行います。

すなわち、BPRは業務フロー全体を改善するのに対し、業務改善はその一部を改善する行為といえます。業務フローが最適化されているのなら業務改善の実施で十分ですが、組織のみの改善にとどまらず企業全体の業務フローを改善したい場合には、BPRの実施が効果的です。

BPRとDXの違い

BPRとDX(Digital Transformation)の違いは、改革の手法と対象にあります。

改革手法改革対象改革目的
BPR組織や制度の改善業務フロー・パフォーマンス向上
・競争優位性の確立
DXデジタル技術の活用ビジネスモデル

BPRは業務フローを改革し、DXはビジネスモデルを改革します。改革の手法や対象は異なりますが、改革の目的はパフォーマンス向上や競争優位性の確立で一致しています。

BPRとBPOの違い

BPRとBPO(Business Process Outsourcing)は、戦略と戦術の関係にあたります。BPOとは、自社の業務フローの一部を外部の専門会社に委託することです。自社にノウハウがない場合や、社員をコア業務に専念させたい場合に用いられます。

一方BPRとは、パフォーマンスを向上するために業務フローを再構築することです。業務フローを改善できれば、外部に委託する必要はありません。しかし、BPOによって業務フローを最適化できることもあるため、BPRの結果がBPOの実施という結論になる可能性もあります。

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BPRのメリット

BPRに取り組むことで、以下のメリットを享受できます。

  • 業務フローの可視化
  • 生産性の向上
  • 顧客と従業員の満足度向上

業務フローの可視化

BPRを実施すると、業務フロー全体を可視化できます。可視化できていない場合、業務に対する責任がどこにあるのかわからなかったり、既に行った業務を他の部署で再度行ったりするリスクがあります。業務フローが可視化できれば、他の部署でどのような作業が行われているのかが明確になるため、無駄な作業を削減できます。

また、業務フローが可視化できていれば、再度BPRを行う際も分析が容易です。万が一業務フローに問題が見つかった場合も、原因を素早く突き止めることができるでしょう。

生産性の向上

BPRを実施すると、無駄な業務がなくなり、業務フローが最適化されます。その結果、従業員全員が意味のある業務に取り組めるようになり、生産性が向上します。

また、BPRは業務プロセス全体を改善するため、部署間の連携強化や、データの一括管理も可能にします。今までになかったノウハウやデータを活用できるようになるため、業務効率化にも役立てられるでしょう。

顧客と従業員の満足度向上

BPRに取り組むことで、顧客と従業員の満足度を向上できます。顧客の満足度が上がる理由は、業務フローの改善により生産性が向上することで、品質やコストも改善できるためです。より良い商品やサービスを提供できるようになり、その一部を顧客に還元することができます。

従業員の満足度が上がる理由は、業務効率化により省力化や労働時間短縮が実現し、労働環境が改善するためです。また、業務フローを最適化することで従業員自身の役割も明確になり、モチベーションアップにもつながるかもしれません。

顧客の満足度が上がって収益が増し、従業員に還元してより良い製品・サービスを作り、顧客の満足度がさらに上がる、という好循環ができれば、企業として大きく成長できるでしょう。

BPRのデメリット

BPRに取り組むことで多くのメリットを享受できる一方、以下のようなデメリットも発生します。

  • 工数やコストがかかる
  • 組織内で軋轢が生じる可能性がある

工数やコストがかかる

BPRの実施には、既存の業務フローの見直しや再構築、改善など多くの工数がかかります。これらを完遂するにはある程度の時間と人員が必要です。通常業務でも人員が不足しているような企業は、実施が難しいかもしれません。

また、実施フェーズでは適切なツールやシステムの導入が必要になる場合もあります。全社規模での導入となれば、大きなコストが発生するでしょう。このように、BPRには工数やコストがかかるため、実施前には費用対効果の検証を行うことが重要です。

組織内で軋轢が生じる可能性がある

BPRに取り組むと、経営陣と従業員の間や、部署間に軋轢が生じる可能性があります。例えば、業務プロセスを全社的に見直すと、ある業務の担当部署が変更になることも珍しくありません。その際、どの部署がその業務を担うのかで揉めてしまうこともあるでしょう。

また、経営陣だけでEPRの施策を決めてしまうと、現場にとって不都合な業務が発生する可能性があります。EPRを実施すると、現場の業務内容は少なからず変化するため、従業員にとっては負担になります。

EPRに取り組む際は、従業員の負担が大きくならないように、部署間の仕事量を調整したり、施策に現場の意見を取り入れたりすることを意識しましょう。

BPRを実現するために効果的な手段

BPRを実現する手段として、以下のようなことが挙げられます。

  • 業務仕分け
  • ERP
  • シェアードサービス
  • SCM(サプライチェーンマネジメント)

業務仕分け

業務仕分けとは、全ての業務を分解し、業務を行うべき人員を選定する作業です。1枚のシートにまとめれば、社内の業務やそれぞれの重要度などを一目で把握できるようになります。

この際、「付加価値生産性」と「代替可能性」の視点で業務を評価すると、効果的に分類できます。

自社の従業員がコア業務に集中できるよう、ノンコア業務は先述のBPO(業務フローの外部委託)を実施するのも一つの手です。

ERP

EPR(Enterprise Resource Planning)とは、企業の資源である「人・モノ・カネ」を有効活用するための計画のことです。これらの企業資源は、主に「会計・人事・生産・物流・販売」の5つの業務で扱われます。EPRはこれらを一元管理し、全体を最適化するために実施されます。

EPRは、「会計・人事・生産・物流・販売」がそれぞれ別のシステムを利用している場合に効果的です。このような状態では情報の一元管理が困難ですが、EPRを実現するシステムを導入することで、「会計・人事・生産・物流・販売」間の連携性が高まり、業務フローを改善できます。

EPRのメリットやシステムを詳しく知りたい方は、以下記事を参考にしてみてください。

関連記事:製造業ERPとは?ビジネスのけん引役として大きな役割を担う

シェアードサービス

シェアードサービスは、グループ企業内の間接業務を1ヵ所に集約する手法のことで、以下の業務に適用可能です。

・総務
・人事
・経理
・監査
・物流

上記のような、企業によって実務内容に差がない業務は、複数社で行うよりも1ヵ所で行った方が効率的です。実際にシェアードサービスを導入している企業は、コスト削減や業務品質向上、業務スピードの改善などの効果を得ています。

SCM(サプライチェーンマネジメント)

SCM(サプライチェーンマネジメント)とは、企業が顧客に製品を届けるまでのフローを改善することです。具体的には「調達・製造・流通・販売・消費」に関わる業務を見直し、業務フローの最適化を図ります。

サプライチェーンには様々な企業が関わるため、基本的にSCMは複数の企業と協力して取り組みます。これにより、自社だけでは解決できない問題も解決可能です。SCMを実施すれば、他社とも協力してサプライチェーン全体で業務フローの改善に取り組むことができます。

以下の記事で、SCMの進め方や成功事例を解説しています。SCM導入を考えている方は、参考にしてみてください。

関連記事:サプライチェーンマネジメント(SCM)とは?取り組むメリットや事例を解説

BPRを行う際に効果的な分析方法

BPRとは?メリット・デメリットや効果的な手段、実施のステップ
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BPRで業務フローを改善するには、現在どのような問題を抱えているのかを正確に把握する必要があります。問題点の把握には、以下のようなフレームワークを活用するのが効果的です。

  • シックスシグマ
  • 4C
  • ECRS
  • SWOT分析

シックスシグマ

シックスシグマとは、製品を100万個作ったときに不良品を3~4個以内に抑えることを目標にした取り組みを指します。品質管理のために多くの大企業で取り入れられているフレームワークです。

一般的にシックスシグマは、「定義・測定・分析・改善・管理」の順序で行われます。シックスシグマの観点で不良品が発生する原因を分析し、その原因が業務フローのどこに存在するのかを特定できれば、BPRで再構築すべき点が明確になります。

4C

4Cは、顧客目線から見た以下の4つの要素を改善するフレームワークです。

・Customer Value(顧客価値)
・Cost(顧客コスト)
・Convenience(利便性)
・Communication(コミュニケーション)

4Cを分析することで、顧客の本質的なニーズを捉えているか、課題を解決できているかを判断できます。

ECRS

ECRSは、業務プロセスを改善するためのフレームワークです。

・Eliminate:不要な業務の削減
・Combine:業務の統合
・Rearrange:業務の並べ替え
・Simplify:業務の単純化

上記の4つの観点で業務プロセスを分析することにより、複雑な業務ルールや高負荷な業務を削減できます。

SWOT分析

SWOT分析は、戦略方針を明確にするために用いられるフレームワークです。

・強み:Strengths
・弱み:Weaknesses
・機会:Opportunities
・脅威:Threats

上記の4点を把握することで、自社で実施すべき戦略が明確になります。自社の状況を客観的に見る手段としても効果的です。

BPR実施のステップ

以下の5ステップを踏むことで、BPRを効果的に実施できます。

  • 検討
  • 分析
  • 設計
  • 実施
  • モニタリング・評価

検討

検討段階で明確にすべきことは、目的と目標、業務フロー範囲の3つです。まず、BPRを実施する目的と目標を明確にします。目的が決まれば、それを達成するための数値的な目標が自ずと決まるでしょう。

次に、対象とする業務フローの範囲を明確にします。目的を達成するためには、どこからどこまでの業務フローを再構築する必要があるかを判断します。一貫した業務体制を取るためには、業務フローを全て再構築することが効果的です。

分析

自社でどのような問題を抱えているかを分析します。先に紹介したシックスシグマや4Cなどの手法を用いて、自社の問題点を把握します。目的に合った分析方法を選択しましょう。

問題点が明確になれば、業務フローのどの地点でその問題を引き起こしているのかを特定できます。これにより、改善すべき業務が明確になります。

設計

設計では、分析で発見した問題点を解決するために、具体的にどのような業務フローにするのかを決定します。前述した業務仕分けやシェアードサービスを活用すると、効率的なBPRが可能です。

この際、業務フローの変更に伴い、ルールや組織体制が大きく変わることがあります。現場の混乱を招かないためにも、あらかじめ目的や変更理由などを共有し、スムーズに実施段階に移行できるよう準備しておきましょう。

実施

全ての準備が整い次第、BPRを実施します。規模にもよりますが、業務フローの再構築にはある程度の工数と時間がかかります。マイルストーンを設定するなどして、達成度合いや立ち位置を見失わないようにしましょう。

また、検討段階で明確にした「目的」と実施内容がずれていないかを確認しながら、業務フローを再構築していきましょう。

モニタリング・評価

改革が終わったら、BPRが目的達成のために機能しているかを評価するため、モニタリングを行います。ただし、業務フローを再構築した直後は、従業員が業務に慣れていない可能性があります。結果を焦らず、現場の状況と照らし合わせながら評価しましょう。

また、一度のBPRで目的を達成できるとは限りません。実際に業務フローを変えると、予期していなかった問題が発生することもあります。現場の声や評価結果を踏まえて、問題点を改善しましょう。

BPRはDX推進と最新テクノロジーの活用に役立つ

BPRの実施は、従業員の満足度や生産性の向上に役立ちます。また、業務フローの可視化やデータの一元管理ができるため、DXなどの改革にかかる労力を削減できるでしょう。

ただし、適切なステップを踏まなければ、思わぬトラブルや損失につながる可能性もあります。自社で BPRの実施が決まったら、目的に応じて適切な手段を取り、従業員の理解を得ながら推進するようにしましょう。

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