エンジニアのモチベーションアップのために気を付けるべきポイント

少子高齢化、働き方改革、DXなどさまざまな環境変化の中で、製造業に限らず人材不足が顕著となり、従業員満足度という指標も多くの企業で重要視されています。

特に日本ではデジタルトランスフォーメーション(DX)を支えるIT人材が不足しており、人材の獲得はもちろんのことながら、いかにモチベーションを高くコミットしてもらえるかは非常に重要なポイントとなります。

本コラムでは、エンジニアのモチベーションアップに焦点をあて、その重要性やモチベーション向上に当たってやるべきことを解説します。

目次

  1. DX実現のためには、開発エンジニアのモチベーションアップが大事
  2. エンジニアのモチベーションを下げる要因とは
  3. エンジニアのモチベーションを保つために行うべき5つのこと
  4. DXを支えるのは従業員のモチベーション

DX実現のためには、開発エンジニアのモチベーションアップが大事

DX実現のためには、その中枢であるシステム開発を成功させなければなりません。システム開発が成功するか否かは開発エンジニアのスキルに寄るところが大きいと言えますが、もう一つの成功のカギは、『エンジニアのモチベーションを高く保ち続けるかどうか』です。

システム開発は長丁場です。また、顔なじみの自社エンジニアだけでなく、外部エンジニアとチームを組んでスクラム開発をする機会も多くあり、人間関係を構築する前に開発実務に就かざるを得ないことが多いなど、ストレスがかかりやすい職場と言えるでしょう。

DXの実現、そしてシステム開発を成功させるために、システム開発責任者はエンジニア個々人のスキルアップだけでなく、モチベーションアップの方策をしっかりと考えなければならないのです。

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エンジニアのモチベーションを下げる要因とは

エンジニアのモチベーションを下げる要因は、

・評価基準がスキルと連動していない
・スキルの不足感
・コミュニケーションの不足
・キャリアの不透明さ
・アンフェアな評価

など様々な要因が絡み合っており、これらは、エンジニアのパフォーマンスに多大な影響を及ぼします。

エンジニアのモチベーションを上げるためには、早急な職場環境やコミュニケーションの改善が不可欠です。

評価基準がスキルと連動していない

スキルで評価してほしい向上心の高いエンジニアにとって、在籍年数が評価に大きな影響を与える職場環境は、モチベーションが下がりやすいと言えます。

日本では、一部のベンチャー企業を除いて、多くの企業が年功序列の評価基準となっており、優れた実績を持っているエンジニアでも、在籍年数が短ければ評価されないことがあります。特にIT業界では転職が一般的で、在籍年数だけで評価される企業ではモチベーションを維持するのが難しいでしょう。

エンジニアのモチベーションを向上させるには、スキル向上と公平な評価の機会が提供されることが鍵となります。すべてのエンジニアがスキルを上げることでチャンスが得られる環境づくりが求められています。

成長を実感できない

エンジニアにとって、自身のスキルアップを感じられない業務を淡々とこなすことは、モチベーションを下げる大きな要因です。エンジニアは忙しい仕事が多いため、納期に追われる日々が続きます。その中で、

「なぜいつも追われているのだろう?」
「成長が感じられないし、エンジニアに向いていないのでは?」

とネガティブな思考に陥りがちです。

特に周囲のエンジニアが高いスキルを持ってたり、華々しい活躍をしていたりすると、ついつい自分と比べて卑屈になり、自身の成長を実感しにくくなります。

日々の業務の中に新たな挑戦や学びを取り入れることで、エンジニア自身が成長を実感し、これからの成長に見通しを持てることが大切です。

業務内容と待遇が乖離している

エンジニアにとって、業務内容と待遇がかけ離れていることはモチベーションを大きく下げる要因の一つです。

中小企業でよく見られる現象で、業務経験や負荷が増えても社内でまったく評価されず、役職や収入が向上しないことがあります。どんなに優れたエンジニアでも、この状況ではモチベーションを維持するのは難しいでしょう。

自身のスキルや業務負荷が適切に評価されない場所で働くことは、エンジニアにとって損失でしかありません。
そしてそれを見ている周りのエンジニアも、業務をこなした先に明るい見通しを持つことは難しいでしょう。

エンジニアのモチベーションを高めるためには、業務内容や負荷に見合った待遇を整えることが必要です。

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エンジニアのモチベーションを保つために行うべき5つのこと

エンジニアのモチベーションアップのために気を付けるべきポイント

次に、エンジニアのモチベーションを維持するために必要なことを5つの視点から解説します。

1.開発環境を整える

システム開発を担当するエンジニアの経験値やスキルにばらつきがあることは仕方がありませんが、エンジニア個々人の最大のパフォーマンスを引き出すためには、やはり開発環境の整備は不可欠です。

1-1 ハイスペックのパソコンを用意する
1-2 デュアルモニター(ディスプレイ)を標準とする
1-3 デスクは高めのパーティションで区切り、集中できるようにする
1-4 使用ソフトのバージョンは最新のものに統一する
1-5 空調は温度だけでなく湿度も意識して調整する
1-6 クワイエットルーム(会話禁止の部屋)を作り開発に集中させる

案外見落としがちなのが、開発部屋のニオイです。全員が好む香りを見つけることは難しいですが、数種類のフレグランスを準備してエンジニアに嗅いでもらい、最も人気のあるものを部屋の香りづけに使用するなどの工夫をしてみても良いですね。

2.勉強の機会を積極的に作る

エンジニアはシステム開発を担当している過程で急激に成長するものです。自分の技術が向上していることを感じると、モチベーションもアップします。

2-1 定期的に著名人による技術勉強会を開催する
2-2 有名なアジャイル開発の現場を見学させてもらう
2-3 開発参画後に使用言語に慣れていない場合はチュートリアルを開く
2-4 用語集を作成し、エンジニアに共通の言語を根付かせる
2-5 主要人物集を作成し、どの質問は誰に行えばよいのかを明確にする
2-6 リクエストのあった本は会社経費で購入して読めるようにする

特に技術勉強会の開催はおすすめです。弊社(CCT)の場合は、テスト駆動開発の著名人を招いてワークショップを開催することで、エンジニアのスキルとモチベーションが急激にアップしました。

3.ゴールを明確に示しPDCAレビューを頻度高く回す

長丁場のシステム開発においては、「自分が今担当している業務は、システム全体のどの部分に活かされるのか?」などが見えずにモチベーションがダウンしてしまうことがよくあります。責任者はゴールをしっかりと示してあげましょう。

3-1 開発の目標とゴール・スケジュールを壁に貼りだし、明示する
3-2 アジャイル開発のスプリントは1週間など短めで設定する
3-3 頻度高く全体ミーティングを行い、開発進捗を共有する
3-4 スプリントごとの開発工数の見積もりと実績を共有する

システム開発はパソコンに向かって黙々と作業をしなければならないという意味では過酷な仕事です。あえて「人としゃべり、コミュニケーションをとらせる」ことを意識し、自分の動きがシステム開発全体に役に立っているのだ、ということを認識させてあげ、モチベーションアップを狙いましょう。

4.評価制度を明確化する

ここで、事業部制と機能別組織性を組み合わせてエンジニアの等級を細分化するGMOペパボの事例を通じて、等級評価制度を分かりやすく紹介します。

GMOペパボは2020年7月から、エンジニアの評価制度を大幅に改善しました。
評価基準をより細分化し、報酬を増額し、エンジニアリングマネージャの役割を導入したのです。さらに、技術力の評価は「作り上げる力」「先を見通す力」「影響を広げる力」の3つを軸で評価を行います。

この変更で、エンジニアのスキルや成長が明確に評価されるようになりました。さらに、エンジニアリングマネージャの役割変更やアクション評価の廃止など、評価制度の改善を通じて、エンジニアの成長をサポートするための仕組み作りに取り組んでいます。

5.リフレッシュの機会を多く作る

Googleをはじめ、優秀なエンジニアがいる企業には、エンジニアをリフレッシュさせるための設備やしかけが多くあります。息抜きは個々人に任せるのではなく、積極的にリフレッシュさせてあげましょう。

5-1 マッサージ器具などを使えるようにする
5-2 おやつタイム、昼寝タイムなどを自分のペースで取れるようにする
5-3 マッサージやストレッチなどの利用補助金を出す
5-4 フリーアドレスやリモート開発などを採用する

やはりエンジニアは心と身体がリフレッシュされると良い開発を行えるものです。Googleのように無料の食事やビリヤード台まで用意することはなかなか難しいでしょうが、積極的にリフレッシュできる環境を整えてあげましょう。

DXを支えるのは従業員のモチベーション

エンジニアのモチベーションアップについて解説しましたが、エンジニアに限らず、DXは従業員とゴールを共有しながらともに変革を進める団結力は必須といえます。またエンジニアにばかり特別な待遇にしてしまうと、その他の従業員から不満が上がることもあります。

そのため、DX推進をするにあたり、自社にとってどれだけ有益でインパクトがあるのかもしっかり示す必要もあるでしょう。DX推進は企業にとって非常に大きなプロジェクトとなります。今回はモチベーションや推進力の視点から解説しました。ぜひ参考にしてみてください。

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