【建設DX】建設業におけるICT活用とは ~DXによるサプライチェーンの最適化~
(画像=Aris Suwanmalee/stock.adobe.com)

目次

  1. 建設業界におけるICT活用とは
  2. 建設業界でもデジタルトランスフォーメーションの取組みは始まっている 
  3. ICT施工の具体例 
  4. 測量
  5. 施工
  6. 検査
  7. ICTに代表されるこれまでの取組はDXなのか
  8. DXの推進により業務変革からサプライチェーンの強化へ
  9. ICT活用からDXに成功したコマツの「LANDLOG」の事例

建設業界におけるICT活用とは

近年の財政状況や人口減少、環境意識の高まりを背景に、建設業界では生産システムの効率化や生産性の向上が求められています。

国土交通省ではこの状況に対応するため、急速に発達するICT(情報通信技術)を活用した合理的な生産システムの導入・普及を進めています。

例えば、デジタルツールを活用した現場管理、CADなどの設計ツールやBIMによる施工計画の作成、ARやVRを用いた現場確認、文書管理及びマネジメントシステムの導入などが挙げられます。

また、ICT技術の導入には、労働環境の改善や、安全対策の充実化というメリットもあります。

ICT活用は、建設業界の発展を後押しするものとして大きな期待が寄せられています。

建設業界でもデジタルトランスフォーメーションの取組みは始まっている 

デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の必要性が叫ばれ、あらゆる産業において各企業が変革の必要性を認識し、一部の企業は変革に向けてDX実現に取り組んでいます。

建設業はこれまで3K(きつい、汚い、危険)の代表格と捉えられ、他の産業に比べて離職率が高く(※図1)、また入職者の確保に苦戦を強いられており人手不足が最も深刻化している産業です。こういった背景もあり土木インフラ工事においては2016年度に国土交通省が「i-Construction」を提唱し、現場の生産性向上を実現すべく発注者・受注者が共に取り組んできました。

「i-Construction」は3つのトップランナー施策として、

  • 「ICTの全面的な活用(ICT土工)」
  • 「全体最適の導入(コンクリート工の規格の標準化等)」
  • 「施工時期の平準化」

を打ち出し、これら施策に取り組む事で建設現場の生産性革命を起こし、ICT活用を積極的に施工管理基準に盛り込んで利活用を促し生産性を上げていくことで現場での働き方を変える。更には賃金の向上や女性も活躍し希望の持てる魅力ある産業に変えていくと言うものです。

※出典:国土交通省「建設業及び建設工事従事者の現状」
(画像=※出典:国土交通省「建設業及び建設工事従事者の現状」)

建設業は製造業と異なり、良い製品を多く作り販売できればよいと言う業態ではありません。建設会社が収益を上げるためには、確固たる技術を有し、受注する現場数を増やし、技術を最大限活用してインフラ構造物を作り上げていく現場業務で利益を出す事が最も重要です。

そのため現場における生産性向上は建設会社として成長していくためにはかかせない取組みであり、その実践においては依然課題も残ったままです。 このように現場の生産性向上だけでも検討や取組みの強化が必要であるにも関わらず、最近では建設会社として本社・支店・現場の全職員が多様な個性や価値観・スキルを活かして働く事ができるダイバーシティを促進し、健康経営あるいは環境と社会にも配慮したESG経営と言ったよりグローバルな経営戦略を実現する組織に変わっていく必要性を各社感じています。

この根底には冒頭で述べた人手不足かつ超高齢化社会でも生き残るためには、やはり組織全体が変わらなければいけないと言う危機感の表れであり、i-Constructionに沿った現場向けの施策から一段上がってより全社的な変革を進めていく事が待ったなしの状況になっています。まさに建設業におけるDXの黎明期を迎えていると言っても過言ではありません。

DX導入だけでなくダイバーシティやESG経営も重要視される現在、建設業は組織全体の変革が求められています。

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ICT施工の具体例 

ICTを活用した施工技術の事例として、設計データや現場計測データを建設機械に入力して施工するマシンコントロールや、施工状況をモニターで確認しながら施工する遠隔操縦、建設作業の自動化・ロボット化などが挙げられます。

測量

ICTの導入により、測量作業にも大幅な効率化と精度の向上がもたらされました。
例えば、ドローンに搭載された高解像度のカメラや、LiDARセンサーを使用することで、建設現場全体を迅速に三次元測定することもできます。

また、3Dレーザースキャナーを導入すれば、建物の内部や外部のスキャン、地下トンネルのモニタリング、岩盤の詳細な測定などをもとに建物や地形の高精度な3Dモデルを生成することも可能です。

施工

施工プロセスにおいても、ICTの活用は進んでいます。
例えば、自動レベリングシステムを備えたブルドーザーのようなICT建機は、建設プロセスを効率化し、作業の正確性を向上します。そのため、これまで熟練作業員が行っていた作業も高い精度で実行できます。

また、建設機械にGPSやGIS技術を組み込むことで、位置情報を正確に把握し、地形のマッピングや設計図に合わせた作業が可能です。

このようなICT建機の活用は、生産性や品質、作業の安全性向上に大きく貢献します。

検査

ICTは、検査プロセスの効率化にも貢献します。
ドローンで撮影したデータを活用することで、検査官は現場間を移動する必要がなく、スピード感のある品質管理を実現します。

さらに、GNSSローバーやトータルステーションなどの計測機器を活用すれば、リアルタイムで正確な位置情報を収集でき、検査時間と労力だけでなく、誤差を最小限に抑えることができます。

このように、ICTは書類検査、実地検査の両面で、省力化、期間短縮を実現します。

ICTに代表されるこれまでの取組はDXなのか

最近よく「建設DX」と言う言葉を目にします。前述した通り、施工現場ではICTの利活用により、施工の様々な業務の効率化が図られています。ただしここで言うICTとは建設業の場合、GNSSローバー・トータルステーション・レーザースキャナー・UAV(ドローン)・ICT建機と言った現場作業に直結する計測器や測量機、ロボット技術などを指します。

従来は測量作業にしても、重く大きな機材を二人で分担して持ち、一緒に動いて一人が測量、もう一人が記録と言うような役割で時間と人数をかけて測量業務にあたっていました。それが最新の測量機器では、一人で機材を持ち運べ、測量作業や丁張りがけも誰でも同じ精度で行える、測った測量結果もデジタルなデータとしてクラウドにアップロードされ結果を取り出すのも容易です。

これは確かに業務の効率化につながるものです。そしてこれらを提供するメーカーやITベンダーはICT機器やツールを現場で活用する事を「建設DX」と定義し、最新機器を提供して現場の施工業務の生産性を上げる、時には現場業務をデジタル活用で変える、と言う提言がなされているようです。

これは、ICTを活用し施工業務に変革をもたらすと言う点で間違っていませんが、DXと言う言葉で括るには不十分な気もします。「i-Constructionの施策の効果もあってデジタイゼーションとしての取組みがかなり浸透している」(※図2)と言うのが正しいかもしれません。

なぜなら現場は施工中の業務だけでなく、施工前の受注業務から現場を立ち上げて調査・設計業務を行い、あるいは施工完了後は発注者へインフラ構造物を引き渡すための検査業務もあります。「施工」と言うフェーズは建設会社にとって利益を生むために最も重要なフェーズではありますが、この中の特に現場作業の一部の業務だけがデジタル化され、その業務の生産性だけが上がることによる部分最適に留まっているとすれば、それを「建設DX」と言うには十分なものではありません。

DXの推進により業務変革からサプライチェーンの強化へ

では建設業におけるDXとは具体的に何を指すのでしょうか?それは上記のように施工業務の効率化はもちろんのこと、工程管理や協力会社との調整、計測結果のデジタルエビデンスを報告書として発注者に提示するための整理業務など、現場の中だけではない事務所内における業務のデジタル化も含まれます。

工務の作業は手作業でも仕方ない、印刷し書面に記載してまとめるのが当たり前であると言った概念を崩し、そこにもテクノロジーを駆使してデジタル化する事で業務の在り方が変わる。業務負荷や属人性が高いものを対象として変革していく、こういった事にまで踏み込むことが本当の意味での「建設DX」と言えるのではないでしょうか。

また先に触れた、最近では現場だけでなく本社や支店など、全職員の働き方も見直す業務変革の必要性が認識されています。現場の生産性向上はとても重要ですが、それを支える本社や支店の管理業務の効率化も必要不可欠です。現場業務だけが変革出来ればよいと言う事ではなく、全社的な組織風土や慣習を変えていく事で自分たちの業務を適正化し、ひいてはそれが現場業務をより効率的に支援していく事につながります。

例えば営業が行う見積もり業務や、労務・人事・財務と言った現場に関わる業務もそうです。これらの業務が既存の在り方やこれまで構築した仕組みに縛られ、依然、業務負荷が高いものだとすると、そこに着目しこれらの業務変革を実行していこうとする会社と、今までのやり方でも構わないと目をつぶる会社とでは、この先数年間で組織の競争力に相当な差が出る可能性があります。

DXは全職員に関わるあらゆる業務のサプライチェーンを見直し強化するものであり、特に建設業においては変革によって最適化された人的リソースを新技術の開発、営業力強化、現場施工の注力等に投じる事で、より収益を上げる組織体へと変えていく取組みである事が重要です。

ICT活用からDXに成功したコマツの「LANDLOG」の事例

建設機械メーカー コマツのプラットフォーム「LANDLOG」は、ICTを活用して生み出された新たなビジネスモデルです。

「LANDLOG」は、建設機械に組み込まれたセンサーとGPS技術を使用して、建設現場に関わる人、機械、材料などをリアルタイムデータ化するシステムです。

収集されたデータはクラウドベースのプラットフォームに保存され、地形情報や売上データを組み合わせることで、建設プロジェクトの異常や課題を識別し、問題の可視化や課題の発見、施工の最適化やタスクの作成までを一元管理することができます。

「LANDLOG」は、コマツにとってサービス提供やデータ分析に基づく新たな収益モデルとなっただけでなく、建設業界全体のICT化に大きく貢献しています。

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