AIによる需要予測とは?メカニズムや活用事例を解説
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需要予測は、売上の把握だけでなく、ロス削減や人員配置の最適化に役立ちます。その需要予測をAIに任せることで、勘や経験に頼らない予測ができたり、省力化による業務効率化が図れることをご存じでしょうか。

目次

  1. AIの需要予測ではどんなことができる?
  2. AIの需要予測で用いられる4つの手法とメカニズム
  3. AIで需要予測するメリット
  4. AIで需要予測するデメリット
  5. AIの需要予測はどんな会社で有効に活用できる?
  6. AI需要予測の活用事例4選
  7. まとめ|AIの需要予測で業務の効率化が図れる

AIの需要予測ではどんなことができる?

そもそも需要予測とは、自社のサービスや製品の需要を予測することです。どれだけ需要があるかをより正確に抑えることで、売上を予測できるだけでなく、過剰注文によるロスを削減できたり、人員配置の無駄を省くことができます。

飲食店や製造業などの在庫管理が必要な業種では、人の経験則や勘による需要予測に基づいて発注している事業所もあるのではないでしょうか。これをAIに任せることにより、より正確な需要を省力化して把握できるようになります。

AIの需要予測で用いられる4つの手法とメカニズム

AIの需要予測では、様々な手法を用いて需要を予測します。ここでは、代表的な需要予測の手法と、そのメカニズムをそれぞれ解説します。

・機械学習|予測モデルを構築して予測
・回帰分析法|需要と因果関係がある変数を用いて予測
・移動平均法|過去の需要移動平均に基づいて予測
・指数平滑法|過去の予測値と実績の差を加味して予測

1.機械学習|予測モデルを構築して予測

機械学習とは、大量のデータをシステムに読み込ませてパターンやルールを理解させ、それによって構築されたAIモデルによって解を導く手法です。機械学習は、AI(人工知能)と同じ意味と捉えられていることもありますが、厳密にはAIが解を導くために利用する手法を指します。

機械学習は「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」に分けられます。「教師あり」とはデータセットに加え正解が与えられる学習方法で、「教師なし」は正解が与えられない学習方法です。また、「強化学習」はシステム自身が多数の方法を試行錯誤し、正解を見つけていく学習方法です。

2.回帰分析法|需要と因果関係がある変数を用いて予測

回帰分析法は、需要に関する要因に基づいて予測値を求める方法です。要因が1つしかない場合は単回帰分析と呼ばれ、要因が複数あれば重回帰分析と呼ばれます。需要には様々な要因が関係しているため、多くの場合重回帰分析が用いられます。

予測値(目的変数)は、要因(説明変数)とその影響力を示す重み(偏回帰係数)によって算出可能です。そのため、要因をどれだけ増減すれば、予測値が増減するのかが分かります。

回帰分析法には、予測値に対する要因の重要度が分かり、どの要因が重要なのかを定量的に判断できるという2つのメリットがあります。需要が予測できるうえに、何に注力すれば需要が増加するのかを知ることができる分析法です。

3.移動平均法|過去の需要移動平均に基づいて予測

移動平均法とは、過去のデータを基に将来の需要を予測する方法です。移動平均法では、周期を考慮して需要を予測できます。そのため、季節や月などの周期によって需要が変化しやすいサービスや製品を扱っている場合には有効な予測手法です。

移動平均法には、周期成分が抽出できるほか、偶然的な需要変動のノイズを取り除けるというメリットがあります。しかしその反面、短期的な需要変動には対応できないというデメリットがあります。そのため、長期的に需要が安定している製品やサービスを予測するのに向いている手法と言えるでしょう。

ただし、移動平均法は計算しなければならない数が非常に多いというデメリットがあります。しかし、計算が素早いAIと組み合わせることで、その欠点は克服可能です。そのため、移動平均法は、AIと相性が良い需要予測方法と言えます。

4.指数平滑法|過去の予測値と実績の差を加味して予測

指数平滑法は、先ほど紹介した移動平均法の内の「加重移動平均法」の一種です。これに対し、加重をつけない移動平均法は「単純移動平均法」ですが、これらの違いは、過去のデータにどれだけの加重をかけて計算するかにあります。

単純移動平均法は、全てのデータに同じ加重をかけて計算するため、短期的な需要の変化には気づきにくい傾向にあります。しかし、指数平滑法は、新たなデータの加重を大きくしているため、最新のトレンドを反映した結果を得ることが可能です。

また、指数関数的に荷重は減りますが、どこまで過去に遡ってもデータの重みが0になることはありません。このように、指数平滑法には、全てのデータを活かしつつ直近のトレンドを反映できるというメリットがあります。

AIで需要予測するメリット

AIで需要予測をするメリットは、主に5つあります。

・需要予測をAIに任せられる
・需要に応じて在庫を最適化できる
・高精度な需要予測ができる
・勘に頼らない需要予測ができる
・蓄積データを活用できる

ここでは、需要予測をAIに任せることにより、どのようなメリットが受けられるのかを解説します。

需要予測をAIに任せられる

AIの需要予測システムの中には、売り上げデータや在庫情報を入力するだけで、自動で需要を予測するものがあります。需要予測をする手間を省けるほか、その労力を他の業務に充てられるため、業務効率化が図れます。

また、人手を割いて需要予測をする必要がなくなるため、人手不足が深刻な企業には効果的です。また、需要を日頃から深く考えなくても良くなるため、従業員の負担を軽減することもできます。

需要に応じて在庫を最適化できる

需要をある程度予測できれば、在庫量を最適化して運用できます。これにより、在庫の管理コストを削減したり、過剰発注による無駄な廃棄を抑制できます。

特に、在庫の消費期限が短い飲食業では、在庫を最適化することで損失を大きく抑えられます。在庫管理がうまくいかずに廃棄が多く出ている企業は、需要予測をAIに任せることで損失を低減できるかもしれません。

高精度な需要予測ができる

AIは大量の計算を瞬時に行えるため、多くの計算結果に基づいた需要予測が可能です。また、過去の様々なデータを活用して予測できるため、人の勘や経験に基づく予測よりも高い精度で予測できます。

これにより、在庫管理やシフト調整が最適化できるだけでなく、経営判断をより正確に下せるようになります。また、AIの計算スピードを活かせば、意思決定を迅速に行えるようになるため、スピーディーな経営戦略の実施が可能になります。

勘に頼らない需要予測ができる

来店予測や発注は、現場監督の勘や経験に任せられていることが多いです。しかし、勘や経験による需要予測は、担当者の主観や能力により精度のばらつきが生じるため、高精度で予測できるとは限りません。

AIは定量的なデータに基づいて予測できるため、明確な根拠に基づいた需要予測が可能です。これにより、担当者による予測のばらつきを抑えつつ、高い精度で需要を予測できます。

蓄積データを活用できる

実際の現場でAI予測を導入することで、事業所独自のデータを収集することができます。AIは過去のデータに基づいて予測を行うため、実測データが増えて参照できるデータが多くなると、高い精度で予測できるようになります。

また、蓄積データは、需要予測以外の用途でも活用可能です。需要予測で収集したデータが、品質管理や売上向上のヒントとなるかもしれません。

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AIで需要予測するデメリット

AIによる需要予測は、高精度かつ短期間で行えるというメリットがありますが、一方でデメリットもいくつかあります。

・初期段階で大量のデータが必要となる
・初めは予測精度が低い傾向にある
・人による保守や管理が必要である

初期段階で大量のデータが必要となる

AI予測を行うためには、まずモデルを構築しなくてはなりません。そのためには、モデルを形成する大量のデータが必要となります。加えて、無闇に質の低いデータを集めても、精度の低い予測モデルとなってしまいます。

AIモデルの精度を高めるには、「量」と「質」を両立する必要があります。また、汎化性能の高いAIモデルを構築するには、データの偏りがないようにしなくてはならないため、データの準備はかなりの労力を割くことになるでしょう。

初めは予測精度が低い傾向にある

AIは学習データに基づいて予測をするため、初期段階の少ないデータでは、予測精度が低くなる傾向にあります。よって、初期段階では特に、モニタリング等の定期的な保守管理が必要です。

ただし、適切な保守管理を行いつつ、実測データも集まれば、予測精度は高くなります。事業所独自のデータを集めることで予測精度は高くなっていくため、早期からのAI導入は精度向上に重要です。

人による保守や管理が必要である

AIが行うのは、あくまで過去のデータに基づく予測のため、過去にない需要の変化には対応できません。また、AI自身はシステムが目的通りに機能しているかを判断できないという欠点があります。

そのため、予測自体はAIに任せても良いのですが、目的に合った働きをしているかを常に担当者がモニタリングをしなくてはなりません。このようにAIは、システム構築後に放置していいわけではなく、データの偏りがないかや、予測精度が落ちていないかなどの定期的な管理が必要になります。

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AIの需要予測はどんな会社で有効に活用できる?

AIは多くの業界で活用されていますが、特に以下のような会社で大きな効果をもたらします。

・人手不足が深刻な会社
・時期によって需要が激しく変化する会社
・需要が多くの因子によって変化する会社
・未開拓分野の事業を行う会社

ここでは、それぞれの会社でどのような効果をもたらすのかを解説します。

人手不足が深刻な会社

AIに需要予測を任せると、単純に需要予測をするだけの労力が浮くため、労働力を削減できます。より少ない人員で業務を回せるようになるため、人手不足が深刻な会社にAIの需要予測の導入は効果的です。

また、AIを活用することで需要予測の手間が省けるほか、予測が正確になることで人員配置を最適化できます。無駄な人件費をカットして必要な業務に充てられるため、同じ人数でも生産力を高めることが可能です。

時期によって需要が激しく変化する会社

時期によって需要が激しく変化する会社は、需要の高い時期に顧客を取りこぼさないようにし、需要の低い時期には無駄な労力を極力削減する必要があります。そのためには、より正確な需要予測ができるAIの導入が重要です。

特に、消費期限の短い製品を販売している会社は、余分な発注をして販売期間を逃すと、発注した製品が無駄になるほか、余計な廃棄コストまでかかります。より正確な需要予測ができるAIを導入することで、無駄なコストを削減できるようになるでしょう。

需要が多くの因子によって変化する会社

人の計算能力には限界があるため、多くの因子によって需要が変化する製品やサービスは、需要を正確に判断することが難しい傾向にあります。AIは、複雑な計算でも素早く行うことができるため、多くの因子が絡んでいる需要でも、より正確かつ迅速に予測することが可能です。

例えば、天気や季節により需要が変化する製品やサービスは、それぞれの因子にどれだけの影響が関わっているかを正確に判断することが難しいです。これらをAIが解析すると、それぞれの因子が需要にどの程度影響していることが数値化できることがあります。

それぞれの因子が需要にどの程度影響しているのかが分かるのに加え、需要の低い時期には人員削減などの手を打てるようになるため、経営判断も正確に行えるようになります。

未開拓分野の事業を行う会社

未開拓分野では、利用できるデータが少ない傾向にあるため、実測データの価値が非常に高いです。早期から詳細な実測データを集めて需要予測をすることで、他の会社よりも需要予測の精度が早い段階で高くなり、需要をより正確に掴めるようになるでしょう。

もちろん、未開拓分野は初期のデータ収集が難しいため、初期精度は低くなると考えられます。しかし、独自の実測データをコツコツ集めてAIに学習させることで、将来的な予測精度は大きく向上すると考えられます。

AI需要予測の活用事例4選

ここでは、AI需要予測を活用した事例を4つご紹介します。ご自身に近い分野があれば、利用方法や効果を参考にしてみてください。

・需要予測から出荷量を予測し食品ロスを削減(NEC)
・需要予測に基づく製造指示で食品廃棄を75%削減(スシロー)
・需要予測による出荷時期調整で1日の売上を16万円増加(本川牧場)
・人流データに基づく需要予測でダイヤ最適化(神姫バス)

需要予測から出荷量を予測し食品ロスを削減(NEC)

NECは、気候や宣伝効果など多くの因子によって需要が変動する食品業界において、規則性を抽出して需要を予測するAIシステムを構築しました。その結果、7割近くの商品において比較的高い精度で需要が予測できるようになったようです。

同システムでは、規則性を自動的に抽出できるほか、「商品Bは気温26度以上になると売上が伸びる」という情報まで読み取れる高い解釈性を持っています。これにより、生産や物流のコストを削減できるほか、需給調整担当者が勘や経験に頼っていた発注業務を定量的に行えるようになると期待されています。

需要予測に基づく製造指示で食品廃棄を75%削減(スシロー)

回転ずしチェーンのあきんどスシローは、寿司皿にタグを取り付けることにより一皿ごとの動向を把握できる体制を作りました。そのデータを活用することで、寿司ネタごとの売上や廃棄の動向を掴めるようになり、客の需要をより正確に把握できるようになりました。

その結果、廃棄ロスを75%削減し、仕入の無駄を省くことに成功したようです。また、そのコストを食材にかけられるようにより、顧客満足度を上げることにも成功しました。加えて、客が入店してから会計をするまでの利用動向を掴むことに成功し、適切なタイミングで適切な寿司ネタを提供できるようになりました。

このように同社は、需要予測を用いることで、コスト削減のほか、顧客満足度を上げることにも成功しています。

需要予測による出荷時期調整で1日の売上を16万円増加(本川牧場)

牛の生産牧場である本川牧場は、需要予測のデータに基づいて乳牛や肉牛の飼育管理を行い、出荷時期の最適化に成功しています。加えて、生産量と出荷量のずれを低減することに成功し、廃棄ロスやペナルティの支払いも削減できているようです。

また、同牧場では、牛の個体情報や牛に対する作業の内容を200~300項目に分けてクラウド上で管理し、各個体の健康状態や乳牛生産量を確認しています。このデータを活用することにより、牛乳生産量が1日当たり2トン増加したほか、1日当たりの売上が1万円増加したようです。

このように、需要予測で収集したデータは、売上や生産量の向上にも役立てることができているようです。

人流データに基づく需要予測でダイヤ最適化(神姫バス)

神姫バスは、人流測定データを活用することにより、人の移動(需要)とバスの運用本数(供給)のギャップを可視化しました。これにより、2023年の春のダイヤ改正を、需要に合わせたダイヤ編成にすることに成功しました。

バスの利用者数を増やすには、「バス以外の移動手段利用者」という見えない需要に対して、適切な時刻および本数を供給する必要があります。同社はこの問題を、バス利用者以外の人流データを活用することにより解決しました。

同社は今後、需要予測に基づいてダイヤを変更した路線の利用状況をモニタリングしながら、他の路線に対してもダイヤを適切にできるよう取り組みを進めていくようです。このように、業界以外のデータを活用することにより、需要予測を行う方法もあります。

まとめ|AIの需要予測で業務の効率化が図れる

需要予測は、売上を予測するだけでなく、人員配置を最適化したり業務効率化を図ることができます。ただし、多くの会社で行われている人による需要予測は、精度が低いうえ、労力や時間がかかります。

これをAIに任せることで、労力を削減できるうえに精度も上げられます。もちろん、AIの導入にはコストがかかりますが、廃棄や人員配置のミスにより無駄なコストがかさんでいる会社は、導入コスト以上の利益を得られるかもしれません。これを機に、ご自身の会社でもAIの需要予測が活かせるかを考えてみてはいかがでしょうか。

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