【大手・ベンチャー】国内企業が開発した「国産AI」6選
(画像=Ameer/stock.adobe.com)

話題となっているChatGPTを開発したオープンAI社を初め、IBM社、Google社、Apple社など、AI(Artificial Intelligence/人工知能)製品の開発元としてしばしばその名前が挙がるのは主に海外企業です。

しかし、実は国内においても大小様々な企業がAI製品を開発しています。 そこで本コラムでは、「国産AI」の具体例を大手企業とベンチャー企業にわけて紹介します。

目次

  1. 大手企業が開発した「国産AI」4選
  2. ベンチャー企業が開発した「国産AI」2選
  3. AIを導入したい!AIツールの選び方5つのポイント
  4. まとめ:AIを自社ビジネスに活用!その前に検討するべきことは?

大手企業が開発した「国産AI」4選

NECグループの「NEC the WISE」

NECグループでは、「NEC the WISE」というAI製品を開発しています。

「NEC the WISE」は、「データの良質化技術」「生体認証技術」「意味・意思理解技術」「解釈付き分析技術」「計画・最適化技術」といった様々な技術を組み合わせた最先端AI技術群です。国際的に高い評価を得ており、指紋認証や虹彩認証などの一部の「生体認証技術」については米国国立標準技術研究所による精度評価テストで1位を獲得しています。複数の技術を組み合わせた最先端AI技術群である「NEC the WISE」は汎用性が高く、様々な活用例があります。

【「NEC the WISE」の活用例(一部)】

  • 金融機関における住宅ローンの事前審査
  • 工事現場における重機や作業員の動きの見える化
  • コンサート会場における顔認証を用いた来場者の本人確認

さらに、NECグループは「NEC the Wise」を活用して「頭頸部がん」や「卵巣癌」などの先進的免疫治療法に特化した創薬事業に本格参入することも発表しています。

(参考)NEC、最新AIを活用した創薬事業に本格参入2025年に事業価値3,000億円を目指す

富士通グループの「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」

富士通グループでは、「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」というAI製品を開発しています。

「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」も、「NEC the Wise」と同様に「画像・音声処理技術」「自然言語・知識処理技術」「文書翻訳技術」「候補選択技術」といった多岐にわたる技術を兼ね備えたAI製品です。「疾風迅雷」に由来する名の通りスピーディーかつダイナミックに社会や企業を変革させることをコンセプトとしたAI製品であり、すでに様々な用途で活用されています。

【「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」の活用例(一部)】

  • 新聞社における記事の要約作業
  • コールセンターにおける顧客の音声にもとづく満足度の定量化
  • 小売店における客数予測

そのほか、さいたま市が保育所入所希望者の選考で「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を活用する実証実験を行っています。様々な要素を加味しなければならず膨大な人手と時間が費やされていた入所選考を、「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を活用することで効率化することに成功しました。

(参考)内閣府:保育所入所選考へのAI技術導入~さいたま市の実証実験プロセスと成果・課題~

NTTグループの「corevo」

NTTグループでは、「corevo」というAI製品を開発しています。

NTTグループは「corevo」という名称について、「さまざまなプレイヤーの皆様とのコラボレーションを通じて、一緒に革新を起こす(co-revolution)」という思いを込めていると説明しています。そんな「corevo」は、下に挙げた4つの技術で構成されています。

  • 「Agent-AI」:人間の発する情報からその意図や感情を理解する
  • 「Heart-Touching-AI」:生体情報から人間の心と体を読み解く
  • 「Ambient-AI」:環境や人の動きなどを分析して予測や制御などを行う
  • 「Network-AI」:複数のAIと連携してAI群全体を最適化する

【「corevo」の活用例(一部)】

  • コールセンターにおける問い合わせ応対業務
  • 書店や図書館における年齢や関心事項に合った書籍のレコメンド
  • 高齢者向け施設における利用者の安全管理

日立グループの「Hitachi AI Technology/H」

日立グループでは、「Hitachi AI Technology/H」というAI製品を開発しています。

「Hitachi AI Technology/H」は、入力されたデータから100万個を超える大量の仮説を生成。そのなかから最適な選択を行うというアルゴリズムによって、これまで人間が行ってきた様々な作業の代替を実現しています。また、同社では「Hitachi AI Technology/業務改革サービス」「Hitachi AI Technology/倉庫業務効率化サービス」「セキュリティ監視業務効率化AIソリューション」といった「Hitachi AI Technology/H」を活用した業務特化型のサービス・ソリューションもラインアップしています。

【「Hitachi AI Technology/H」の活用例(一部)】

  • 製造企業におけるプラント設備の劣化要因分析
  • 倉庫業務における過剰在庫の原因分析
  • 情報セキュリティ部門におけるサイバー攻撃のインシデント評価

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ベンチャー企業が開発した「国産AI」2選

前述のように、国内大手企業が開発したAIは音声認識や自然言語処理といった複数の技術を組み合わせたものとなっており、幅広い用途で利用できるのが特徴です。一方で、大手企業だけではなくベンチャー企業も特定の業種や業務での利用を前提としたものを中心にAI製品の開発に取り組んでいます。ここでは国内ベンチャー企業が開発した、注目のAIを2つ紹介します。

FRONTEO社の「KIBIT」

リーガルテックに関連したAI製品の開発に取り組んでいるFRONTEO社では「KIBIT」というAI製品を開発しています。

「KIBIT」は、国際訴訟における証拠発見効率の向上を目的に、テキストデータの解析に特化したAIとして開発されました。「KIBIT」は、わずかな学習データから弁護士のような専門家の「暗黙知」を学習することができます。そのため、今日では国際訴訟における証拠発見に限らず、国内外において幅広い用途で活用されています。

たとえば、金融機関は金融商品取引法をはじめ様々な法令を遵守しなければなりません。そのために発生する多数の契約書や同意書のテキストをチェックする必要があります。このようなシーンで「KIBIT」を活用することで、判断基準のバラツキ軽減やヒューマンエラーの防止を期待できます。

SENSY社の「SENSY」

慶應義塾大学の研究所からスタートしたSENSY社は、人の「感性(センス)」に特化したAI「SENSY」を開発しています。

「SENSY」は、個々人の行動やコミュニケーションを分析して、それぞれの感性を学習していくことができるAIです。自然言語処理・画像解析技術などを組み合わせたディープラーニング(Deep Learning/深層学習)が用いられており、感性工学にもとづいて感性を学習していきます。

主にBtoC領域での活用が期待されており、同社ではすでに「SENSY」を搭載したスマートフォン向けアプリもリリースしています。たとえば「SENSY CLOSET」は、所有している衣服を登録してアプリ上で自由にコーディネートすることができるほか、登録された衣服からユーザーの感性を学習しておすすめの衣服を提案してくれます。

このほかにも、学習した感性にもとづいてマーケティング施策の最適化を実現する「SENSY Marketing Brain」や、商品需要予測を精緻化して追加発注や値引きの最適化を実現する「SENSY Merchandising」といったソリューションを展開しています。

AIを導入したい!AIツールの選び方5つのポイント

自社でAIを導入したい場合の選び方を紹介します。自社のニーズや要件に最適なAIソリューションを選びましょう。導入前に十分な調査と比較を行い、最良の選択をすることが重要です。

【選ぶポイント1】自社の課題は何か・AIを開発・導入する目的は何か

AIを導入するには、何にAIを使いたいのか、目的を明確にしなければなりません。そのためにはまず、「自社の課題」を洗い出す必要があります。

例えば業務効率が悪いと感じるならばルーチンワークを自動化できるもの、顧客サービスを向上させたいならビッグデータ解析で顧客のニーズを分析できるものなどが必要になるはずです。課題が洗い出せたら具体的な目標を設定し、それに対応するAIソリューションを選ぶことが重要です。

課題を洗い出すには業務全体のフローや担当部署の確認、担当者へのヒアリングなどを行います。つまり、AIを導入する前の下準備が必要になります。この作業はAIツールの利用に関わらず社内の現状が整理できるため、やっておくことをおすすめします。

【選ぶポイント2】自社内で運用するのか、クラウドサービスを利用するのか

AIを利用するためには、オンプレミス環境(自社内での運用)か、クラウド環境(クラウドサービスを利用)かを選択する必要があります。

オンプレミス環境は自社にサーバーを設置するため情報漏洩などのリスクが低く(データセキュリティ性が高い)、自社に合わせたカスタマイズ性が高い一方、インフラ構築やメンテナンスにコストやリソースが必要です。特にコストについては、開発の時点から自社に特化した環境を作る場合、クラウド環境を利用するものより割高になる傾向があります。

一方、クラウド環境はすでにあるものを利用するため、導入や運用が容易でコストも比較的抑えられますが、データセキュリティの問題があります。また完全に自社に特化した仕様にすることができないツールもあります。実際にトライアルなどを通じて、どちらが適しているか検討しましょう。

【選ぶポイント3】操作は簡単か、使い続けられるか

AIソリューションの操作性は非常に重要です。使いやすく簡単に操作できるかどうかは、導入後の効率や、実際にそのAIを活用する社員の満足度に大きな影響を与えるからです。社内のユーザーがスムーズに利用できるかどうか、実際にトライアルを利用してもらい、フィードバックを得て判断しましょう。

【選ぶポイント4】費用はどれぐらいかかるのか

AIの導入には費用がかかります。様々なベンダーやプロバイダがAIソリューションを提供していますので、価格を比較しましょう。イニシャルコストだけでなく、ランニングコストも算出する必要があります。単純に価格だけでなく、契約年数、機能やパフォーマンスとのバランスも考慮しましょう。

【選ぶポイント5】AI導入後の運用に関してサポートがあるか

AI導入後の運用では、不具合が出てくるかもしれません。また社員がうまく使えないとき、トレーニング機能があったり、質問できたりすると安心です。導入前にこのようなサポートサービスが得られるかどうか確認しておくとよいでしょう。また、ソリューションの保守・アップデートが定期的に行われるかどうかも重要なポイントです。

まとめ:AIを自社ビジネスに活用!その前に検討するべきことは?

ご紹介したように、国内企業の間でもAI製品の開発が盛り上がりを見せています。AIの活用が特別ではなくなりつつある昨今、「自社においてもAIを活用して事業を拡大していきたい」とお考えの企業様も多いのではないでしょうか?

一方で、一言でAIと言っても画像認識、音声認識、自然言語処理など、その機能は様々です。さらに、それらを組み合わせることで実現可能な用途は広範囲にわたります。そのため、AIの活用にあたっては、目的や用途を明確にすることが非常に重要です。

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