AIエンジニアとは?仕事内容や種類、求められるスキルを解説
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近年、産業界で急速にAIが普及してきました。このAIを作り、育てるAIエンジニアが注目を集めています。この記事では、AIエンジニアの仕事内容や種類、求められるスキルなどについて解説します。

目次

  1. AIエンジニアとは?
  2. AIエンジニアの仕事内容
  3. AIエンジニアとITエンジニアの違い
  4. AIエンジニアの種類と分類
  5. AIエンジニアに求められるスキル
  6. まとめ

AIエンジニアとは?

AIエンジニアとは、さまざまなAI技術を駆使して、ITシステムの構築やソフトウェアの開発を行う専門家のことです。AI技術は近年急速に進化し、私たちの生活の中のあらゆる場面で利用されています。AIエンジニアは、このAI技術を使って新たなソリューションを開発したり、既存システムの改善を行ったりする役割を担っています。

具体的には、機械学習やディープラーニングといった技術を用いて、問題解決の手順を考え、画像認識、故障予測、自動運転など、いろいろな業務システムにAIの技術を応用します。

AIエンジニアにはプログラミングスキルはもちろん、数学、統計学、データベース運用、データ分析などのさまざまなスキルが必要です。急速に進化する技術環境の中で、AIエンジニアの重要性はますます増しています。

AIエンジニアの仕事内容

AIエンジニアの仕事内容は、大きくAI開発、学習、分析の3つに分けられます。

AI開発

AI開発は、AIエンジニアのメイン業務ともいえます。ユーザーがAIで解決したいと考えている課題を分析し、開発するAIの要件定義やシステム処理、実装、テストなどを行います。

また、AIに声認識や画像認識などの機能を装備する場合は、ユーザーやデバイスとの相性を考慮した仕様にすることも、AIエンジニアの仕事です。なお、AI開発で使われる代表的なプログラミング言語としては、Pythonが挙げられます。

学習

AIは開発して終わりではなく、開発後はデータを入れて学習させることが必要です。AIエンジニアは学習させるデータの収集や作成を行います。また、不要なデータを削除する作業(クレンジング)も担当します。

大量のデータをAIが学習していくと、人間では気付かないような法則や関係性を発見できることがあります。また、人間の脳の働きを模したディープラーニングと呼ばれる手法で学習すれば、より複雑なパターンを発見できる可能性もあります。

分析

AIにデータを学習させた後は、AIが抽出したパターンやルールを使って学習データを分析し、状況判断を行います。

AI分析の対象となるデータの種類は非常に多く、画像や音声、文章、販売データなど多岐にわたります。これらのデータをAIに分析させて、得られた結果を確認・活用していきます。

AIエンジニアとITエンジニアの違い

AIエンジニアは、機械学習やディープラーニングなどを用いてAIを開発し、認識や予測の能力向上に焦点を当てます。また、AIエンジニアは未来志向に重点を置くのが特徴です。常にAI技術の最新動向を追い、将来的な応用に注力します。

一方、ITエンジニアは広範な情報技術に従事し、ネットワークやデータベース、ソフトウェア開発、セキュリティなど、ITインフラ全体の設計、構築、管理に携わります。そして、現在のシステムやインフラストラクチャの維持・管理に重きを置きます。

ただし、AIエンジニアとITエンジニアには共通点もあります。両者ともにコミュニケーション能力や問題解決能力、チームワークが求められます。また、技術の進歩について常に学習し続けることが必要です。

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AIエンジニアの種類と分類

AIエンジニアという職種の中には、いろいろな仕事の種類があります。ここでは、代表的な5種類について解説します。

機械学習エンジニア

機械学習エンジニアは、コンピュータにデータから一定の法則などを学ぶ方法を教え込むエンジニアです。機械学習エンジニアに教え込まれたコンピュータは、人が介入しなくてもデータから学習できるようになります。

膨大なデータから一定の法則などを学ばせることは、数学的な構造やアルゴリズムを用いて予測や分類を実行し、AIモデルを訓練することによって可能となります

機械学習エンジニアが活躍する場面は、AI開発の初期段階であり、ビジネスの内容とは直接かかわらない領域となります。機械学習を専門領域とするソフトウェアエンジニアといっていいでしょう。

機械学習エンジニアは自ら作成したモデルを、新しいデータに基づいて正確な予測や判断を行えるように調整し、他のエンジニアと連携しながら実用の域に到達させます。機械学習エンジニアが活躍できる業界の幅は非常に広くなってきており、医療や金融、天気の予測にいたるまで、さまざまな領域で必要とされてきています。

データサイエンティスト

データサイエンティストは大量のデータを分析してビジネス上有益となるデータを引き出す専門家です。統計学をはじめデータ解析術に優れています。

データサイエンティストの仕事の主な目的は、データからビジネスに有益な価値ある情報を発見することです。データサイエンティストは各業界で非常に注目されており、今やビジネスや研究の最前線に立つ職種になってきました。

コンピュータの性能が上がりデータの収集や処理能力が飛躍的に高まったことから、データの活用研究は一段と進み、より複雑な分析が可能になっています。このような背景もあり、データと統計学、分析手法を理解したうえでビジネスにもたけているデータサイエンティストの活躍の場は広がっています。

データアナリスト

データアナリストは、データを分析する専門家です。現在あるデータから統計、分析の手法を用いて、企業の意思決定を支援します。

例えば、商品Aの売り上げが下がったという課題があった場合、マーケティング部門の感覚では、ライバルメーカーの新商品Bの登場およびそのTVCMが原因とされているとしましょう。感覚ですのでそれを裏付ける証拠はありません。

データアナリストは、商品Aの各販売場所の売り上げ推移、ライバルメーカーの新商品Bの売り上げ推移、TVCMが流れた番組の視聴率、ネットの口コミなどを収集し分析します。

その結果、マーケティング部門の感覚による仮説がデータによって裏付けられれば、自社においてもCMやキャンペーンを行ったり、ライバル商品より有利な点を強調した情報をSNSで流したりするという対策が打てます。

このように、データアナリストは統計と分析の手法を用いて、数値化して物事を判断することで、科学的な経営判断ができるようにサポートします。

データエンジニア

データエンジニアは、ビッグデータなど膨大な量のデータを分析しようとする際に、そのデータ活用基盤を構築し、中身のデータを整備するエンジニアのことです。

現代では、ネット上からビッグデータを収集して分析をかけることが多くなってきました。しかし普通の環境では処理しきれないため、ビッグデータを処理できる性能を持ったデータ活用基盤を構築する必要があります。

また、膨大なデータを処理できる基盤が整ったとしても、データの中身が使えるものでなければ意味がありません。

機械学習には、データに正解を付与する「教師ありデータ」の作成も必要になります。教師ありデータの品質も、AIの性能にかかわるので適切に作成することが必要です。それに加え、データ管理をするために形式を統一したり、欠けている部分を補ったりするのもデータエンジニアの仕事になります。

データアーキテクト

データアーキテクトはデータ構造を設計する技術者です。データサイエンティストもデータアナリストもデータエンジニアも、データアーキテクトが設計したデータ構造のもとで仕事をすることになります。

データアーキテクチャ(データ構造の設計)とは、AIに限らず業務システムやIT全般にかかわる一連のルールや方針のことです。作ろうとしているシステムがビジネス上の要求を満たせるようになるために、どのようなデータ・要件を整えればよいかを考えます。

そのために必要なデータは単一ではなく、さまざまな種類のデータを関連付けながら設計が進められます。ときに、複数の異なるシステムのデータベースをまたいでデータウェアハウスを構築することもあります。

データアーキテクトは、たくさんの業務システムやビジネスそのものの知見と経験値が求められる仕事です。

AIエンジニアに求められるスキル

AIエンジニアとは?仕事内容や種類、求められるスキルを解説
(画像=AkiraKaelyn/stock.adobe.com)

AIエンジニアにはどのようなスキルが求められるのでしょうか。AIエンジニアの種類と分類のところでいくつか紹介してきましたが、ここでは5つのスキルに整理して、さらに詳しく解説します。

数学的・統計学的知識

AIは機械学習をしますが、機械学習に必要になってくるのが、確率論や統計学、微分積分、線形代数などの知識です。機械学習では、大量のデータを繰り返し分析してその中に隠れる何らかの法則を見つけ出しますが、見つけ出すプロセスでこうした知識が必要になります。

なお、これらの知識は、高校・大学(学部)で学ぶレベルを押さえていれば問題ないでしょう。理系でなければ無理なのかというとそうではなく、文系でも教養課程で選択する数学や、リベラルアーツとして学ぶ高等教育を経験していれば問題ないといえます。ただし、理系・文系にかかわらず、数学的な思考やセンスを持っていることは重要です。

プログラミング知識

AIエンジニアには、プログラミングの知識も必要です。実際にプログラミングをしない人でも、知識を持っていればAIシステムの構築に役立ちます。逆に知識がなければ、データの加工作業などにおいて不具合が生じる可能性があるでしょう。

AIに必要なプログラム言語といえば、Pythonです。Pythonには、機械学習に適したライブラリが多くあるため、使いやすく、多用されています。Pythonはインタプリタ型言語で学びやすく、書籍や資料も多いのでAIエンジニアには必須の言語といえるでしょう

AIに使用するプログラミング言語には、他にもR言語(解析統計用)やJavaScript (Webシステム用)などがあります。オールラウンドに使え、完成したプログラムの速度が速くなるC++もできるとなお有利です。

AI開発現場では、やろうとしている処理によって言語を使い分けることができればベストです。複数のプログラミング言語をマスターしておけば、大変有利になるでしょう。

コンピュータサイエンス

AIエンジニアがコンピュータのことを知っておかなければならないのはいうまでもありません。コンピュータサイエンスとは、コンピュータの仕組みやデータ処理、アルゴリズム、プログラミングなど、ITに関連する幅広い分野の知識で、AIシステムを実装する上で必須となります。

サイエンスというと数学や自然科学的なことが想起されがちですが、コンピュータサイエンスは、エンジニアリングそのものであって、抽象的な概念ではなくコンピュータを作動させているしくみのことです。このしくみが理解できていれば、トラブルが起こったときも原因の想定が早くなります。

なお、コンピュータの中で動くプログラムに仕組まれたアルゴリズムには数学や統計学の知識がたくさん応用されています。そのため、コンピュータサイエンスも数学と根底ではつながっているといえます。

このように、AIエンジニアにはコンピュータに関する知識が不可欠で、最近ではセキュリティーに関する知識も求められています。

機械学習・アルゴリズムの知識

AIの開発には、機械学習やディープラーニングの知識が不可欠です。教師あり学習と教師なし学習、学習と推論、回帰と分類、パターン認識とモデルなど、AIモデルを構築するには機械学習の種類と方法を理解している必要があります。これらは、AIを人間に近づけるために重要な要素です。

AIエンジニアは、このような機械学習のアルゴリズムやモデルをあらわす数式、データ解析や統計などの理論を理解しておく必要があります。そして、機械学習とディープラーニングの両方をよく知ることで、いろいろなAI開発案件に対応できるようになるでしょう。

データベース運用知識

AIシステムに限ったことではありませんが、AIエンジニアに必要になるのがデータベースの運用知識です。プログラムはデータベースからデータを検索して引き出しますが、その動作を行うための代表的な言語をSQLといい、ISOで標準規格化されています。

SQLはコンピュータを扱う職業の人にとっては基本的なスキルですが、AIエンジニアも深層学習や機械学習でビッグデータを扱うにあたって、使いこなせるスキルが必要です。SQLなどのデータベース言語を操る能力とデータベースに関する知見の両方が求められます。

まとめ

AIエンジニアの仕事内容や必要なスキルについて述べてきましたが、DXが進捗する現代においては、ますますAIエンジニアが不足してくることが想定されます。

AIエンジニアを採用するだけでなく、自社内で育成していく努力も企業には求められるでしょう。

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