製造業のDX人材に求められる英語力。バイリンガルは何ものにも代えがたいスキル(下)

人材不足が続く製造業のDX人材。上編では、パーソルキャリア株式会社にて語学力を活かすハイクラス転職サービスを提供する BRS事業部のアソシエイト・ディレクター、右田悠哉氏に製造業のDXを取り巻く転職市場の現状についてお聞きしました。下編では、グローバル展開する製造業企業にとって常に採用課題となるバイリンガル人材、外国人人材を取り巻く状況について、お聞きします。

右田 悠哉氏
右田 悠哉氏
パーソルキャリア株式会社 BRS事業部 アソシエイト・ディレクター
2002年に学習院大学経済部経営学科卒業。大手証券会社でリテール営業を経験後、2005年にインテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。自動車、化学業界を担当。2017年からBRS事業部。

パーソルキャリア株式会社 BRS事業部
高まるバイリンガル人材の需要に応え2012年に設立。取引企業のうち、外資系企業が6~7割を占める。転職希望者のうち、約1割は外国籍でもある。

――BRS事業部ではバイリンガル人材の紹介を行われていますが、英語ができる人材の採用ポジションは増えていますか。

右田氏(以下同) かなり増加しています。2011年時点では、製造業における全ての求人の中で英語が求められる求人は約10%ほどでしたが、2022年にはビジネスレベルの英語力が求められる求人は約23%です。簡単な読み書きができるレベルも含めると、30%以上になるかと思います。

右田 悠哉氏

――製造業の中で特にバイリンガル人材の採用意欲が高いポジションはありますか。

ソフトウェアエンジニアです。この機能は米国で、この機能は中国で、といったように一ヵ所で製造している企業はほぼありません。システムにおいても各拠点間で連携する必要があり、英語にも対応できる人材ソフトウェアエンジニアは貴重な存在です。

――バイリンガル人材だと、条件や年収はどのように変わってきますか。

一気に年収が上がるということは少ないですが、バイリンガル人材とそうでない人を比べたときに、約1割から2割の差が出ます。また、紹介できる案件数も2倍ほど増えます。

――英語力のレベルはどのように分けられるのですか。

弊社では5段階に分けています。まず下から、「ベーシック」。日常会話以下くらいの水準で、海外のホテルに行って部屋の番号を聞いたり伝えたりできるようなレベルです。その次が「カンバセーショナル」。上手ではないけれど、会議などのビジネスシーンでもなんとか英語を使えるという水準です。その上が「ビジネス」。この水準になると、ビジネスシーンでも英語を使えるようになります。そして、流暢に英語を扱える「フルーエント」があり、最上級が「ネイティブ」です。

――転職希望者の英語力はどのように判断しているのですか。

TOEICスコア等で測れない実際の英語力については、「少し英語で会話してもよろしいですか」と問いかけ、コミュニケーションの一部を英語で行っています。BRSでは中国や米国など、外国籍のコンサルタントが4割を占めるほか、すべてのコンサルタントがバイリンガルです。やりとりの一部またはすべてを英語で行うことで、転職希望者の英語能力を正確に判断することができます。
ご自身では英語に自信が無くても、私どもの目線で見て十分な英語能力を保有していると判断するケースも多くあります。

――ビジネスシーンで必要となる英語力の目安はありますか。

あくまで目安となりますが、TOEICでは700点以上あったほうが良いと思います。ただ、700点以上あっても「会話に自信がありません」という方もいらっしゃいます。会話を流暢にできるのは850点以上の方が多く、ビジネスレベルで問題なく会話できる方は800点以上のスコアホルダーが多い傾向にあります。
また、業務の中で英語を使っている方でも、外資系企業と日系企業とでは、外資系出身の方のほうが上手であることが多いです。日系企業では海外担当の方であっても、通訳を介したり、英語を使う機会が定例会議の月1回だけであったりと、業務の中で英語を使用する機会が比較的少ないように感じます。

一方で外資系企業では、日本国内の業務であっても上司が海外籍で、英語で報告する場合が多いなど、日系企業よりも英語を使う機会に恵まれます。

右田 悠哉氏

――外資系企業にない日系企業の魅力は何ですか。

意思決定を日本の本社でできることは大きな魅力ではないでしょうか。外資系では基本的に本国の本社に確認をしてから動くことになります。したがって、大きな意思決定に直接的にかかわることは少なくなります。

また、外資系ではポジションが突然クローズしてしまったり、部署ごと解散してしまったりすることもあります。そういった意味で、日系企業のほうが安定感はあるとおっしゃる方が多いです。

――グローバル展開する製造業ではバイリンガル人材の他、外国人人材の採用も必要となります。カルチャーの違いなどから外国人人材は定着が難しい印象ですが、定着させるためのどのような工夫がありますか。

働き方に柔軟性がある企業が定着に成功していると思います。責任と自由さを同居させると言ってもいいかもしれません。日本では時間をかけて物事を達成することを美徳としてとらえるところがありますが、海外ではそうではありません。時間外労働に対し価値観の異なる外国人人材のスキルが必要で採用するのであれば、日本企業の慣習を強制しないことが大前提となります。

また、言葉をあいまいにしないことも大切です。日系、外資系問わず、業務内容や目標設定、報酬を明確にしている企業は外国人人材の定着に成功しています。オファー段階で報酬提示などを具体的かつ明確にする必要があります。

この記事のポイント
  • 英語を必要とする求人が増加傾向
  • 海外に行きたいなら日系企業、英語を鍛えたいなら外資系企業
  • 日系企業にしかない魅力は、大きな意思決定にかかわりやすいこと

(上編はこちら)

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