【図解】基礎から学ぶ小売業のデータ活用5ステップ

本記事は、データ総研の小川康二氏と伊藤 洋一の共著『 DXを成功に導くデータマネジメント データ資産価値向上と問題解決のための実務プロセス75』=株式会社翔泳社、2021年12月20日発行の中から一部を抜粋・編集しています。

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目次

  1. ステップ1:証跡を認識する
  2. ステップ2:証跡を使って管理対象を認識する
  3. ステップ3:管理対象間の関係を認識する
  4. ステップ4:部分図を統合する

ステップ1:証跡を認識する

ビジネス活動には事実を伝える証拠があります。

図10.3.1はコンビニエンスストアの業務プロセスです。コンビニエンスストアにおける証跡の例としては、発注業務の発注書、配送手配業務の配送手配書、レジ業務のレシート、入金業務の取引明細表などが挙げられます。

これらの証跡に残されている事実こそが、ビジネスでどのようなデータが使われているかを認識するうえで大きな役割を果たします。したがって、データモデリングをするうえでは、これらの証跡を集めることが役立ちます。

証跡は、業務機能(=画面・帳票・手書き伝票など)に対応して生成されるものなので、業務機能を捉えることで証跡を認識します。

図10.3.1 コンビニエンスストアの業務プロセス
(画像=図10.3.1 コンビニエンスストアの業務プロセス)

ステップ2:証跡を使って管理対象を認識する

レジ業務を詳しく見てみましょう(図10.3.2)。レジ業務という行為は、レシートという証跡が残るので、レシートを使ってデータを構造化します。

図10.3.2 レジ業務の証跡であるレシート
(画像=図10.3.2 レジ業務の証跡であるレシート)

構造化の最初のステップは管理対象を認識することです。

レシートを眺めると管理対象を認識できます。「等々力店、東京都世田谷区等々力〇〇、03-3434-XXX」で等々力店という管理対象を認識し、そこから「店舗」というエンティティが必要であると考えます。

図10.3.2でわかるように、レシートから店舗、レジ、商品、カード、顧客、店舗、売上、売上明細のエンティティが浮かび上がってきます。

こうした作業に慣れるまで難しいと感じるかもしれませんが、コツを掴めば管理対象を認識できるようになります。

テクニックとしては、レシートから業務を想像し、誰が(Who)、誰に(Whom)、どこで(Where)、何を(What)の視点でマスタ系のエンティティを捉えます。

トランザクション系のエンティティは、レシートの発行がコンビニエンスストアにとっての売上なので、「売上」をエンティティとして捉えます。1回の買い物で複数の商品を買えるのであれば、売上の内訳と解釈し、売上の明細があると認識します。明細があるかどうかは、レシートにあるように商品と単価が繰り返し登場していれば、売上明細としてエンティティを認識します。発注、入荷、支払、受注、出荷、請求、生産などの出来事においても明細が繰り返しとして登場することが多いので、注意して見てみてください。

ステップ3:管理対象間の関係を認識する

構造化の次のステップは、管理対象間の関係を認識することです。管理対象間の関係は、業務ルールに基づいて、管理対象間の関係を線でつなぎます(図10.3.3)。

例えば、業務ルールとして「店舗には複数の店員が所属する」が規定されていれば、店舗と店員の間を1:Nの関係を表す線でつなぎます。また、カードに関して「紛失した際に再発行が可能であり、見つかった際は以前のカードのポイントを新しいカードに合算できる」という業務ルールがあれば、顧客1人に対して複数のカードを持てるようにする必要があるため、顧客とカードは、1 : Nにしておきます(線の種類は10.2のRULE67、図10.2.8を参照)。

このように、業務ルールがわかれば線をつなぐことはできます。もし、わからなければ業務有識者に確認すれば答えは導けます。

図10.3.3 レシートのデータ構造化
(画像=図10.3.3 レシートのデータ構造化)

ステップ4:部分図を統合する

ステップ3までは、証跡ごとにデータモデルを作成してきました。ステップ4は最終仕上げです。最終仕上げでは、これまで作成した証跡ごとのデータモデル(=部分図)を統合します(図10.3.4)。

図10.3.4 部分図の統合イメージ
(画像=図10.3.4 部分図の統合イメージ)

統合作業にはいくつかのサブステップがあります。最初はエンティティの統合です(図10.3.5)。例えば、発注と入荷(=店舗への配送)のそれぞれの証跡を確認すると、商品を認識することができます。同一対象を見ているため、エンティティは統合して表現します。

図10.3.5 エンティティ統合のイメージ
(画像=図10.3.5 エンティティ統合のイメージ)

次のサブステップは、業務間の関係を認識することです。例えば、発注と入荷に関して、1発注で分割入荷がある業務ルールがあった場合、発注と入荷の間に1 : Nのリレーションシップを引きます。

最後のサブステップは、配置ルールに基づきエンティティを配置することです。配置ルールを必要とする理由は、データモデルの可読性を向上させるためです。データ活用者がデータモデルを地図として見る際に、毎回データの配置が異なっていたら、地図としての機能を果たせなくなります。そのため、エンティティの配置は非常に重要な作業になります。

縦の配置ルール

データの抽象度による配置ルールを縦の配置ルールといいます(図10.3.6)。抽象度が低いエンティティがモデルの下部に来るように配置します。わかりにくければ「1 : Nの1側が上、N側が下」と覚えてください。そうすることで、自然と抽象度の高いものから低いものへ縦に配置されます。

例えば、店舗と店員は1 : Nの関係があるので、店舗を上に、店員を下に配置します。

図10.3.6 縦の配置ルールの例
(画像=図10.3.6 縦の配置ルールの例)

横の配置ルール

リソース系は、左から社内組織、社外組織、モノ、その他の順に配置しま す(図10.3.7)。

図10.3.7 横の配置ルール(リソース)
(画像=図10.3.7 横の配置ルール(リソース))

イベント系は、業務の流れに沿って、左に先行業務が来るように配置します(図10.3.8)。例えば、発注と入荷では必ず発注が先行して行われるので、発注を左側に配置します。

図10.3.8 横の配置ルール(イベント)
(画像=図10.3.8 横の配置ルール(イベント))

情報系は、集計元のイベントデータに対応して、近いところに配置します。抽象度はイベント系よりは高く、リソース系よりは低くなるため、リソースとイベントの真ん中ぐらいに配置されます。

ここまでの配置をまとめると、図10.3.9のようになります。

図10.3.9 配置ルール(全体)
(画像=図10.3.9 配置ルール(全体))
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