受発注業務におけるMOQ・SPQ・SNPの違いとは?
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MOQは、最低発注数量のことです。MOQを設定すると、受注側は利益を確保して交渉を円滑に進められるようになります。しかし、MOQを設定することで機会損失を生んでしまうことはご存じでしょうか。

目次

  1. 受発注業務とは
  2. 受発注業務の一般的なフロー
  3. MOQ・SPQ・SNPの基本解説
  4. MOQの役割と設定するメリット
  5. MOQ・SPQ・SNPの注意点
  6. 受発注業務の用語はしっかり押さえよう

受発注業務とは

受発注業務とは、商品やサービスの注文を受ける「受注」と、商品やサービスを注文する「発注」に関する業務のことをいいます。ここでは「受注業務」と「発注業務」の特徴をそれぞれ説明します。

受注業務

受注業務とは、商品の受注を受け、商品やサービスを納品する業務です。商品の入金確認までの一連の業務を指します。具体的には、見積の作成・製造・発送・入金の確認の手順で進められます。

受注業務で、伝票の漏れや商品の誤りがあると、自社だけでなく取引先にも迷惑がかかります。そのため、商品や個数、納期などの重要な項目は正確性が求められます。

発注業務

発注業務とは、商品を受注側に注文し、商品やサービスを納品してもらうように依頼する業務です。具体的には、見積の依頼・見積の確認・注文の確定・代金の入金の手順で進められます。

受注と大きく異なる点は、お金を払う側になることです。発注業務では、商品の個数を決める必要があります。この際に必要量より少なく発注してしまうと、自社の業務に支障がでます。逆に多めに発注してしまった場合は在庫過多となり、資金の損失が発生してしまいます。以上のことから、発注業務でも受注業務と同様に、丁寧な確認作業が大切です。

受発注業務の一般的なフロー

基本的に、受発注業務は以下の手順に従って業務を進めます。

  1. 見積もり
  2. 契約締結
  3. 商品の送付・受領
  4. 支払い・請求

それぞれの手順を紹介します。

1.見積もり

発注する企業が、受注側の企業に対して見積もりを依頼します。お互いの担当者が連絡を密に取り、商品やサービス、納期、品質、などをしっかり確認しておくことが大切です。その後、受注側が見積書を作成し、発注側に送り、内容を確認してもらいます。

2.契約締結

見積書を確認し、見積りの内容について承諾すれば、発注側が発注書を作成して、受注側に発送します。受注側は発注を受け次第、承諾の可否を通知します。受注側に承諾され次第、契約の締結となります。発注書を受け取った受注側は、受注登録などの準備に取り掛かります。

3.商品の送付、受領

受注側は、商品・サービス・納期・品質・金額・個数などの情報を確認して、それに応じた商品を発送します。発送の準備が整い次第、納品書を作成します。発注側は送付された商品、サービスの内容について検品を行います。検品に問題がなかった場合検品書を受注側へ返送します。

4.支払い・請求

受注側は売上伝票を作成し、請求のタイミングで発注側へ請求書を送付します。請求書を受け取った発注側は、記載された取引代金を支払い期日までに受注側へ入金します。受注側は入金確認後、領収書を発注側へ送付します。発注側が領収書を受領したのち、受発注が完了します。

受発注業務の注意点

まず、受注側も発注側も受発注業務の管理体制を適切に構築しましょう。受発注業務は、必ず双方向で金銭のやり取りが発生する業務です。受注業務でミスをすると取引先との信頼関係に影響します。ダブルチェックやシステムのチェックを活用して、ミスをできる限り減らしましょう。

次に、在庫は常に確認しておきましょう。発注業務でも在庫過少による業務遅延、在庫過多による資金損失に繋がる恐れがあります。発注する際には在庫状況をしっかり確認した上で、発注しましょう。

また、アナログからデジタルへの切り替えを検討しましょう。見積依頼から決済に至るプロセスにおいて紙のやり取りが多いと、煩雑な作業が多くなったり属人化した作業になったりしてしまいます。これらを防止するには、デジタル化が有効です。デジタル化を推進すれば、情報の一元管理を実現できるため業務効率化が図れます。

最後に、受発注業務に関する法令に違反しないよう注意が必要です。受発注業務を円滑に進めるために、契約に関する法律を押さえることに加え、民法や商法、関連法令への理解を深めておくとよいでしょう。

また、インボイスなどの新しい制度への対応や、税制の改定などに対する把握漏れがないように気を付けましょう。

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MOQ・SPQ・SNPの基本解説

大量生産が基本の製造分野や海外で大量発送する際に、受発注業務ではよくMOQ・SPQ・SNPなどの言葉が使われています。ここでは、それぞれ3つの言葉の意味や使い方などについて解説します。

MOQとは最低発注数量のこと

最低発注数量(Minimum Order Quantity)とは、発注できる最低数量のことです。MOQはCase Packと記載されることもあります。見積書にMOQ:1,000個と書かれている場合は、原則的に1,000個以上の購買が必要となります。1,000個以上なら1個単位で数量指定できますが、999個以下では発注できません。

ただし例外として、単価の見直しや運送費の費用負担などの対処を取ることで、MOQ以下での発注を交渉できる場合もあります。MOQは、サプライヤー側の運送費、人件費削減ために設定されており、大量輸送が多い海外メーカーなどで多く採用される傾向にあります。

SPQとは最小発注単位のこと

最低発注単位(Standard Packing Quantity)とは、発注できる最小単位数のことです。例えば、見積書にSPQ:1,000個単位と書かれている場合は、1,000個、2,000個、3,000個といった1,000の倍数単位でしか発注できません。

SPQもMOQと同様に、サプライヤー側の運送費や人件費削減ために設定されており、大量輸送が多いメーカーなどで使われています。

SNPとは出荷梱包のこと

出荷梱包単位(Standard Number of Package)とは、出荷時の梱包量のことです。例えば見積書にSNP:1,000個と書かれている場合は、カートンボックスやダンボールなどの梱包材に1,000個の商品が梱包されています。

SNPは輸送効率の最適化を目的としています。梱包材は輸送車やコンテナに納まる大きさに設計されていることが多いため、SNPは123Lotや567Lotといった中途半端な値になることもあります。

受発注業務におけるMOQ・SPQ・SNPの違いとは?
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MOQの役割と設定するメリット

MOQを設定するメリットを下に4つに分けて解説します。

  1. コストを抑え、利益が出せる
  2. 単価交渉が可能となる
  3. パートナーを選定できる
  4. 在庫管理、生産計画の効率化

それぞれについて解説します。

コストを抑え、利益が出せる

MOQを受注側が設定するメリットとして、人件費や運送費などの手数料に負けない量を受注し、それぞれの取引で利益を確保できるという点が挙げられます。

MOQを設定していないと、顧客が自由に発注数量を決められるため、手数料負けが起こる取引でも人件費や輸送費の負担が発生し、利益の確保が難しくなってしまいます。このような事態を防ぐために、手数料負けを起こさないようなMOQを設定することが大切です。

単価交渉が可能となる

MOQを設定すると、MOQ以下で発注される特殊な場合において、単価を上げたり、運送費の負担を発注側にしてもらったりするなどの交渉ができるようになります。

例えば、MOQ:2,000個の製品の売却価格が10,000円だった場合、商品の売却単価は5円です。MOQ以下での発注を受け、商品を300個しか発注しない場合には、売却単価を8円に上げての受注や、運送費の請求など対応を取ることで、少量販売に対しても利益を確保できるようになります

パートナーを選定できる

MOQを設定しておくことで、取引先を選定できるようになります。MOQを設定していれば少量の注文をあらかじめ拒否し、受注側を選定できます。パートナーを選定することで、大量発注可能な業者のみとの取引で良くなり、発注業務の省力化や売り上げ安定につながります。

在庫管理・生産計画の効率化

MOQを設定することで、在庫状況の把握や、生産計画の効率化が期待できます。MOQは最低でも受注される数量とも捉えられるため、それに応じて在庫の確保や製造計画を立てられます。

生産計画や在庫管理が適切に行えるようになれば、原料の発注ミスの防止やリードタイムの削減に繋がるでしょう。

MOQ・SPQ・SNPの注意点

MOQなどを設定する場合は、大量注文を基本とすることになるため、発注側、受注側の両社共に、効率化や利益を考えるだけではなく、在庫管理や見積り、市場分析が必要となるなど慎重な判断が大切です。

受注側の注意点

受注側がMOQを設定する際には、以下の3つの注意点を考慮しましょう。

  • MOQを高く設定しすぎない
  • MOQを低く設定しすぎない
  • 柔軟な対応を心がける

それぞれについて詳しく解説します。

MOQを高く設定しすぎない

MOQを高く設定しすぎないように注意しましょう。MOQを設定する際には、商品の需要・供給バランスや、購買意欲を適切に把握する必要があります。特に多品種な商品を製造する企業では、品種ごとの需要を考えそれぞれにMOQを設定することが大切です。

MOQを高く設定しすぎた場合には、ニーズのズレが生じたり、顧客に対して商品の大量購入を強いたりすることにつながり、取引企業数が減ってしまう恐れがあります。導入前には、自社の商品がどのくらいの量で納品されているのかを正確に見極めることが大切です。

MOQを低く設定しすぎない

MOQを低く設定しすぎないように注意しましょう。MOQを低く設定しすぎてしまうと、顧客から少量の注文が入る度に、運送費や人件費がかさみ、利益率が低下する恐れがあります。利益が十分に確保できる量以上での発送をするために、適切なMOQを設定しましょう。

柔軟な対応を心がける

MOQを設定したとしても、柔軟な対応を心がけましょう。市場の動きや顧客のニーズは常に変化するため、MOQは定期的な見直しが必要です。加えて、MOQ以下の少量注文にも柔軟に対応することで、顧客と良好な関係を構築できます。

また、長期的な関係を築くために、大量発注した場合の割引やニーズに応じたMOQの変更など、交渉の余地を持っておくことが重要です。

発注側の注意点

発注側がMOQを設定しているサプライヤーから商品を購入する際の注意点は、大きく3つあります。

  • 過剰発注に気を付ける
  • MOQ未満の発注は単価が高くなる
  • MOQ以外の条件にも気を付ける
  • こちらも下で詳しく説明していきます。

過剰発注に気を付ける

サプライヤー側からMOQを設定されている場合、原則として発注側は、指定された数量未満での発注はできません。したがって、発注側は過剰発注に気を付ける必要があります。過剰に商品を発注してしまうと、在庫過剰となって保管コストがかかります。商品を発注する際には、生産状況、在庫状況を考慮して書品を発注しましょう。

MOQ未満の発注は単価が高くなる

発注側がMOQを設定している場合は、原則としてMOQ以下での発注ができません。しかし例外として、受注側の利益を確保できればMOQ以下での発注が可能になる場合があります。

その場合は、商品単価を上げての発注や運送費の負担などの対処を講じる必要があるため、費用の負担は増大します。MOQ未満で発注する際には、MOQ未満で発注する分の補償と、MOQ以上で発注した際の負担を比較し、どちらが適切かを検討する必要があります。

MOQ以外の条件にも気を付ける

取引の際には、MOQだけでなくSPQなどのほかの条件にも注意しましょう。MOQを満たしていたとしても、SPQを見落としてしまうと適切な数量を発注できない場合があります。

例えば、MOQ:1,000、SPQ:500とあった場合1,000個、1,500個、2,000個のような発注しかできません。1,200個必要な場合には、1,500個の商品を発注する必要があるでしょう。

受発注業務の用語はしっかり押さえよう

受発注業務は、事務処理のスピードと正確性が求められる業務です。顧客との信頼関係にも関わる業務のため、基本的な用語や流れは正確に押さえ、迷惑をかけないように注意しましょう。

また、DXを推進することで、受発注業務を効率化する事も可能です。業務効率化や自動化を進めることで、初期投資以上のメリットが享受できることもあります。自社に最適なシステムがないかを、一度確認してみてはいかがでしょうか。

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