SNSにはさまざまなインフルエンサーがおり、製造業関連でも有益な情報を投稿している方が多くいます。そこで、製造業×ITに関連する領域で注目を集めているインフルエンサーの方に、製造業で働く人の学びに繋がるテーマで取材をさせて頂く連載を行っています。
第四回である今回は、高橋智也さんに、「海外展示会への実費参加で固定概念を覆す!海外展示会参加のすすめ」と題して、お話をお伺いしました。
X:https://x.com/fulhause
高橋クリスのFARADIO:工場自動化ポッドキャスト:https://open.spotify.com/show/6lsWTSSeaOJCGriCS9O8O4
FA設備技術勉強会:https://fa-study.connpass.com/
SNSで情報発信を始めた経緯
一之瀬 この連載では、インフルエンサーの方々に情報発信を始めた経緯をお伺いしています。まずは、高橋さんが情報発信を始めた経緯について教えてください。
高橋 もともとは、高専・大学と続けていたロボットコンテスト(ロボコン)でのチーム内での情報共有がきっかけでした。ロボコンはチーム競技で、情報収集やチーム内での情報共有が重要です。当初は、普段活動している中で自分が感じたこと、考えていることをブログに書いていました。その結果、相手が私の考えを理解したうえでやり取りできるようになり、チーム活動も円滑に進むようになりました。発信の場は、当初のブログからmixi、そして現在はXへと移っています。
一之瀬 最初から対外的な発信をしようと思って始めたのではなく、チーム内での共有がきっかけだったのですね。
高橋 私の場合、最初は対外的な発信ではなくチーム内での共有が中心でしたが、活動範囲の拡大に伴って徐々に外にも広がっていった感覚です。チーム内に発信している中で知り合いが増え、自分の活動範囲や人脈が広がっていくにつれて発信する範囲も広がりました。
外向きの発信ではないので、発信内容も初心者向きに何かの解説をするというよりは、最近のトレンドに関する情報共有や自分の解釈・考えを投稿することが多いです。
一之瀬 FA_StudyやFA_RADIOについては、どのような経緯で始められたのでしょうか?
高橋 FA_Studyは、そのときの盛り上がりをきっかけに始まりました。当時、Twitter(現在のX)上での知り合いと「こういう勉強会が欲しいよね」という話で盛り上がった際に、「言い出した者がやらなければいけない」という責任感や使命感が芽生え、その火が消えない内に会場予約と開催告知をしました。
当初会話していたメンバーが3人だったので、最悪3人でやればと思って会場費も自費負担できる範囲で準備したというのが最初です。実際には参加したい方が多くいたため、名古屋で50人くらいの規模で開催できました。そこから、2回、3回と続けていく中で現在まで5年ほど続いていて、今では200人から400人くらい集まる規模です。
一之瀬 告知を拝見しましたが、規模の大きな勉強会になっているのですね。Xのタイムラインに流れてきた掲載資料を、いくつか読ませて頂きました。実際に勉強会を開催されて、何か気づいたことはありましたか?
高橋 そうですね。一之瀬さんも製造業のエンジニアなのでわかると思いますが、この業界は情報の流通性がとても低いです。企業間はもちろんですが、場合によっては隣の部署、隣のグループの情報がないということもあります。
勉強会で情報交換をしてみると、本来は情報交換すべきことがたくさんありますが、それが行われていないことがよくわかります。また、少なくとも生産技術の領域では、情報交換をする場自体が少ないということにも、実際に開催して初めて気づきました。
一之瀬 FA_Studyが貴重な場になっているので、多くの参加者が集まっているのですね。他にも同様に情報共有をするような場、勉強会をするような場は増えているのでしょうか?
高橋 FA_Studyを始める際に、出会った方が新しく交流の場を作ってくれることへの期待もありました。FA_Studyは扱う範囲が広いので、例えばPLCに特化した勉強会など扱う情報を絞ることで、より深い情報交換ができます。ただ、5年間継続してきた私が認識している勉強会は1つか2つくらいで、あまり増えていません。
一之瀬 運営は大変そうに感じますが、5年で1、2つというのは確かに少ないですね。新たな場が生まれない理由について、何か思い当たることはありますか?
高橋 新しい場やコミュニティ活動が生まれるためには、一番最初の盛り上がりが必要です。例えば、PLCについて共通の話題で盛り上がりがあり、その中で勉強会を開催しようという話になります。
今は、最初の盛り上がりに繋がる共通の情報が足りない状態なので、意識的に情報を流さないといけないと感じました。 そこで、情報の種を提供するポッドキャストとしてFA_RADIOを始めました。
あとは、勉強会の開き方のような運営側のノウハウも共有することが必要ではないかなと思っています。例えば、会場の予約方法や費用感に加えて、個人が匿名で参加・発表できるようにすることなどのルールが分かれば、開催しやすくなるのではないでしょうか。
一之瀬 ありがとうございます。勉強会運営に関しても、今後の発信を楽しみにしています。積極的に発信活動をされていますが、その活動の中でよかったことを教えてください。
高橋 発信活動をしていて、一番利益を得られるのは中心にいる人です。例えば、発信をすることで意見をもらえたり、情報が議論の中心である自分のところに集まります。
その情報は、自分の興味がもともと強い領域だけでなく、チェックしていなかった情報も含んでいますので、大きな価値があると感じています。
あとはありきたりかもしれませんが、ニッチ領域で情報発信をしていると知り合いが次々と増えていく点も魅力の一つです。業務外での発信が業務に繋がってくることもあります。
一之瀬 自身では積極的に取りに行くことが難しい、意識していなかった情報まで集まるというのはとてもいい機会に繋がっているのですね。
高橋 そうですね。例えば、FA_Studyでは司会を担当しています。発表に対して質問がなかった場合には、司会が質問やコメントをする必要があります。これまで1回あたり8から10点の発表を25、6回実施しているので、合計で200テーマほどのプレゼンをすべて真剣に聞いているので、力になっていると感じます。
イベントを開催すれば、主催者は議論や交流の中心に立てる点も重要です。こうして主体的な活動を続けていくことで業務では身につかない能力がついていると感じますし、デメリットは少しの恥ずかしさくらいなので、ローリスクハイリターンです。
ぜひ、FA業界に個人が気兼ねなく、制約なく参加できる場が増えていくといいなと思います。また、誰でも気軽にコミュニティを立ち上げて、気軽にそれが消えていくことができる世界観を作っていきたいです。それが結果的に、運営立ち上げ者の増加に繋がっていくはずです。
海外展示会への参加を進める理由
一之瀬 ここまで、さまざまな活動のきっかけや得られたこと、今後目指す状態についてお伺いしました。ここからは今回のテーマである海外の展示会に自費参加するというテーマについて、お話を聞いていきます。そもそも、なぜ展示会への参加が必要になるのでしょうか?
高橋 一番は、固定概念を崩すのに手っ取り早いからです。さきほども少しお話した通り、日本の製造業というのは情報流通の制限が強いので視野が狭くなりがちです。社内・自分の近くで当たり前に感じていることが、実は他の企業だと当たり前ではないということもあります。
FA_StudyやFA_RADIOでこういう状況を崩していこうと活動はしていますが、まだまだ時間がかかると思っています。このような状況の中で、固定概念を崩すのに手っ取り早いのが展示会です。
一之瀬 高橋さんは海外の展示会にも数多く参加されていますが、国内の展示会だけではなく海外の展示会に参加する理由はどのような理由があるのでしょうか?
高橋 国内の展示会は、どうしても内容が似通ってしまいます。海外ベンダーも含めて、どの出展企業も日本企業向けの製品・ソリューション・サービスを展示することが理由です。
例えば、PLMの業界ではシーメンスという会社が一番大きいですが、保有している製品の中で日本のお客さんが好みそうなものを選別して展示しています。もし、日本のサプライヤーが理解できないような概念の製品を持っていたとして、それを展示しても理解されにくく売れないので展示しません。
海外の展示会の場合には、日本向けとは概念が異なる製品も多く展示されるため、国内の展示会よりも固定概念を崩しやすいです。
一之瀬 国内向けと概念が異なるものを海外の展示会で見て、参加者はその概念を理解できるのでしょうか?
高橋 理解できる方がいいですが、理解できなくても問題ないと考えています。自分たちの考え方と違うものが日本の市場同等もしくはそれ以上にあり、それが世界では実際に売れているのだと知ることが重要です。 自分たちの知らないものがこんなにたくさんあるんだという課題を体感してもらえれば、情報共有や交流性の必要性も理解してもらいやすくなるはずです。
これは、日本のものがダメだといっているわけではありません。日本と同じ水準で真剣に考えられたものが世界に存在することを体感することが、自ら情報を取りに行く必要性を認識する第一歩になります。国内で待っているだけでは気づけないため、実際に現地へ足を運ぶことが最も有効です。
一之瀬 私の職場では、例えばモーターショーに一人だけ参加してその人が確認した情報を共有するということがあります。このように、職場で代表一人が行くというのでは体感するのは難しいのでしょうか?
高橋 実際に展示会に参加する人はいいかもしれませんが、体感した内容は社内向けに情報共有する際に、参加した人が理解できる言葉で翻訳されてしまいます。
そうすると日本の概念で理解できる情報になってしまうので、「理解できないことを理解する」ということには繋がりにくいです。実際に自分で海外の展示会に参加するのが一番いいと思います。
一之瀬 海外展示会に実際に訪れた方がいい理由について理解できました。参加する展示会の選び方について、やはり大規模な展示会の方がいいのでしょうか?
高橋 そうですね。参加するのは、業界最大級の展示会がいいと思います。そこそこの規模の展示会に行くと、もっと大きな展示会だったらさらなる情報があるのではないかと感じてしまうんですよね。 それならば、最初から最大級の展示会に参加してしまえばそこが基準になりますので、コストパフォーマンスが高いです。
一之瀬 海外の展示会というと、英語が苦手な場合にはせっかく参加しても十分な効果が得られないのではないかと感じてしまいます。私は英語があまり得意ではないので、きちんと課題を体感できるのか不安です。
高橋 英語については私もよく周りの人から聞かれますが、できなくても大丈夫です。専門性の高い領域の展示であれば、もし英語がわからなかったとしても3割くらいは理解できると思います。
特に大きな展示会の場合には出展企業が各社力を入れているので、実物展示や動態展示があります。これを見てある程度わかれば100点満点です。 ここから、英語がきちんと読めれば300点ですし、さらに英語でのコミュニケーションが取れれば500点です。
一之瀬 確かに、専門領域であれば実物や図、計算式などを見れば言語が違ってもある程度わかりますね。
高橋 それに最近は生成AIがありますので、文字展示は問題ありません。英語で書いてあるものをスマートフォンで撮影し、それを生成AIアプリに読み込ませれば簡単に翻訳できます。飛行機や電車も言葉がわからないと不安になりますが、事前に準備をしていけば大丈夫です。
私がこう考えている理由は、中国の展示会に参加した際の経験からです。中国語は読めないですし話せないですが、欧州や日本とは異なる製品が展示されているという点が理解できたので、大きな収穫がありました。
海外展示会へ実費参加するためのノウハウ
一之瀬 高橋さんはドイツや中国の展示会に、有給を取って実費で参加されているのですよね。自分で参加する理由については先ほどお伺いしましたので、ここからは有給の取得や資金面について教えてください。
高橋 多くの方にとって最大の課題は、休みをどう取るかということだと思います。国内を含めアジアの展示会は土日開催もありますが、ドイツやアメリカは休日の概念がしっかりしているので火水木など平日のみの開催が多いです。
週の中日に休みを取る必要があるため、取得できるかどうかは職場の状況に左右されます。私の場合には、5連休を取るために展示会の8ヶ月や10ヶ月前には上司に申請し、日程変更ができない航空券を確保しています。
私の場合は、遊びに行くのではなく展示会に参加するという理由での休みだと、職場でも好意的に見られます。必ずしも5連休は必要ではなく、3連休でも参加できるのではないかと思います。3連休であれば調整できる人も多いでしょう。
一之瀬 確かに、5連休と3連休では有給取得のハードルが大きく変わりますね。ちなみに、中国やシンガポールなどアジアの展示会の場合にはどうでしょうか?
高橋 中国やシンガポールだと、土曜日にも展示会を開催しているケースが増えます。金土日で参加するという選択肢も出てきますので、長期の休みが取れない人は中国の展示会も有力な選択肢です。 中国は市場が大きいので世界最大級の展示会が開催されているので、展示会規模という面でもおすすめです。
一之瀬 金土日であれば、有給取得も1日で済みますし調整できる人も多そうですね。費用面についてはどうでしょうか?
高橋 費用はどれだけ無理をして出費を抑えるか次第で大きく変わります。ここで紹介するのは、展示会に参加するための必要最低限の内容です。各自の状況に合わせて、オプションのようなイメージで食事や観光については調整してもらえばいいと思います。
まず航空券ですが、大体半年前くらいに日程変更不可の航空券を取れば、最安値に近い金額で確保が可能です。ただ、直行便で取ってしまうと高くなります。私は時間を確保して費用を抑える方針なので、直行便ではなくトランジットが入る場合が多いです。
長時間のトランジットは負担に思われがちですが、空港外に出て時間を活用できるため、中途半端な待ち時間よりも有効に活用できます。
一之瀬 観光や食事はどのようにしているのでしょうか?
高橋 基本的に観光は行きませんし、食事も現地名物で高額なものは食べないです。ただ、このあたりは先ほども言った通りで各自の考え方次第なので、費用や時間と相談しながらうまく調整すればいいと思います。 私の場合には、実費で一人で行くけど観光はしていないからという家族への配慮という位置づけもあります。
一之瀬 観光して美味しいものを食べてという話だと、ご家族としても不公平に感じられ、調整が難しくなってしまいそうですね。観光・食事もこだわらずに最低限の金額でどれくらいになるのでしょうか?
高橋 最低限に抑えれば、ドイツであれば雑費込みで往復15万円程度、中国の深センや台湾であれば往復4万程度で展示会への参加が可能です。
狭まった視野や固まった価値観を崩すという目的であれば毎年参加する必要はなく、5年に1度でも参加できれば十分です。そう考えると、ドイツの場合でも1年に3万円、月平均で5,000円ずつくらいなので出せる人は少なくないのではないでしょうか。
有給取得や資金確保が厳しい場合には中国の展示会もありますので、一度海外の展示会に参加してほしいなと思っています。
昨今の展示会に参加して感じる海外と日本の違い
一之瀬 高橋さんは、国内外でさまざまな展示会に参加されていると思います。その中で、最近のトレンドはどのようなものだと感じているでしょうか?
高橋 全体のトレンドはいろいろとありますが、私の専門の制御系に着眼して紹介します。欧州でいうと、インダストリー4.0の流れで粛々と開発しているというのが一つです。近年は、そこにAIというキーワードが入ってきていて、欧州のインダストリー4.0に向けたこれまでの取組みとAIの相性がいいことから、取り組みが加速しています。
現状のAIは、よくわからないけどいい感じにしてくれるというものではなく、インプットするデータをいかに整理して読み込ませるかというのが重要です。実は欧州は、インダストリー4.0の中でこれを十数年やってきているので、今までの戦略から何もやり方を変えずにAIを組み込むことが可能です。
一之瀬 AIの導入に関して、日本は遅れているという話も聞きますが、そのあたりはどのように考えていますか?
高橋 日本はインダストリー4.0のような流れで取り組んでいなかったので、データが十分に整備されていません。AIを組み込むためにはこれまでの仕事のやり方、前提を変えないと、現状のままでは難しいです。 ヨーロッパが早く導入できて日本が導入できなかったというのは、単純に入れやすい土壌があったかどうかということが大きな分かれ目になっています。
よく、AIの導入を選択しなかった人たちの意思決定の遅れと評価されることがありますが、導入したくてもできる状況になかったというのが、現実問題としては正しいと思います。このような状況の中で、今はどのような戦略を取るか各社が一生懸命考えているところです。
一之瀬 すでに欧州はAIを導入していて、日本とは差がついてしまっているのでしょうか?
高橋 いえ、制御系のシステムに対しては欧州もAIを組み込んだシステムを構築している段階で、まだ実際の工場では使われていません。現時点では、日本と欧州でAIの導入による生産力に差はついていない状況です。日本は遅れている部分はありますが、まだ挽回できる状況だと考えています。
一之瀬 日本が「AIを導入できるタイミングはいつになるか?」という点が、挽回に向けて重要なポイントになるのでしょうか?
高橋 そうですね。タイミングとコストパフォーマンスのバランスだと思います。例えば、今でも大きなコストをかければ何とか導入できると思いますが、もしかしたら5年後ならコストをほとんどかけずに同じことができるかもしれません。
今無理に導入を急ぐのではなく、欧州が5年後に整えた仕組みを的確にキャッチアップし、その1年後に日本が導入できれば競争力を維持できると考えられます。
一之瀬 今はまだ欧州も取り組んでいる最中なので、そのタイミングがいつになるのかはまだ明確になっていないということですね。欧州に対して、日本の強みとなっているのはどのような点でしょうか?
高橋 日本は、オペレーション(現場)が強いです。現場が自律的に動けるというのが日本の強みですし、欧米と比べても優位なところです。これは、一般的にも言われていますし、私自身の海外での経験からも同様の認識をもっています。
欧州が先行でAIを導入していく際の課題がオペレーションに関するものならば、あとから取り組み始めた日本が強いオペレーションを活かして逆転できる可能性も十分にあります。そのためにも、今は欧州の取り組みをきちんとキャッチアップしていくということが重要です。
一之瀬 現場が強いという点が、デメリットになっていることはあるのでしょうか?
高橋 現場の実務者が優秀であるがゆえに、抽象的な仕様だったとしても自律的に処理できてしまいます。その結果、AIにインプットされるデータが整っていないという現状があります。
現場の優秀さに影響を与えないように、データや業務フローの構造化を進めていくかが重要です。いわゆるITテクノロジーをビジネスフローにどのように取り込んでいくかという点が大事ですし、難しさがあります。
一之瀬 現状は、あまりうまくいっていないのでしょうか?
高橋 そうですね。十分に機能していません。実務者ですら言語化できないほどビジネスフローが複雑なので、実務にITを合わせるべきなのか、ITのあるべき姿に実務を合わせていくべきなのかという部分に大きなギャップがあります。 この中間地点に、適切な手法が存在するのかどうかということが重要ではないかと考えています。
一之瀬 ここまで欧州と日本の話をして頂きましたが、中国はまた違った印象でしょうか?
高橋 中国の最大の特徴はスピード感です。欧州で見た新しいコンセプトの製品を極めて早いタイミングでキャッチアップし、類似の製品を出してきます。企業の特徴や政治的な制約に関わらず必要な要素を取り込み、仕様面だけを見ると中国製品の方が優れていると感じることも少なくありません。
このスピード感とコストに対して、日本が品質だけで戦っていくのは難しいと思うので、品質とコストのバランスでどう戦っていくかということを考える必要があります。
中国も昨今のコスト上昇率を見ると今までのようなやり方を継続できないと思います。ただ、コストが近づいてきたタイミングでは品質も追いつかれているはずなので、そこからさらにもう一歩上回る打ち手が必要です。
最後に
一之瀬 今回は、「海外展示会への実費参加で固定概念を覆す!海外展示会参加のすすめ」というテーマで、情報発信についての取り組みや想い、海外展示会に自費参加する理由や方法などを紹介して頂きました。また、昨今の展示会から見る欧州・中国の特徴に対して、日本がどのように取り組んでいく必要があるのかという点についてもお話をして頂きました。
高橋 最後にお伝えしたいのは、「日本の製造業は負けていない」ということです。実際に海外に行って改めて、日本の強みを改めて認識しています。今世界で強いのに、今後勝てないということはありません。
ただ、何もしなくても勝ち続けられるほど甘くないというのも事実です。これは、私の感覚だけでなく生産統計や労働統計を見ても致命的に負けているような状況ではありません。
「製造業はオワコン」といわれることもありますが、負けているわけでもないし未来の負けが確定しているわけでもないので、悲観的になる必要はありません。勝つためにはどうすればいいのかということを前向きに考え、取り組むことが重要です。
