DX推進の現場から
武尾 優介
株式会社コアコンセプト・テクノロジー
エンジニアリング プラットフォーム事業本部 EP第2部 マネージャー


大学卒業後、人材系広告代理店に入社。部門のマネジメントを行いながら、多くのクライアン企業の経営課題に対して人材面からサポート。2019年に株式会社コアコンセプト・テクノロジーにジョイン。現在は、企業の変革をDX人材面で支援をしている。2019年にMBAを取得。

DXの情報や知識、事例はインターネット上・書籍などさまざまなコンテンツを通して情報が届けられています。しかし、DX推進の答えは企業の数ほどあると表現しても過言ではなく、さまざまな要因によってアプローチ方法は異なります。

多くの企業のDX推進を現場から支援してきたプロフェッショナルからヒントを得る企画「DX推進の現場から」の第2弾は、株式会社コアコンセプト・テクノロジーの武尾 優介氏に話を伺います。

武尾 優介氏

ーーまずは武尾様のご経歴を伺えますでしょうか。

武尾:新卒で採用系のメディアを中心とした代理店に入社し、中途・新卒採用の大手ポータルサイトなどの広告枠の営業を行っていました。

クライアントはお一人でやっている歯医者さんから大手企業まで幅広く担当していました。その広告代理店で17年ほど経験した後、2019年にCCTににジョインしています。

ーー1社で長く御経験されていますが、どのような部分に面白みを感じていましたか。

武尾:新卒1年目で、 当時の部署で1、2を争うビッグクライアントの担当となりました。

当時、求人広告は採用のメインツールで、大企業の経営者に対して、事業に変革をもたらす人材を求人メディアで採用しましょうと提案することが刺激的で、やりがいを感じていました。

また社内でも良き出会いに恵まれました。営業のエッセンスを多く学びながら自身のスキルを磨くことができたことも大きかったです。

ーー人材領域の広告代理店から製造業DX領域に飛び込んだきっかけはなんでしょうか?

武尾:当時は管理職として、裁量権のある仕事を任せられていましたが、採用領域において求人メディアがメインツールではなくなっているトレンドの変化がありました。

また自分の器の大きさがマネジメントする部隊の器に比例すると考えていました。そのため体系化された知見を身に着ける必要性を感じ、経営学の修士課程(MBA)で学び始めていました。

大学院で社外の方々と情報交換していく中で、新しいチャレンジをしたいと強く思うようになり、一念発起して転職を決意しました。

武尾 優介氏

ーー現在CCT社でご担当されている領域について伺えますか。

武尾:エンジニアリングプラットフォーム事業本部という部署で、SIer(システムインテグレーター)のクライアントを中心に人材調達の支援を行っています。
国内屈指のSIerさんとも数多くお取引させて頂いており、1社で100名弱の規模の人材を支援させて頂いている先もございます。

ーー日々の業務の中ではどのような部分にやりがいを感じていますか。

武尾:我々人材調達支援の事業部は、クライアントの人材が足りないというニーズに対して、まず我々のプロパー社員で対応できるかを判断します。難しい場合はパートナー企業から案件に最適な体制を組んでご提供する比較的シンプルな構造となっています。

そのため、ややもするとこのクライアントとパートナーの間に入る人材は不要ではないか、という疑問も生じます。この間の部分でどのように介在価値を持たせるかという部分に非常にやりがいを感じています。

我々が間に入りクライアントに人材支援をすることによって、経営目標やプロジェクトを計画通りに進めることができる。結果的に我々が対峙する方の影響力が高まり、またご依頼を頂けるようになる。このような流れが作れた時はとても嬉しいですね。

ーーDX人材の枯渇は企業にとって死活問題です。人材調達が成否のポイントといっても過言ではありません。どのような人材を求めているか、という判断はどのようにされているのでしょうか。

武尾:関係性が強いクライアントに関しては弊社の社員が常駐しています。 クライアント社内の各PM(プロジェクトマネージャー)と密にコミュニケーションを取りながら、ニーズを把握しています。

常駐する者がいないクライアントについては、お付き合いしているカウンターパートの方に対して定期的にヒアリングしたり、他部署のご紹介をお願いすることもありますね。
業界的には、人材の需要に対して供給がまったく足りていないので、案件は常にありますので、丁寧にコミュニケーションを取りながら、不足している人材層を把握することを重視しています。

ーー現在のIT・DX人材で特にニーズが高い人材像はありますか?

武尾:大手のエンドユーザーと繋がりが深いクライアントでいうと、保守案件を多く抱えているので、 Java系の案件のニーズは高いですね。

インフラ領域では、オンプレミス環境からクラウドリフトする案件が多く、AWS、アジュール、GCPの構想を策定できる人材であったりとか、設計、開発のニーズは特に需要が大きい領域かと思います。

ーー「2025年の崖」が経済産業省から指摘されていています。 ブラックボックス化されている既存のオンプレミスのシステムからの脱却に大きなコストがかかるという話ですが、クラウドへの移行案件に携わる中で、ブラックボックスから脱却したいというエンドユーザーサイドの流れを感じますか。

武尾:現場もひしひしと感じていますね。。
既存システムのバージョンアップも同様ですし、インフラの領域においては先程お話ししたようにクラウドリフトの案件が増えています。政府も行政サービスをクラウドに移行する「ガバメントクラウド」(デジタル庁「ガバメントクラウド」)の取り組みを進めており、大型案件がSIerに降りてきています。今後既存システムをアップデートしていく案件はますます増えてくると予想しています。

ーー調達元となる人材についても伺わせてください。今お聞きした領域以外でもさまざまな技術領域で調達ニーズがあるかと思いますが、タレントプールはどのように蓄積されたのでしょうか。

武尾:弊社には多重請負構造をなくすという理念があります。そのため、1社1社に足を運び、各社に属する正社員の方々及び個人事業者の方々の情報を蓄積してきました。
その結果、現在では約5,000社と情報連携をしており、13万人を超えるデータベースを構築しています。基本的にはどのようなニーズであっても何らかのお答えできる体制は整っていると考えています。

ーー保有しているスキルであったり、技術水準はどのように把握されているのでしょうか。

ご提案の体制構築時には自社のプラットフォームを使っております。色々なキーワードでフィルタリングをしたり、提案書を読み込んで確認をしています。

提案書はパートナー企業のプレゼン資料となりますので、どういう意図で記載情報を含めたのかを探る。直近 2〜3年でどういう経験・業務を経験していて、それ以前にされていた業務とどのようなストーリー、関係性があるのかを読み込みます。

見極めの基準はとなると一概には言えず、なかなか非常に難しい分野になります。ですが、私の場合は提案書を細かく見ることで、ある程度高い精度で最適なスキルセットを持つチームを組織できると思っています。

武尾 優介氏

ーー前職の人材領域でのご経験が活かされていますね。

求人にまつわる事業領域で管理職をしていたので、求める人物像に対してどのような人物が適切かを把握するという点では経験が活かせているところかとは思います。

ーーDX推進においては、社内人材と外部人材の活用のバランスは大きなテーマになります。このバランスについてどのようにお考えですか。

武尾:DXという言葉は、経営の革新・変革を意味します。コンサルティングとしてその推進の一部に携わることはできますが、コアとなる部分は外部に依存することは難しいです。DX推進のコントローラーとして、内部でジャッジできる機能は最低限内部で備えておくべきだと思っています。

一方である程度変化の道筋が見えてきた段階では、実務担当の領域を外部人材をうまく活用していくと良いと考えています。

ただDXの核心部分を担うコンサルタントも連れてきてほしいというご要望は多いですね。

ーーコンサルタント人材を希望される企業は、具体的にどのような背景がありますか。

武尾:管理・推進ができるPM(プロジェクトマネージャー)の職能を担当できる人材が圧倒的に不足していることが大きな理由となります。これは弊社のクライアントでは企業規模にかかわらず共通している課題です。

エンジニアさんの特性とまではいえないのですが、プロジェクト全体を進行することよりも、特定の技術を追求することを重視する方が多い印象です。このことがPMの数が増えてこない一因なのかなという印象を持っています。

個人の志向の問題なので、社内の育成制度でマインド自体を変えるのは現実的ではないと思います。

そのため弊社が保有するタレントプールは、DXに課題を抱えている企業に対して、その解決策となる非常に高い価値があると考えています。

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