業務効率化を実現するITシステム5選
(画像=Patrick/stock.adobe.com)

令和4年版高齢社会白書によると日本の生産年齢人口は、2015年時点の7,735万人から、2030年には6,875万人、2050年には5,275万人、2065年には4,529万人まで減少すると予測されています。そのため、国内企業が中長期的な成長を実現するには、業務効率化によって一人ひとりの生産性を高めたうえで限られた人的リソースで業績を維持あるいは向上していく必要があります。

一方で、日本は諸外国と比較した場合の労働生産性の低さが度々指摘されています。公益財団法人 日本生産性本部の「労働生産性の国際比較2022」では、実際、OECD加盟38カ国のうち、日本の労働生産性は27位という調査結果が示されています。これは、国内企業にはそれだけ業務効率化による生産性向上の余地があると見ることもできるのではないでしょうか?

本コラムでは、国内における業務効率化を目的としたITシステム活用の実態を紹介します。そのうえで、実際にITシステム活用による業務効率化を実践するにあたって押さえるべき注意点を解説します。

参考:総務省「令和4年版高齢社会白書」公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2022」

目次

  1. システム活用による業務効率化の実態
  2. ITシステム活用による業務効率化を実践するにあたって押さえるべき3つの注意点
  3. ITシステム活用による業務効率化を目指している方へ

システム活用による業務効率化の実態

今日、多くの国内企業が業務効率化を目的に様々なITシステムを活用しています。そして、このところ業務効率化という観点から特に注目を集めているのがIoTやAIといった先端技術を用いたITシステムです。

2018年に財務省が公表した調査「財務局調査による『先端技術(IoT、AI等)の活用状況」を見ると、IoTやAIといった先端技術を活用している企業のうち、大企業の60.8%、中堅・中小企業の71.5%が「業務効率の向上(従業員の負担軽減)」を目的としていることがわかります。大企業と中堅・中小企業のいずれについても、「コスト(人件費、保守費用等)の削減」(大企業:37.6%、中堅・中小企業:37.2%)や「既存製(商)品・サービスへの付加価値の付与(品質・ブランドの向上)」(大企業:25.3%、中堅・中小企業:12.8%)といったほかの目的よりも著しく高い割合です。

業務効率化を実現するITシステムとして、「コミュニケーションツール」、「RPAツール」、「ワークフローシステム」、「ファイル共有ツール」、「タスク管理ツール」の5種類のツールがあります。

それぞれの特徴とともに代表的なツールを紹介します。

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コミュニケーションツール

コミュニケーションツールは情報交換などのコミュニケーションを円滑に行うためのツールです。代表的なツールを紹介します。

Slack

ビジネス向けのチャットツールで、主にチームコミュニケーションに特化しています。過去のチャット履歴を残すことができるため、グループに途中から加入した人でも流れをつかみやすいという特徴があります。

また、最大1GBまでのファイルを共有できるため、わざわざメールに移動してファイルを送るという手間がかかりません。

Chatwork

ビジネス向けチャットツールで、メッセージをタスクとして設定できるので案件管理がしやすく、タスクの抜けが起きにくいという特徴があります。

また、スケジュール管理機能もあり、ミーティングやイベントの予定を作成、共有することも可能です。

Zoom

オンラインビデオ会議プラットフォームとして、遠隔地にいる人ともリアルタイムで対話が可能です。ビデオ通話、音声通話、チャット機能を統合し、ビジネスだけでなく個人のコミュニケーションニーズにも幅広く対応しているツールです。

RPAツール

RPAはRobotic Process Automationの略で、事務的作業の自動化をかなえるツールです。代表的なツールを紹介します。

WinActo

さまざまなシステムと連携して、これまでマンパワーで行っていた業務をRPAが代わりに行ってくれます。繰り返し行うような作業の手間を省くことができます。

BizRobo!

RPAサービスが低料金で導入でき、ロボットの開発から実行までオールインワンで提供しているのが特徴です。また、サポートは専任で行ってくれるため安心感があります。

Blue Prism

RPA業界を席巻しているツールです。Blue Prismを利用する会社全体がRPAを取り入れて、業務の自動化を推進していくことを前提としているツールのため、セキュリティ機能の高さが特徴です。

ワークフローシステム

ワークフローシステムは、申請から承認までのやりとりを電子化するシステムです。代表的なツールを紹介します。

X-point cloud

紙の申請書のイメージをそのまま電子化します。また、入力をサポートしてくれて入力ミスを減らせる魅力的な機能があります。

ジョブカンワークフロー

スマートフォンでの申請や承認にも対応しています。チャットツールやGoogleアカウントとも連携できるので、承認作業におけるコミュニケーションもスムーズに行える特徴もあります。 また、初期費用が無料で、月額料金も1ユーザーあたり300円で利用できるため導入しやすいです。

ファイル共有ツール

ファイル共有ツールは、ファイルをクラウド上に保管し、共有できるツールです。 代表的なツールを紹介します。

セキュアSAMBA

中小企業を中心に導入されているオンラインストレージです。安全性が高い点が特徴です。

Google Drive

Googleのサービスと連携するときによく使用されるファイル共有ツールです。Googleアカウントを持っていると誰でも無料で利用できるのが魅力です。

Dropbox

大容量のファイルを圧縮せずとも共有できる特徴があります。さまざまなデバイス間での共有も可能です。

OneDrive

スキャン機能があるのでスマホなどで撮影した資料をPDF化できます。また、アクセス有効期限を設定できるので、情報流出のリスクを回避できます。

タスク管理ツール

タスク管理ツールは、作業やプロジェクトの進捗状況を管理するツールです。代表的なツールを紹介します。

Asana

チームの業務管理をサポートしてくれるツールです。関係者全員が計画、プロセス、担当者を理解することができます。仕事量の管理にも役立ちます。

Backlog

プロジェクト管理からタスク管理、ファイル共有・管理までオールインワンで管理ができるツールです。

Trello

世界中で多くの人に利用されているツールです。進捗管理をカンバン方式で行えるため、誰が見ても進捗状況を理解できるのが特徴です。

Jooto

タスク管理だけだはなく、タスクに関するコミュニケーションもJooto上で行えるので、情報の抜けがなくなります。また、GoogleカレンダーやSlack、Chatworkとも連携できます。

ITシステム活用による業務効率化を実践するにあたって押さえるべき3つの注意点

このように、多くの国内企業が業務効率化を目的にITシステムを活用しています。

一方で、ITシステムを活用すれば必ず業務効率化を実現できるというわけではありません。場合によっては、かえって業務効率が低下してしまうおそれもあります。特に次の3点は、業務効率の大幅な低下につながるおそれがあるので注意しましょう。

注意点1:新たな業務の発生

ITシステムを導入した場合、一般的には新たに次のような業務が発生します。

導入

  • 利用端末へのインストール
  • サーバーの設定(情報システム担当者)
  • 外部システムとの連携(情報システム担当者)
  • 各ユーザーへの教育(情報システム担当者)

など

運用

  • アカウントの管理(情報システム担当者/部門管理者)
  • サーバーの管理(情報システム担当者)
  • 定期的なアップデート(情報システム担当者/各ユーザー)
  • セキュリティ対策の実施(情報システム担当者/各ユーザー)

など

その結果、本来効率化するはずだった業務の効率がかえって低下してしまう可能性があります。そのため、ITシステムを導入することによるメリット・デメリット、トータルでの業務量や業務効率を比較衡量したうえで、ITシステムを導入すべきか否かを検討しましょう。

注意点2:業務フローの変更

ITシステムを導入することで、既存の業務フローが変わります。大幅な業務フロー変更が伴う場合、該当業務の担当者は新たな業務フローへの習熟にかなりの時間を要します。そのため、最終的には業務効率化に結びつく場合でも一時的に業務効率が低下してしまう可能性があります。

このため、ITシステム導入の最初の段階ではできるだけ既存の業務フローに合わせるような形でITシステムを導入した方が業務効率化の効果を得やすいと言えます。また、担当者が短期間で新たな業務フローに習熟できるように事前の準備を徹底しましょう。具体的には、変更後の業務フローをマニュアル化したり、導入するITシステムを用いたハンズオンを行ったりといった準備が考えられます。

注意点3:該当業務を担う従業員のITリテラシー

ITシステム活用によって業務効率化を実現するには、該当業務を担う従業員が導入したITシステムを十分に使いこなせる必要があります。

とはいえ、実際にはITリテラシーが不足しており、せっかく導入したITシステムを十分に使いこなせないという話もよく聞くところです。そして、そのような状況において無理にITシステムを活用することでかえって業務効率が低下してしまっては本末転倒です。

このような状況に陥らないようにするためには、該当業務を担う従業員のITリテラシーに合ったITシステムを導入することが重要です。そのためには、選定段階から該当業務を担う従業員に関わってもらい、候補となっているITシステムをトライアルしてもらったり、要件定義の段階で要件の洗い出しに協力してもらったりする必要があるでしょう。

一方で、今後はITシステムの利用シーンがさらに多くなっていくことが予想されます。そのため、中長期的に考えると従業員のITリテラシーの底上げを目的とした社内教育の実施を検討する余地もあるでしょう。

ITシステム活用による業務効率化を目指している方へ

今回ご紹介したように、ITシステム活用による業務効率化は今日の企業にとっての喫緊の課題となっています。一方で、ITシステムを導入すれば必ず業務効率化を実現できるというわけではありません。新たに発生する業務や業務フローの変更、ITリテラシーといった要素も考慮したうえでITシステムを活用していくことが、業務効率化を実現するうえでは重要になります。

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