バッファローが展開する法人向け事業 中小企業の課題を解決し、DXを支えるネットワークの在り方とは

多くの企業が時代に沿った新たなソリューションを導入し、業務効率化や新規事業の創出に取り組む現代。そうした事業活動に欠かせないのが、安定したネットワーク環境です。

愛知県名古屋市に本社を構える株式会社バッファローは、長年にわたりネットワーク関連の商品やサービスを提供してきました。個人向け商品のイメージが強い同社ですが、法人向けにもさまざまなサービスを提供し、日本の中小企業を始めとする多くの企業の事業活動を支えています。

ネットワーク環境の観点から今の日本企業が直面するDXの課題はどこにあるのか。顧客の声に耳を傾け、開発やサービスに生かしてきたバッファローならではの、法人事業の強みとは何なのか。

合同会社アルファコンパス 代表CEOで、株式会社コアコンセプト・テクノロジー(CCT)のアドバイザーも務める福本勲氏と、株式会社バッファローで事業本部法人マーケティング部長を務める富山強氏の対談をお伝えします。

富山 強氏(株式会社バッファロー 事業本部法人マーケティング部長)、福本 勲氏(合同会社アルファコンパス 代表CEO )
左から富山 強氏(株式会社バッファロー 事業本部法人マーケティング部長)、福本 勲氏(合同会社アルファコンパス 代表CEO )
富山 強氏
株式会社バッファロー 事業本部法人マーケティング部長
1996年バッファロー入社。法人営業、営業技術、法人向け製品のマーケティング部門などバッファローで長年BtoBビジネスに携わってきた。2020年に法人マーケティング部長に就任。法人向け商品の企画・マーケティングを行っている。
福本 勲氏
合同会社アルファコンパス 代表CEO
1990年3月、早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。同年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRMなどのソリューション事業立ち上げに携わり、その後、インダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」を立ち上げ、編集長を務め、2024年に退職。
2020年にアルファコンパスを設立し、2024年に法人化、企業のデジタル化やマーケティング、プロモーション支援などを行っている。
また、企業のデジタル化(DX)の支援と推進を行う株式会社コアコンセプト・テクノロジーをはじめ、複数の企業や一般社団法人のアドバイザー、フェローを務めている。
主な著書に「デジタル・プラットフォーム解体新書」(共著:近代科学社)、「デジタルファースト・ソサエティ」(共著:日刊工業新聞社)、「製造業DX - EU/ドイツに学ぶ最新デジタル戦略」(近代科学社Digital)がある。主なWebコラム連載に、ビジネス+IT/SeizoTrendの「第4次産業革命のビジネス実務論」がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。2024年6月より現職。

(所属及びプロフィールは2024年12月現在のものです)

目次

  1. 中小企業を支援し、経営課題の解決に向けソリューションを提供してきた法人事業
  2. 状況に合わせたきめ細かな設定でリモート管理ができるサービスをリリース
  3. 2割以上の中小企業が10年以上前のWi-Fiを使用
  4. 法人事業で大切なのは「安定稼働」、顧客の声に耳を傾け時代の変化に合わせたチューニングを

中小企業を支援し、経営課題の解決に向けソリューションを提供してきた法人事業

福本氏(以下、敬称略) 最初に御社の事業概要についてお聞かせください。

富山氏(以下、敬称略) 株式会社バッファローは、無線LANやハードディスクをはじめとするネットワーク機器やパソコン周辺機器の製造販売メーカーです。会社名から、ときどき外資系と思われることがありますが、名古屋が本社の日本企業です。

家電量販店などで当社の赤い箱がずらっと並んでいるのを目にしたことがある方もいるかもしれません。個人の方が自宅などで使うようなBtoC、コンシューマー事業のイメージが強い当社ですが、実はBtoB、法人向けの事業にも取り組んでいます。

福本 御社の法人向けサービスはいつから、どのように発展してきたのか、これまでの歩みをご紹介いただけますか。

富山 2001年に法人向けの無線LAN商品の発売を開始しました。2004年には法人向けのNAS「TeraStation」を発売、1TBで10万円以下の当時としてはかなり価格を抑えてリリースしました。いわゆる固定資産処理の関係で部門経費で買える手軽さを意識し、10万円以下という価格設定にこだわった商品です。そのほかにも、無線LANやルーターなど、20年あまりにわたり、主に中小企業の法人向けにさまざまな商品、サービスを展開しています。

先ほどお伝えしたように、当社はコンシューマー向けのイメージが強く、法人事業についてはまだまだ認知されていない領域です。しかし、具体的な数字は公表していないのですが、毎年確実に売上を伸ばしており、事業規模としても大きなものになってきています。私自身は法人マーケティング部で法人事業を担当しているのですが、事業の成長、喜んでいただいているお客様の声を実感しつつ、さらなる伸び代があると捉え、いろいろと取り組んでいます。

バッファロー 富山氏
「事業の成長、喜んでいただいているお客様の声を実感しつつ、さらなる伸び代があると捉え、いろいろと取り組んでいます」(バッファロー 富山氏)

福本 法人向けに事業を展開する上で、掲げている方針や戦略などはあるのでしょうか。

富山 根本にあるのは、特に中小企業を支援し、経営課題の解決に向けたソリューションを提供する考え方です。中でも3つの大きな軸があり、一つが人材・人手不足、二つ目がBCP対策、三つ目が業務のデジタル化です。これらの経営課題を、ネットワーク関連の商品やサービスによって支えていくのが大きな方針です。

状況に合わせたきめ細かな設定でリモート管理ができるサービスをリリース

富山 例えば、人手不足の解消に向けたソリューションの一つに、ルーターやスマートスイッチなどの保守管理をリモートで行えるサービス「キキNavi」があります。当社の商品を使っていただいているユーザー企業や、取り扱っている販売店ならばどなたでも無料で使えるクラウドサービスで、モデルにもよりますが、機器の監視や更新、設定情報の反映などをすべてクラウド上で行うことが可能です。

バッファロー

福本 キキNaviはどのようなきっかけで始めたのでしょうか。実際にユーザーから寄せられた要望や課題は、どのようなものがありましたか。

富山 キキNaviはどちらかというと、企業や官公庁、団体といったエンドユーザーよりも、地域の事務機器を取り扱う店舗やSIerさんなど、当社とエンドユーザーの間に立っているパートナーの皆様からの要望を受けて始めたサービスです。

パートナーの皆様が複数のエンドユーザーの機器を管理する際、クラウドで一括監視できれば、何かある度にユーザー先に行く必要がなくなります。VPNでつないで管理しているケースもありますが、回線維持にもコストがかかります。このサービスをお使いいただくと、その分の工数を下げ、機器管理者の負担を少なくすることができます。

こうしたリモート管理ができるクラウドサービスは海外ベンダーなども出していますが、多くがエンドユーザーである企業の情報システム担当者が直接使うことが想定された仕様になっています。その形で使う分には問題ないのですが、お伝えしたようにパートナーの皆様が、自分たちとは別組織であるエンドユーザーの機器を管理する場合は、ここの情報は管理担当者には見えたらいけないとか、この情報はエンドユーザーも管理担当者も両方アクセスできるようにしたいとか、きめ細かな設定が必要になります。約7割の企業が情報システムをアウトソーシングしていると言われている日本特有の事情に合わせて、日本の企業の皆様が使いやすいよう、管理者権限や階層にこだわってサービスを作り上げました。

2割以上の中小企業が10年以上前のWi-Fiを使用

福本 現在、業種に関わらず、全国で多くの企業がDXに取り組んでいます。御社の専門であるネットワークの観点から、DXを推進する上で障害になっていると思うことや、改善したほうが良いと感じる点はありますか?

富山 当然ながら社内のネットワークインフラの整備が必要不可欠です。

しかし、現状でとりあえずパソコンが社内にあってインターネットも使用できている場合、特に考えることなくそのまま施策を進めている中小企業も多いのではないでしょうか。2023年6月に当社が実施した「中小企業のWi-Fi導入状況に関する調査」では、ほぼすべての中小企業がWi-Fiを導入済みであるものの、そのうち2割以上の企業がWi-Fiの導入時期については「10年以上前」と回答しています。

バッファロー

例えば、人手不足が課題となっている介護の現場では、それを補うために国からの補助金などを使った介護ロボットやシステムなどの導入が進んでいます。夜間の見守りなどを行ってくれる介護ロボットは現場で働く方たちの負担を大きく減らしてくれますが、ネットワークが整っていないとうまく動くことができません。さらに、介護施設などの場合は情報システム担当者を置いていないところも多いため、何が問題なのか、どこに相談したらよいかわからないことが課題となります。

それから一般企業でもコロナ禍以降オンライン会議が増え、社員の皆さんが個別ブースなどから出席するためにパソコンを持って社内を移動することが多くなっています。そうした際に、自分の席だと問題ないのに、移動するとうまくつながらなくなってしまう、といった問題もよく聞きますね。

福本 マルチコンテキスト化、IoTの拡充などにより、やり取りする情報量が従来に比べてどんどん増えていく一方で、ネットワーク環境が以前と同じままだった場合、仕事をしていて通信速度が遅くなったと感じることもあるかもしれないですね。

アルファコンパス 福本氏
「やり取りする情報量が従来に比べてどんどん増えていく一方で、ネットワーク環境が以前と同じままだった場合、仕事をしていて通信速度が遅くなったと感じることもあるかもしれないですね」(アルファコンパス 福本氏)

富山 おっしゃる通りです。情報量が格段に増えて不便さを感じることが、ネットワーク環境整備の必要性に気がつくきっかけとなることもあるかと思います。

皆さん、パソコンは大体5年から7年で定期的に買い替えるのですが、Wi-Fiについてはそもそも見直しをしていない企業も多いかと思います。とりあえずネットにつながって使えている、何となく遅いなとは思いつつも普段からそれを使っているのでその状況が当たり前になっている方もいらっしゃるかもしれません。

Wi-Fiの通信規格は登場した年代によって最大通信速度が大きく異なっており、Wi-Fiが登場した初期のものに比べて、新しいものは大幅な高速通信が可能になっています。例えば2024年には、従来の規格に比べて最大通信速度や接続の安定性が向上し、通信効率や遅延が改善されたWi-Fi 7も登場しています。古いものは現代の情報量についていけないケースも出てきます。さまざまな施策をスピード感を持って進めるためには、社内のネットワークインフラが十分なものなのかどうか、今一度見直すことが必要です。

法人事業で大切なのは「安定稼働」、顧客の声に耳を傾け時代の変化に合わせたチューニングを

福本 法人顧客の困りごとを聞いてソリューションを提供する、法人向けにサービスを提供する上で意識していることや、大事にしている方針などはありますか。

富山 ひと言で言うと、「安定稼働」です。表現は地味ですが、ネットワークはそもそも、何も問題がない状態が一番です。もちろん、法人ではなく一部のコンシューマーのお客様の場合は、例えばゲームを快適にプレイしたいとか解像度の高い動画を楽しみたいなど、特定の要望に合わせたものをご用意する必要があります。しかし一般的なビジネス領域において法人のお客様が求めているのは、トラブルのない安定稼働です。そのため、私たちもスピードがマックスギリギリまで出るようなチューニングはしていません。それよりは、例えば50台以上が同時に接続しても安定してつながるなど、仕事をする上で皆さんが快適に使える状態を保てるよう、こだわって商品やサービスを磨き上げています。

福本 次々と新しい規格が出るなどネットワーク環境は常に変わっています。そうした中で、御社が長年に渡り事業を継続できたのは、時代の変化に追随できる力があったからではないでしょうか。その点で御社の事業に対する強みはどこにあるとお考えでしょうか。

富山 当社のメイン商品については、基本的に国内にいるエンジニアが対応しています。そしてそのエンジニアたちがお客様先に行き、直接話を聞いています。そのため、環境の変化に伴う細かな要望や、新たに出てきた需要などを直接伺い、作り手として必要性を実感することができるんです。何かトラブルがあってもすぐにエンジニアが対応を行うため、お客様の声を聞いて商品やサービスに反映していくことが可能です。もちろん、必要に応じて変えないところもありますが、こうした仕組みが特に日本のお客様の悩みや課題に合わせてカスタマイズし、チューニングされたものを提供できる背景にあるのではないかと思います。

バッファロー 富山氏
「環境の変化に伴う細かな要望や、新たに出てきた需要などを直接伺い、作り手として必要性を実感することができるんです」(バッファロー 富山氏)

福本 今後、法人事業としてやってみたいこと、新たにチャレンジしたいことなどはありますか。

富山 先ほど「安定稼働」とお伝えしましたが、今後はさらにそれを進化させて、お客様が快適に使えるものをリリースしていきたいと思っています。

より一層強化したいものの一つが、セキュリティの領域です。セキュリティは当然ながら、我々の商品を何か1つ入れたとしても「これで100%大丈夫」という世界ではありません。例えば、当社としてはパソコン用のアンチウイルスソフトを出していないので、安全な事業活動の観点で考えると、当社のもの以外を含めた全体的な視点が必要になってきます。自社のものに限定せず、他社の製品を含めたシステム全体でセキュリティをより強化できるような提案を行い、お客様に安心していただける形を作っていければと思います。

さまざまなAIのソリューションが出てきて、実際のビジネスの現場でも活用されているものが数多くあります。AIの分野はまだまだ進化をし、さらに実用化の分野も広がると思うので、それに伴うネットワークのあるべき姿を当社としても考えていく必要があります。AI時代に求められるネットワークの要件、最適なデータの保存場所、こうしたものを最適化していけるよう、取り組んでいければと思います。

福本 ネットワークは事業の成長、そして企業活動を支える重要な土台ですね。本日はありがとうございました。

バッファロー

【関連リンク】
株式会社バッファロー https://www.buffalo.jp/
合同会社アルファコンパス https://www.alphacompass.jp/

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