【要注意】「サーキュラーエコノミー=リサイクル」ではない

※株式会社ITID 江口正芳氏の著書『グリーンイノベーションコンパス』=日本ビジネス出版、2023年5月30日刊=の中から一部を抜粋・編集しています。
第2回の本記事では、リサイクルと混同されがちなサーキュラーエコノミーについて解説しています。

「サーキュラーエコノミー=リサイクル」ではない

企業の方々と会話すると、「サーキュラーエコノミーってリサイクルのことでしょ?」、「うちの製品はリサイクル率が高いから、サーキュラーエコノミーを実現できている」という声が時々聞かれます。

しかし、これらは誤りです。リサイクルはサーキュラーエコノミーに含まれる要素の1 つでしかありません。図4-10 は、リニアエコノミーとサーキュラーエコノミーの違いを図示したものです。

エレン・マッカーサー財団「サーキュラーエコノミーバタフライダイアグラム」を基にITID作成
出典:エレン・マッカーサー財団「サーキュラーエコノミーバタフライダイアグラム」を基にITID作成

リニアエコノミーでは、資源採取から、材料・部品メーカー、加工・製品メーカー、製品・サービス提供者、利用者とモノが流れ、最終的に廃棄物として処理されます。一方で、サーキュラーエコノミーでは、実線の矢印のようにモノが循環します。

ここでポイントとなるのは、循環の矢印はリサイクルだけではないということです。①アップグレードサービスやシェアリングエコノミーのように、製品を長期間使い続ける矢印、②サービスとしての製品(Product as a Service ; PaaS)のように、製品・サービス提供者が製品を回収し、別の利用者に再提供する矢印、③リマニュファクチャリング事業のように、加工・製品メーカーがパーツを回収し、別製品に再利用する矢印、④リサイクルの矢印の、4 つの循環形態があります。

当然、リサイクルを実施するだけでは、部品や製品の生産量、部品や製品の輸送量は減らないため、環境負荷の抑制効果は限定的です。したがって、図4-10に示す4つの循環形態のうち、内側の矢印を優先的に実行することが求められます。

また、サーキュラーエコノミーは、サービス化などを通じて付加価値を最大化し、環境負荷抑制と経済成長の好循環を目指す概念です。リサイクルなどの3R(リデュース、リユース、リサイクル)に取り組めば、環境負荷抑制に貢献できますが、経済成長にはあまり寄与しません。そこで、経営戦略・事業戦略として、グローバルな市場に循環型の製品・ビジネスを展開し、中長期的な競争力を強化することが企業に求められます。

グリーンイノベーションコンパス
株式会社ITID 江口正芳
早稲田大学大学院 理工学研究科修了。米国公認管理会計士(USCMA)。中小企業診断士。
大手医療機器メーカーにて新製品企画・開発者として、コスト半減設計、新市場開拓、海外工場立上げなどに従事した後、ITIDに参画。
「企業と地球の課題解決」を自身の使命と捉え、脱炭素経営支援、カーボンニュートラル実現に向けた業務プロセス改善、企業向け講演など、経営から現場まで、様々な業界の環境コンサルティングを実施。企業だけでなく、自治体や研究機関への支援も行っている。
他に、経営戦略策定、管理会計、製品原価管理、品質問題未然防止などのコンサルティング、セミナー講師としても活躍中。
NHK製品開発特集番組にも出演。

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