AIは現場をどう変えるのか。 第38回 ものづくりワールド[東京]に見る製造業DXの実装フェーズ

製造業DXは、単なるデジタル化や業務効率化の段階を越え、AIを前提にした新たな実装フェーズへ進みつつあります。

これまで製造現場では、紙帳票の電子化、設備データの収集、ダッシュボードによる可視化などが進められてきました。しかし、データを集めるだけでは、現場は変わりません。重要なのは、集めたデータをどのように解釈し、どのような判断につなげ、その結果を現場の人・設備・ロボット・経営判断へどう返していくかです。

近年は、生成AIやAIエージェント、フィジカルAIといった技術への注目が高まっています。一方で、AIを導入すること自体が目的になると、現場で使い切れない仕組みになってしまう可能性もあります。AIが価値を発揮するためには、現場にあるデータや、熟練者の暗黙知、業務の文脈を、AIが扱える形に整えることが欠かせません。

今回、第38回 ものづくりワールド[東京]で、ウイングアーク1st、東芝、iCAD、NSW、コアコンセプト・テクノロジーの各ブースを福本 勲氏(合同会社アルファコンパス 代表CEO)とともに訪問し、同氏のインタビュー内容を踏まえ記事を制作しました。 そこから見えてきたのは、製造業DXが「データを集める」「見える化する」段階から、「AIを介して判断し、現場や経営へフィードバックする」段階へ移りつつあるということです。

本記事では、各社の展示内容を通じて、AI時代の製造業DXがどこへ向かっているのかを読み解きます。

第38回 ものづくりワールド[東京]は、2026年7月1日(水)〜3日(金)の3日間、東京ビッグサイトで開催されました。出展社数は約2,000社、来場者数は約81,700名、IT、DX関連サービス、部品、設備、装置、計測製品など、製造業に関わる製品・技術が集まる日本最大級の製造業展示会です。

会場には、設計・開発・製造・生産技術・購買・情報システム部門など、製造業に関わる幅広い来場者が集まり、各社ブースでは商談や情報収集が活発に行われていました。

目次

  1. AIは“現場をどう動かすか”を問う段階へ
  2. ウイングアーク1st株式会社:現場データを、デジタルツインの実装へつなげる【製造業DX展】
  3. 株式会社東芝 / 東芝ITサービス株式会社:暗黙知をひらき、AIが現場を動かす循環をつくる【製造業DX展】
  4. iCAD株式会社:設計者の思考を、出力を落とさず現場へ届ける3次元データ活用【機械要素技術展】
  5. NSW株式会社:ITとOTをつなぎ、AIで意志決定を現場へ返す【設計・製造ソリューション展】
  6. 株式会社コアコンセプト・テクノロジー:使われるDXを、現場実装まで伴走する【製造業DX展】
  7. まとめ:AI導入から、AIが機能する全体アーキテクチャへ

AIは“現場をどう動かすか”を問う段階へ

今回のインタビュアーである福本氏は、近年の海外展示会でも、AIにロボティクスなどの手足がつき、デジタルツインと組み合わさることで実現される自律型工場のビジョンが現実味を帯びてきていると指摘します。

ただしここで重要なのは、フィジカルAIを単に「ロボットをAIで動かす技術」と狭く捉えないことです。AIが現場で価値を出すためには、まず現場からデータを収集し、それを判断に使える形へ整理し、その結果を人・設備・ロボットへ返していく循環が必要になります。

つまり、AIは分析結果を出すだけのツールではなく、現場をどう動かすかを支援する存在になりつつあります。今年のものづくりワールドでは、そうした変化が各社の展示に具体的な形で表れていました。

ウイングアーク1st株式会社:現場データを、デジタルツインの実装へつなげる【製造業DX展】

ウイングアーク1st(https://www.wingarc.com/)のブースでは、製造現場のデータ入力・可視化・分析をつなぐ取り組みとして、シムトップスが提供する現場帳票システムであるi-Reporterとウイングアーク1stのデータ可視化・分析用ダッシュボード(BIツール)である MotionBoardの連携デモが紹介されていました。

現場では、日報や作業実績、不良数などの情報が、紙ではなくタブレット上のi-Reporterから入力されます。そのデータはMotionBoardに連携され、実績数、不良数、進捗率、工程ごとの遅延状況などがリアルタイムに可視化されます。これにより、管理者は現場にいなくても状況を把握でき、問題が発生した際にも迅速な判断や指示につなげることができます。

第38回 ものづくりワールド[東京]の様子
Wingarc Factory Controller 監視ダッシュボード

さらに印象的だったのが、設備データを活用したデジタルツインの展示です。PLCなどから取得した実機データをMotionBoard上に取り込み、3D表現として再現することで、現実の動きをデジタル上に反映します。今後は、FlexSimやGD.Findi、Plant Simulationなどのシミュレーションソフトと連携し、シミュレーション結果と実績データのギャップを分析することで、現場改善に活かしていく方向性も示されていました。

作業状況ボード画面

これは、単に「データを見える化する」ことにとどまりません。現場で取得したデータをもとにシミュレーション環境を構築し、現実とのギャップを評価し、その結果を再び現場改善へ返していく。製造業DXが、可視化からデジタルツインの実装へ進む一つの姿といえます。

また、MotionBoardでは生成AIとの連携機能も紹介されていました。作業者ごとのスキル情報をもとに、当日の人員配置をAIが提案する機能や、グラフ画像をAIが読み取り、傾向や異常値をコメントとして返す機能などです。さらに、アナログメーターをカメラで撮影し、生成AIの画像解析によって値を取得するような活用も想定されています。

大企業ではすでに、デジタルツインやシミュレーション活用へのニーズが高まっています。一方で、多くの企業では、まだデータ収集や可視化の段階で足踏みしているケースも少なくありません。だからこそ、まずは現場業務をデータ化し、その先に何を判断したいのか、どのような改善につなげたいのかを設計することが重要になります。

ウイングアーク1stの展示は、データ収集から可視化、そしてデジタルツインの実装へと進むためのステップを具体的に示していました。

株式会社東芝 / 東芝ITサービス株式会社:暗黙知をひらき、AIが現場を動かす循環をつくる【製造業DX展】

東芝(https://www.global.toshiba/jp/top.html)のブースでは、「AIとの共創で現場を強くする」というテーマのもと、製造業におけるAI活用の全体像が紹介されていました。

第38回 ものづくりワールド[東京]の様子

印象的だったのは、AIを単なる分析ツールとしてではなく、現場の知識や判断を支援する存在として捉えていた点です。製造現場には、データはあるがつながっていない、データは取れているが使えていない、そして熟練者のノウハウが暗黙知のままで、社内で活かせていない、という複数の課題があります。特に後者は、AI活用を進める上で大きなボトルネックになります。

そこで東芝が紹介していたのが、現場の暗黙知を引き出し、AIが扱える形に整理する「知識ばらし」という手法です。長年にわたり東芝の生産技術センターの担当者はインタビューにより熟練者の暗黙知を形式知化してきたそうですが、そのノウハウに基づく「暗黙知抽出AIエージェント」により熟練者の知識を抽出・整理し、そのナレッジを活用して現場の判断支援に活かしていく取り組みです。

第38回 ものづくりワールド[東京]の様子

また、表面実装ライン向けの工程改善支援パッケージ(Meister Apps 工程改善アシストパッケージ for SMTライン) では、ライン上のデータを収集し、不良増加や異常兆候が発生した際に、AIエージェントが原因候補や対策を提示するレコメンド機能が紹介されていました。ここで重要なのは、すべてをAIに委ねるのではなく、現場で一貫した判断ができるよう、閾値やあらかじめ定めた判断ルールベースのロジックも組み合わせている点です。AIを使うことが目的ではなく、現場で使える判断支援に落とし込む姿勢がうかがえました。

第38回 ものづくりワールド[東京]の様子

さらに、サプライチェーン領域では、化学物質・鉱物管理システム(参考出展)、サプライチェーンプラットフォーム(Meister SRM ポータル)、ブロックチェーンを活用したサプライチェーン証跡管理(参考出展)なども展示されていました。部材レベルでの規制適合や、二次・三次サプライヤーを含めたセキュリティ体制の把握、SBOM(ソフトウェア部品表)やSDS(安全データシート) などの情報受け渡し履歴の管理など、製造業を取り巻くリスクや説明責任は年々複雑化しています。

ここでも共通するのは、AIやデータをどう使うか以前に、何を管理すべきか、どの情報をどうつなぐべきかという業務文脈の整理が不可欠だという点です。

東芝の展示から見えてきたのは、AIが現場を動かすためには、まず現場の知識をひらき、データと文脈を整える必要があるということです。フィジカルAIも、単にロボットを動かすことではなく、現場をどう理解し、どう判断し、どう行動へ返すかという循環の中で捉えるべきものだと感じられました。

iCAD株式会社:設計者の思考を、出力を落とさず現場へ届ける3次元データ活用【機械要素技術展】

iCAD(https://www.icad.jp/)のブースでは、3次元CADを核に、設計情報を製造・保全・後工程へ流通させる取り組みが紹介されていました。

第38回 ものづくりワールド[東京]の様子

同社が強みとするのは、大規模な3次元データを高速・軽量に扱う技術です。今回の展示では、その強みを活かし、3次元CADデータをHTMLに変換してブラウザ上で表示・操作できる仕組みが紹介されていました。専用ソフトを持たない現場担当者でも、ブラウザ上で3Dモデルを確認できるため、設計部門に閉じていた情報を現場や後工程へ届けやすくなります。(この仕組みはカスタマイズが可能で、業務にあった運用を実現可能です。展示では、各業務場面を想定したサンプルアプリケーションを展示していました。)

特に印象的だったのが、3Dモデル上に直接注釈やチェック内容を残せる機能です。単なるスクリーンショットへの書き込みではなく、形状そのものに紐づいて情報が残るため、モデルを回転しても、どの部位に対する指摘なのかが維持されます。これにより、設計レビューや現場とのやり取りを、より直感的かつ正確に行うことができます。

MBEのための新しい3D設計情報共有

従来、3次元データを共有する際には、専用ビューアーが必要だったり、データを軽量化するために情報を削ったりする必要がありました。しかしiCADの仕組みでは、現場で扱える軽さを実現しながら、設計者が見ている情報や意図を落とさずに共有することを目指しています。

また、設備保全への活用も示されていました。たとえば、設備ログやエラー情報と3Dモデルを紐づけることで、どの部品に問題が起きているのかを視覚的に特定できます。交換履歴や代替部品情報、現場で蓄積されたノウハウも3Dデータ上に集約し、保全業務の高度化につなげることができます。

さらに、大手機器メーカーであるCKD(https://www.ckd.co.jp/)との共同展示では、実機と3Dモデルを連動させたデジタルツインのデモも行われていました。設計段階で動作や干渉を検証し、実機の稼働状況とも連動させることで、メカ設計・電気設計・制御設計の情報連携を高める取り組みです。自動化というテーマも含め、設計情報を現場実装へつなげる具体的な例として印象的でした。

第38回 ものづくりワールド[東京]の様子

iCADの展示が示していたのは、3次元データを単なる設計データではなく、製造業全体の共通言語として活用する可能性です。設計者の思考や見えているものを削らずに、現場や後工程へ伝えていく。その基盤として、3Dデータの価値はさらに広がっていきそうです。

NSW株式会社:ITとOTをつなぎ、AIで意志決定を現場へ返す【設計・製造ソリューション展】

NSW(https://www.nsw.co.jp/)のブースでは、ERP、PLM、PDM、MES、生産スケジューラなど、製造業の業務システムを横断的に扱う展示が行われていました。単体のシステム紹介にとどまらず、業務基盤や現場データをどのようにつなぎ、AIによる分析や意志決定支援へ展開していくかが、全体のテーマとして示されていました。

第38回 ものづくりワールド[東京]の様子

まず紹介されていたのが、国産ERPやグローバルERP、クラウド型MES/ERPなどの業務基盤です。日本の商習慣に合わせやすい国産ERP、製造業に特化したグローバルERP、北米の自動車・OEM領域で導入実績を持つRockwell Automationのクラウド型MES「Plex」など、企業規模や業務特性に応じた選択肢が整理されていました。特にPlexについては、コア構造は大きく変えず、画面や帳票などを顧客仕様に合わせて構成できる点が紹介されており、フルスクラッチ開発の負荷を抑えながら現場運用に合わせる方向性が示されていました。

また、PDM領域では、自社製品である「Base-Right」も紹介されていました。BOM(部品表)や部品構成、変更履歴、図面・文書管理、承認ワークフローなどを扱うPDMで、ユーザーライセンスフリーのサーバーライセンス体系を強みとしています。設計部門だけでなく、生産管理、品質管理、営業など、部門をまたいだ情報共有を促進しやすい点が特徴です。

現場実行や生産計画の領域では、前述のMES以外に生産スケジューラであるAsprovaの展示も行われていました。Asprovaは、基幹システム側にある受注情報や工程情報をもとに、設備・人員・所要時間などの制約を踏まえた詳細な生産計画を立案するスケジューラです。大日程計画として積まれた計画を、実際の現場で実行可能な単位へ「山崩し」していく役割を担います。計画変更が発生した際にも、現場の負荷や在庫推移を見ながら素早く再計画できる点が紹介されていました。

さらに印象的だったのが、OT(Operational Technology)データとITデータの統合です。設備や現場から取得されるOTやET(Engineering Technology)のデータと、ERPや財務などのITデータを統合し、AVEVA CONNECTとDatabricksを組み合わせ横断的に分析するデモが紹介されていました。自然言語で問いかけることで、データの可視化や要因分析を行い、設備の不調や原価への影響、投資判断につながる示唆を得ることができます。これは、現場データを単に見える化するだけでなく、経営判断へ接続するための取り組みといえます。

製造業向け意志決定プラットフォームであるFDMP(Factory Decision Making Platform)では、ERPなどのITデータと、Asprovaなどから得られる製造データを組み合わせ、AIによって意志決定を支援する考え方が示されていました。従来は、稼働低下や停止要因を熟練者が一つひとつ確認しながら原因を探っていたものを、AIエージェントが横断的にデータを確認し、原因候補を提示することで、対処までのスピードを高めることを目指しています。

第38回 ものづくりワールド[東京]の様子

NSWが捉えるフィジカルAIも、ロボット単体を動かす技術に限定されていません。現場から収集した人・設備・機械のデータを、AIで分析できる価値あるデータに加工し、その結果をロボット、設備、人へフィードバックしていく。その循環を回すことが、現場全体の改善につながるという考え方です。

同社では、米国のPlug and Playとの連携によるスタートアップエコシステムの構築も進めながら、先端AIの取り込みと製造現場への実装を見据えているといいます。個別のシステムやAIを導入するだけではなく、それらをどうつなぎ、どの判断に活かし、現場へどう返していくのか。NSWの展示からは、製造業DXが部分最適から全体最適へ進むためのアーキテクチャが見えてきました。

第38回 ものづくりワールド[東京]の様子

株式会社コアコンセプト・テクノロジー:使われるDXを、現場実装まで伴走する【製造業DX展】

コアコンセプト・テクノロジー(以下、CCT)(https://www.cct-inc.co.jp/)のブースでは、製造業のエンジニアリングチェーンとサプライチェーンを軸に、複数のDX支援ソリューションが紹介されていました。製造業や建設業の現場課題に対して、どの領域でどのような支援ができるのかを俯瞰できる構成の展示が印象的なブースでした。

体験型の展示として紹介されていたのが、良品学習型の外観検査AIです。一般的な外観検査AIでは、不良品のパターンを大量に学習させるアプローチが多く見られます。しかし、CCTの展示では、良品状態の周期性や特徴を学習し、そこから外れたものを異常として検出する考え方が示されていました。繊維製品のように、不良の種類が多く、品種展開も多い領域では、不良パターンを網羅的に学習させることが難しいため、良品学習による横展開のしやすさが強みになります。

第38回 ものづくりワールド[東京]の様子

金属部品の外観検査デモでは、複数方向から撮像し、それぞれの判定結果をもとに総合判定を行う仕組みも紹介されていました。特徴的だったのは、AIソフトウェアだけでなく、撮像のためのカメラ調整や搬送機構も含めて提供できる点です。現場で安定的に使うには、AIモデルだけでなく、どのように撮るか、どのように流すかといった周辺設計も欠かせません。

CCTの展示からは、現場実装を前提にした支援姿勢がうかがえました。

第38回 ものづくりワールド[東京]の様子

製造実行システムとしては、自社開発の「Orizuru MES」も紹介されていました。受注情報、BOM、設備、人員情報などをもとに、どの工程を、どの設備で、いつ誰が行うのかという粒度まで生産計画を立案し、現場へ作業指示を出す仕組みです。紙で作業指示や実績管理を行っていた現場に対して、MESを導入することで、実績入力、中間在庫や完成品の管理、在庫ロケーションの把握などをリアルタイムに行えるようになります。

第38回 ものづくりワールド[東京]の様子

PLM領域では、Aras Innovatorの導入支援事例も紹介されていました。CCTの強みとして語られていたのは、単にPLMパッケージを導入するのではなく、企画段階から顧客と一緒にあるべき姿を描き、プロトタイプを早期に提示しながら進める点です。製造業の業務知識を持つメンバーが伴走することで、検索性や情報アクセス性の向上、業務手順の標準化、上流と下流のコンカレント化につなげていく取り組みです。

ERP領域では、ビジネスエンジニアリング社のmcframe 7を中心に、Fit to Standardの考え方も紹介されていました。属人化した業務や複数の基幹システムが乱立した状態を見直し、標準的な業務プロセスへ寄せることで、リアルタイムな状況把握やデータドリブンな経営判断につなげていく方向性です。さらに、テスト自動化など、AIを開発・運用プロセスへ組み込む取り組みも進められていました。

CCTの特徴としてもう一つ印象的だったのが、製造業で培った知見を建設DXにも展開している点です。建設領域では、設計ポータルによる3Dデータと属性情報の一元管理や、橋梁などの大量図面レビューを効率化する支援事例が紹介されていました。何千枚もの図面のバージョン管理や変更差分の確認を支援し、レビュー工数の削減につなげるなど、製造業と建設業に共通する「複雑な設計情報をどう扱うか」という課題に向き合っています。

第38回 ものづくりワールド[東京]の様子

CCTが重視しているのは、単にシステムを導入することではありません。現場を理解し、実際に使われ、効果が出るところまで伴走することです。スピード感、現場理解、プロトタイプを通じた具体化、そして内製化支援まで含めて、顧客が自走できる状態をつくる。CCTの展示は、使われないDXではなく、現場で使い切れ、変革につながるDXを実装する姿勢を示していました。

まとめ:AI導入から、AIが機能する全体アーキテクチャへ

今回の第38回 ものづくりワールド[東京]で見えてきたのは、製造業DXの焦点が「個別ツールの導入」から「AIを前提にした全体設計」へ移りつつあるということです。

ウイングアーク1stの展示では、現場入力や設備データをリアルタイムに可視化し、デジタルツインや生成AI活用へ展開する流れが示されていました。東芝は、AIエージェントや暗黙知の形式知化を通じて、現場知をAIに接続する取り組みを紹介していました。iCADは、3次元データを設計部門に閉じず、製造・保全・後工程まで共有する基盤として提示しました。NSWは、ERP、PLM、MES、OTデータをつなぎ、AIによる意思決定を現場へ返す循環を描いていました。そしてCCTは、製造業・建設業の現場に入り込み、使い切れるDXを実装する伴走支援の姿勢を示していました。

これらに共通しているのは、AIそのものではなく、AIが機能するためのデータ、業務文脈、現場理解をどう整えるかという視点です。 フィジカルAIも、ロボットによる自動化だけを意味するものではありません。AIが導き出した判断を、ロボットが実行する場合もあれば、人が判断に活かす場合もあり、設備制御や経営判断へ反映される場合もあります。重要なのは、現場から得たデータを価値ある情報へ変え、再び現場や経営へ戻していく循環をつくることです。

製造業DXの次の焦点は、AIを導入するかどうかではなく、AIが判断できるだけのデータと文脈をどう整え、その判断を現場や経営にどう返していくかにあります。各社の展示からは、その実装フェーズがすでに始まっていることが見えてきました。