入門編④:デジタルトランスフォーメーション(DX)実現の道のり 何から始めるべきかを徹底解説

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、「デジタル技術を活用して製品やサービス、ビジネスモデルを変革すること」です。これはすなわち、企業全体が生まれ変わることを意味しており、変革の対象は多岐に渡り、一朝一夕に実現できるものではありません。
デジタルトランスフォーメーション(DX)により目指す姿をイメージすることはできても、その実現に向けて何をどのように変革していけば良いのか分からない、という経営者の方も多いのではないかと思います。
本コラムでは、デジタルトランスフォーメーション(DX)実現に向けて、変革が必要な対象には何があるのか、またどのようなステップで変革を進めればよいのかについて、解説していきます。
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デジタルトランスフォーメーション(DX)の構成要素
デジタルトランスフォーメーション(DX)のゴールは、①ビジネスモデルの変革、に他なりませんが、その成功のためには、②ITシステムの変革、③業務オペレーションの変革、④組織・人材の変革、もあわせて実現することが必要となります。
ここでは、それぞれでどのような変革が必要となるのか、小売業での例を交えながら解説します。(小売業での事例は、コラム「入門編②:デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性に迫る」参照)
ビジネスモデルの変革
ビジネスモデルの変革とは、顧客に対するサービスの内容や提供方法、収益構造を転換することであり、デジタルトランスフォーメーション(DX)のゴールそのものです。
例えば、小売業においては、従来型の実店舗型のビジネスからeコマースになることで、下表のように「ビジネスモデル」が転換しました。
実店舗型(従来) | eコマース(DX後) | |
サービス内容 | 実店舗での商品販売 | Webサイト経由での通信販売 |
売上拡大要因 | 店舗の拡大 (店舗数、規模、立地) | Webサイトの利便性向上 (豊富な品揃え、機能、短納期) |
コスト構造/ コスト削減要因 | 店舗規模に比例した固定費/ 取扱商品絞り込み、大量仕入れ | 売上規模に依らない固定費(システム開発投資)/ 売上規模拡大による固定費比率の低減 |
主要成功要因 | 店舗数拡大、 店長人材の大量育成 | システムの利便性向上、 優秀なITエンジニアの確保 |
ITシステムの変革
デジタルトランスフォーメーション(DX)で目指すビジネスモデルの実現には、ITシステムの変革が必須であることは言うまでもありません。
コラム「入門編③:デジタルトランスフォーメーション(DX)実現の課題」で解説した「既存システムの負債」を早期に返済することで、既存システムの維持にかかる費用(守りの投資)を削減し、新しいビジネスモデルの実現に必要な新システムの開発(攻めの投資)により多くの予算を割けるようにすることが必要です。
業務オペレーションの変革
ビジネスモデルの転換は、多くの場合バリューチェーンの構造変化を伴うため、これらを支える業務オペレーションの変革も必要となります。
小売業では、eコマースへのシフトに伴い、実店舗運営に関わるオペレーション(接客、陳列、店舗毎の在庫管理、など)がほぼ不要となる一方、少数拠点に集約された物流配送センター内で大量多品種の商品を効率的に処理するためのオペレーションが重要になるなど、大きな転換が起こっています。
組織・人材の変革
そして、これらの変革を実現するには、社内の組織構造や求められる人材像についても大きな変化が求められることになります。
組織については、既存事業を担っている組織で大きな変革を実行していくことは難しいため、新しいデジタル専任の組織を組成し、CDO(Chief Digital Officer)の指揮のもと、全社的なデジタルトランスフォーメーション(DX)を牽引していくことが必要です。ただし、専任組織を作るだけでは不十分で、既存組織の抵抗勢力を説得し全社的な支援体制を構築することができなければ、成功はありません。そのためにも、経営陣が変革の意思と方向性を強く示し、社員一人一人に浸透させることが非常に重要です。
また、人材については、CDOをはじめ、それぞれの事業のデジタル化を牽引する新しいリーダー人材の採用・育成が必須となります。
デジタルトランスフォーメーション(DX)実現への3ステップ
以上のように、デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に向けては、経営層は様々な視点での整合をとりながら大きな変革を推進することが必要となります。しかし、それぞれの領域での改革は時間のかかるものであり、一足飛びに最終的な形を目指すのは現実的に難しいのも事実です。社員の共感を獲得し、経営層として改革への強い意志を持続するためにも、段階的に成功体験を積み上げていくことが必要です。
例えば、ベイカレント・コンサルティングでは、デジタルトランスフォーメーション(DX)を段階的に実現する戦略として、①デジタルパッチ、②デジタルインテグレーション、③デジタルトランスフォーメーション(DX)の完遂、という3つのステップを提唱しています。
デジタルパッチ
パッチ(「つぎはぎの当て布」の意味)という言葉の通り、既存のサービスやオペレーションをデジタル技術の導入により部分的に改善・効率化を図るステップで、サービスの一部をスマートフォンアプリでも利用できるようにする、業務オペレーションをIoTやAIの技術を利用して改善・効率化する、などの取り組みがこれにあたります。
ビジネスモデルの根本的な変革にはまだまだ及びませんが、デジタル化による効果を部分的に具現化し、社内外の期待感を高める上で重要な最初のステップとなります。
デジタルインテグレーション
デジタルパッチは、時には一貫性に欠ける部分的なデジタル化による改善・効率化であったのに対し、デジタルインテグレーションは、デジタル技術を活用しながら全社で一貫性のあるサービスの実現を図るステップになります。
小売事業の例では、実店舗、Webサイト、スマートフォンアプリの間で顧客管理体系(ID体系)が統一され、価格、ポイント、クーポンなどの購買体験が媒体によらず共通化された段階がこれにあたります。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の完遂
最後に、ビジネスモデルの変革による収益構造の転換、会社組織や業務オペレーションの変革に成功した状態が、デジタルトランスフォーメーション(DX)の完遂となります。
この状態になると、社内の抵抗勢力も沈静化し、デジタルを前提とした新しいビジネスモデルが自社の強みであることを社員全員が認識し、企業文化も変化を遂げていることでしょう。
デジタルトランスフォーメーション(DX)推進指標
デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進度合いのより詳細な評価指標としては、経済産業省が2019年7月に公表した「DX推進指標」があります。
この中では、①DX推進のための経営のあり方・仕組み、②DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築、という2つの大きな枠組みに対して、定性面、定量面での評価指標が詳細に定義されています。
デジタルトランスフォーメーション(DX)への本格的な取り組みを開始されている企業の方は、施策の網羅性の確認や、各施策の進捗の客観的な評価のために、活用されてみると良いでしょう。
まとめ
本コラムでは、デジタルトランスフォーメーション(DX)を目指す上で必要となる変革の構成要素、変革の進め方のステップについて解説しました。
デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む経営者の方は、これらの視点を考慮した上で、完遂に向けたストーリーと戦略を練ることが必要です。
デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みをお考えの方へ
デジタルトランスフォーメーション(DX)の成功には、網羅的な視点での整合性をとりながら、様々な変革を段階的・計画的に推進することが不可欠です。
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そのような方は、ぜひ、コアコンセプト・テクノロジーにお問い合わせください。
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