PLCとはどのような装置?導入時に押さえておきたい基礎知識を解説
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多くの工場や製造業の設備、電気製品には、動作を制御するPLCという装置が搭載されています。

このPLCがあることによって、さまざまな機械の複雑な制御も可能になりました。

また、PLCは工場の大規模な設備だけでなく、エレベーターや自動ドアなど、日常生活の身近な設備にも利用されています。

この記事では、PLCの仕組みや特徴、導入時に押さえておきたい基礎知識について解説します。

目次

  1. PLCとはどのような装置?
  2. PLCが採用されている機器・設備
  3. PLCを採用する4つのメリット
  4. PLCの種類
  5. PLCを選ぶ上での3つのポイント
  6. PLC販売を行う主なメーカー4選
  7. PLCの基礎知識を知って自社に最適な製品を導入しよう

PLCとはどのような装置?

PLCとは「Programmable Logic Controller」という言葉の略称で、製造業の設備や機器をコントロールする制御装置のことです。

日本国内シェアトップの三菱電機製のPLCを「シーケンサ」と呼ぶことから、PLCのことを「シーケンサ」と呼称するケースも多くみられます。

PLCは入力機器からの信号を取り込み、組み込まれているプログラムに従ってさまざまな処理を行い、接続された出力機器を制御しています。

遊園地のアトラクションやエレベーター、エスカレーターなどの身近にある設備から、工場のベルトコンベアやセンサー、ロボットなどの生産設備などにも使用されています。

また、電子レンジや冷蔵庫などの家庭用の製品にもPLCが使われています。

このように、PLCは多くの産業だけでなく、日常生活を支える上でも重要な役割を果たしています。

機械・装置を制御するコントローラ

PLCは、機械・装置を制御するコントローラであり、さまざまな機器に接続されています。

また、PLCは、従来の制御手法である「リレーシーケンス制御」の代替として開発されました。リレーシーケンス制御は「物理的な電気信号」で制御していますが、PLCは「プログラム」によって制御を行うという大きな違いがあります。

このPLCの「シーケンス制御」によって機械・装置をコントロールできるようになったことで、専用のデバイスなどのハードウェアだけでなく、アプリなどのソフトウェアからも制御が可能になりました。

さらに、手動で1つ1つ動作を管理しなくても、PLCが全ての機械・装置の動作を制御してくれるので、操作が複雑な機械の制御も自動化できるようになっています。

PLCは少し特殊なプログラミング言語を採用

PLCで採用されているプログラミング言語は、「IEC61131-3」という世界共有の標準規格で、主に以下の5種類があります。

  • IL(インストラクション・リスト)
  • LD(ラダー・ダイアグラム)
  • FBD(ファンクション・ブロック・ダイアグラム)
  • ST(ストラクチャ―ド・テキスト)
  • SFC(シーケンシャル・ファンクション・チャート)

機械学習やAIで使用されるプログラミング言語には、PythonやR言語などがあり、ゲームやIoT機器では、JavaやC言語などが採用されています。

一方、PLCの場合はPLC専用の、上記のようなプログラミング言語が採用されており、プログラミング方式も「ラダー方式」という少し特殊な言語になっています。

PLCを構成している装置の内容

PLCは、主に下記の5つの装置によって構成されており、どれもPLCを動作させるために重要なものです。

PLCのイメージ
  • 入力装置:スイッチやリレー回路などを入力する装置
  • 出力装置:ランプやコンダクタ、センサーなど外部に情報を出力する装置
  • 演算装置:CPUなど制御や演算を行う装置
  • 記憶装置:メモリなど制御する機器の動作手順の情報を記憶する装置
  • 電源装置:PLCの電源を扱う装置

PLCは、上記の5つがそれぞれの役割を行うことで、さまざまな機械の制御を可能にします。5つの装置のどれか1つでも欠けると機能しません。

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PLCが採用されている機器・設備

PLCは、主に工場設備や生産設備、身近にある家庭用電化製品、製造工場のFAシステムなどで採用されてます。

前述のとおり、普段の生活で目にするさまざまな機器・設備にも使用されており、多くの方がPLCの恩恵を受けています。

具体的には主に以下のような機器・設備に採用されています。

  • 工場の工業用や産業用の機械
  • エアコン
  • 電子レンジ、洗濯機などの家電
  • 自動ドア
  • 遊園地のアトラクション
  • エレベーター
  • エスカレーター
  • 信号機

など

近年、家電の機能が複雑になっていることでPLCにも機能性も上がり、無線通信やアナログ変換、データ収集や分析まで可能となりました。

生産やインフラ設備のIoT化の推進をすすめるうえで、PLCは欠かせない要素の1つです。今後ますますPLCの活躍の場が広がっていくことが予想されます。

PLCを採用する4つのメリット

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複雑な制御を自動で行うことができ、多くの工場や設備で使用されているPLCを採用することで、さまざまなメリットがあります。

PLCを採用する4つのメリットをそれぞれ解説します。

製作コストの削減ができる

1つ目のメリットは、製作コストの削減ができることです。

PLCは、回路設計をソフトウェアで行うので、従来のリレーシーケンス制御のように電子タイマーや電磁リレーなどの電気制御機器を大量に用意する必要がなく、最小限の電子機器のみで動作変更ができます。

部品の購入費用や修理・メンテナンス費用、人件費なども削減できるので、通常の制御機器よりも大幅にコストを削減できます。

さらに、通常の制御機器ではリレー回路が複雑になり、スペースを必要とするなど動作変更による機械故障の確率が高くなってしまいますが、そのリスクを抑えられます。

制御部分の小型化ができる

PLCは、制御部分を小型化して省スペース化が可能です。ソフトウェアによってプログラムするだけで機械制御を行うことができ、施設や工場においてPLC本体の設置スペースを確保するだけで済みます。

しかし、リレー回路の制御装置では、リレー回路同士を電線で繋いだり、電磁リレーや電子タイマーなども設置する必要があるので、そのやめのスペースが必要になってしまいます。

限られたスペースしか確保できない場合、リレー回路の制御装置を設置することは業務効率低下のリスクがあります。しかし、PLCではこれらの追加のコンポーネントを必要とせず、狭いスペースでも効率的な制御が可能です。

プログラミング変更だけで動作制御が可能

PLCは、動作制御や回路の変更、設計が簡単に行えることも大きなメリットの1つです。

リレー回路では、動作制御を変更するためには一度機械を停止させて回路を繋ぎ直す必要があるので、その分の作業時間がかかってしまいます。

一方で、PLCであればソフトウェアのに組んであるプログラムを変更するだけで動作制御が可能です。

さらに、機械を止める必要がないので、生産性を維持したまま変更ができ、機械故障の確率も減少します。

安全性や業務効率の面からもとても有効な制御装置です。

保守や整備が簡単に行える

PLCは、保守や整備を簡単に行うこともできます。

PLCには、電子タイマーや電磁リレーなどの電気制御機器が必要なく、電源回路同士を繋ぐ必要もありません。

さらに、機械を動かしている状態でも問題なくプログラムを変更・設計できるので、保守や整備にかかるコストが抑えられます。

リレー回路であれば、整備士に依頼したり工場の機械を停止させたりする場合があるので、PLCのように簡単にはいきません。

その点、PLCは低コストで長期的な運用も容易にできます。

PLCの種類

PLCには、主に下記の2種類のタイプがあります。

  • パッケージタイプ
  • ビルディングタイプ

パッケージタイプはPLCの基本的な機能が一体化されており、ビルディングタイプはパーツごとに分かれていて、必要に応じて購入するタイプです。

一見すると、パッケージタイプの方が便利に感じますが、ビルディングタイプにもメリットがあります。

ここでは、PLCのパッケージタイプとビルディングタイプのそれぞれの特徴を解説します。

パッケージタイプの特徴

パッケージタイプのPLCは、基本的な機能がすべて搭載されているため、個別にパーツを選定する手間がかかりません。主にPLCを構成する5つの装置(入力装置・出力装置・演算装置・記憶装置・電源装置)がすでに備わっています。

また、比較的手ごろな価格で提供されており、初心者でも取り扱いやすく、シンプルなプログラムで動作させることが可能です。

一部のパッケージタイプには、プログラムの容量や入力出力ポイント数が制限されることがあり、柔軟性に欠ける場合もありますが、機器や装置を制御する際に大きなトラブルを心配する必要がないため、パッケージタイプのPLCは、これから導入を検討している方、初めて導入する方などにおすすめの製品です。

ビルディングタイプの特徴

ビルディングタイプのPLCは、パッケージタイプとは異なり、PLCの基本的な機能(PLCを構成する5つの装置)が最初から搭載されていません。

目的にあわせて、個別にパーツを購入しカスタマイズする必要があります。そのため、各パーツの機能や使い方に関する知識やスキルが求められます。

一方で、ビルディングタイプは基本的な機能に加えて、イーサネット通信やサーボモータ制御などの機能も追加することができ、機能性が高く複雑で大規模な制御にも活用できます。

ただし、パッケージタイプと比較すると導入コストや価格が高く、機能に関する知識が必要になるなど、初めての方にはおすすめできません。

パッケージタイプのPLCで基本操作に慣れたユーザーが、より高度な機能を求めて導入する場合に適しています。

PLCを選ぶ上での3つのポイント

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PLCを導入することで、低コストでの運用や整備、複雑な機械の制御を効果的に行えるなどのメリットがあります。

そのため、業務効率化やコスト削減を目的に導入することをおすすめしますが、初めて導入する場合、どのように選ぶべきか悩んでしまう方も多いでしょう。

ここでは、PLCを選ぶ上での3つのポイントを解説します。

既設製品のメーカーをベースに検討

PLCを選ぶときには、現場ですでに使われているメーカーの製品をベースに検討することで、そのメーカーの特徴や長所、クセなどを理解しやすいというメリットがあります。

また、ほとんどがメーカー独自のソフトウェアを使用しなければ制御が行えないようになっています。

独自のソフトウェアは決して安くはないため、少しでもコストを削減するためにも、すでに現場で使用されているメーカーのものを選ぶことをおすすめします。

自社でプログラム開発が行いやすい製品を選ぶ

PLCを選ぶ上で、機能性や汎用性は確かに重要ですが、それよりも自社でプログラム開発が行いやすい製品かどうかで選ぶことも大切です。

なぜなら、実際に現場で導入しプログラムを行った後に、故障やエラーが発生してしまい機械が停止してしまうリスクがあるためです。

故障やエラーといった状況にスムーズに対応できなければ、生産性が大幅に低下してしまい、工場や企業にとって大きな損失になります。

その点、サポート体制が充実していたり、自社のみでも気軽にプログラムやメンテナンスが行えたりする製品であれば、大きな損失は避けられるでしょう。

メモリーや処理速度の要件を満たしているか確認する

メモリーや処理速度の要件を満たしているかを確認することも大切なポイントの1つです。

PLCは、製品ごとにメモリーや処理能力が異なっているため、導入した製品によっては処理能力が不十分である場合があります。

導入してから製品の問題点に気づいてしまうと、再導入やパーツの追加のコストが必要になるほか、生産性を向上させられないといったトラブルに繋がります。

そのため、しっかりと自社の機械や設備に必要な処理能力を持っているPLC製品かどうか確認した上で導入するようにしましょう。

PLC販売を行う主なメーカー4選

さまざまなメーカーがPLCを販売・提供しており、メーカーごとに機能や処理能力、特徴などは大きく異なります。

ここでは、PLC販売を行うメーカーの中から、主なメーカー4社を紹介します。

三菱電機株式会社

三菱電機株式会社は、PLC販売の国内シェア1位というだけでなく、世界でもトップクラスのシェアを誇るPLCを代表するメーカーです。

三菱電機株式会社のPLCの商標「シーケンサ」の知名度が高く、PLC=シーケンサというイメージを持つ方も多くいます。

世界トップクラスの豊富な実績と、高い技術力・信頼性により、多くの企業で使用されています。

PLCの仕様は三菱電機の独自規格となっていますが、すでに多くの企業で導入されていることもあり、シーケンサのプログラミングに慣れているエンジニアも多く、導入しやすいというメリットがあります。

その需要の高さから品揃えも豊富で、他機器との連携性もよいため「迷ったら三菱電機のPLCを選ぶ」というケースも少なくありません。

オムロン株式会社

医療機器や電気機器メーカーとして有名なオムロン株式会社は、日本国内でトップクラスのPLC販売シェアを誇ります。

オムロン株式会社は、PLCに加えて、関連するセンサーやモーターのシェアが高いことでも知られています。 特にセンサー類のIoT化をすすめており、PLCを活用したIoTプラットフォームの構築に力をいれています。

またオムロン株式会社では、コントローラを動作させるためのプログラミング言語に、C言語が採用されているという特徴があります。

C言語はシステム開発などで多くのエンジニアが使用している言語です。そのため、PLC独自のプログラミング言語の知識がなくとも、多くのエンジニアが取り扱えるという点が大きな強みです。

オムロン株式会社のPLCは、製造業のFAシステムや自動車工場、IoT開発など、さまざまな現場に導入されています。

株式会社キーエンス

株式会社キーエンスは、情報機器や電子・光子顕微鏡などの精密機器の開発及び製造・販売を行う企業です。

基本的にBtoBが主体の企業であり、企業や工場に対して営業活動を行うことで自社製品の販売を促進しています。

キーエンスのPLCは機能性が高く、日本国内でのシェア率も高いため、運用やメンテナンスを行えるエンジニアが多いというメリットがあります。

また、三菱電機株式会社のPLCとリンクさせて互換モードが使用できるという強みもあるため、違うメーカー同士でもデータのやり取りや連携が容易に行えます。

さらに精密機器を扱う企業の製造するPLCのため、処理速度の速さにも定評があります。

富士電機株式会社

大手電気機器メーカーである富士電機株式会社は、PLCの国内シェアでは三菱電機、オムロン、キーエンスに劣るものの、提供しているPLCが、国土交通省が定めた電気設備の標準仕様に対応しているという大きな特徴があります。

特に富士電機の「MICREX-SXシリーズ」は、小規模から大規模なシステムまで対応可能です。国土交通省が定めた電気設備の標準仕様(IEC61131)だけでなく、IECやJIS、CEマーキング、UL、RoHSに標準で対応しています。

そのため、国内だけでなく、海外市場からの要望にも対応できるという強みを持っています。

PLCの基礎知識を知って自社に最適な製品を導入しよう

PLCは、電気機器を取り付けることなく機械や装置の制御を行うことができ、限られたスペースでも設置できます。

さらに、運用やメンテナンスも自社で行うことができ、生産性の維持・向上への貢献が期待できます。

また、工場や製造業の設備だけでなく、エレベーターや家庭用電化製品などにも採用されており、現代では欠かせない装置の1つといえるでしょう。

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